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どうしてこうなった

うはははは、書いてたら操作ミスって消えた、うははははー


orz


ピサンティエ神殿での取り調べは終始和やかに進んだ。

目撃者情報で傭兵3人が先に店員の猫耳ちゃんに暴力を振るった事ははっきりわかっていて、俺はそれを穏便に制圧しただけである。

長剣を抜いてテーブルを叩き壊した相手を素手で倒してるんだから、まあ穏便と言っても良い・・・よね?

店主のモテ中年も好意的に口添えしてくれたみたいだし、ほぼ無罪放免は確定なんですよ。ほぼ。ええ、ほぼ。


「大変申し訳ないのだが、このままでは報復される可能性が高い」


俺を連行したアンリ・ドゥティーダが本当に困った顔でそう言う。

アンリはフェイと幼馴染ながら騎士位を叙任された神官で、ダンブランの警邏を取りまとめる神官騎士の一角なんだそうだ。

その彼が実に苦しそうに俺に頭を下げている。

偉い神官騎士さまが俺に頭を下げるとか、なんだかすごく悪い事をしてる気がするね!俺が!!


今夜の出来事は、ある程度警邏隊として想定していたらしい。

ここ数年で名をあげてきたビルブラッド傭兵団が休息を兼ねてダンブランに入ってきたのが数日前のこと。

休息といってもみんなで油を売るわけじゃなく、傭兵団の偉い人たちや仕事のできる奴は領主との会談をしたり、物資を補給したりで忙しく動き回る。

部隊長として引き締める側の人たちが最初は部下を連れて振る舞い酒をしたり、まあ上役の義務みたいな事をするもんなんだけど、ちょっと落ち着くと個人的に金をもって娼館に消えて行ったりするわけだ。


で、まわりにうるさい人がいなくなったところで下っ端傭兵さんたちが個人的に飲みにいって・・・あとは見ての通り。


警邏隊はここ数日アンリの指示で安めの飲み屋を中心に巡回していたそうな。

もう揉め事を起こすのは確定で、いかに早く現場に行って沈静化させるかって視点だったらしい。アンリさん優秀。イケメン死すべし。


そんなアンリの予想では、傭兵同士の喧嘩、傭兵と冒険者の喧嘩、傭兵が一般人に絡む。の3パターンが脳内に描かれていたみたいで、傭兵同士なら喧嘩両成敗、冒険者との喧嘩ならどっちが勝ってもギルドの後ろ盾があるからまあ本人の問題って事で手打ち。一般人が怪我した場合は傭兵を取り押さえて後日ビルブラッド傭兵団に身柄の引き渡し。死者がでたりしない限りはちょっと交渉してお金で解決だそうな。


・・・うん、見事に一般人が傭兵を倒す、が無いね。ソリャソウカー。


簀巻きにされた傭兵さん達は騒乱罪みたいな奴で罰金刑になるとのこと。手元のお金じゃ足り無かったから傭兵団との身元引き渡し時に清算らしい。ほら、もう全部丸く収まってるん!もう万事解決済みだよね!!

・・・・・・ただ、経緯の説明上、どうしても傭兵3人がかりで一般人1人に負けた事が問題になる、そうな。


そりゃあ確かに強さが売りの傭兵が一般人の旅人Aに負けるとか恥でしかないもんなー。

サシならともかく3対1でしょ?おまけに刃物抜いちゃったのを素手で制圧されたわけだし。


プロ野球選手で年俸貰ってる野手が地元商店街のオッサンたちに良いところを見せようと草野球に参加したのに三振量産した感じかな。3人いたのに全員ノーヒットはさすがに一軍じゃないからって言い訳じゃすまないかもしれないね。飲んでた事を差っ引いても聞いた監督大激怒か。そりゃそうだな。


でも俺だって切り札使ったんやで?最後の一球だけはナックル投げた、みたいな感じやで?

もういっそ俺をプロにスカウトして丸く収まったりしないかな。あ、いや、スカウト先が球団じゃなくて傭兵団とか嫌だわ、やっぱ無し無し。


「聞いてんのか?セルシス」


おおう、フェイがなんか言ってたようだ。


「わるい、全然聞いてなかった。なんだって?」

「このままだとメンツを潰された傭兵団が逆恨みして手を出してくるから、どうにかしましょう、って話しです」

「それなんだけどさ、結局何もしてこないって事はない?ホントに無い?」

「無いな。あいつらバカだから逆にお前を殺した方が箔がつく、くらいに考えるぜ?ビルブラッド傭兵団は舐められる事を決して許さない、侮辱された報復は死をもってなす、とか普通に言いそうだ。あいつらバカだからな」


フェイがとにかくバカを強調してそう言った。なんか嫌いなんかね?


「だからさ、お前、冒険者ギルド入っちゃえよ。俺が口利きしてやるから」

「あるいは今からでも神殿に身柄を預けてみてはいかがですか?アンカネブラ神殿であれば巡礼信者として身元を引き受けてくれるでしょうし」


つまるところ住所不定無職ってのがマズイんだね。

危害を加える事でどこかとの関係が悪化するかもしれない、だからやめておこう。と考えるための材料がいまのところまったくない。

せめて住民登録されてれば領主のメンツが、なんて話しにもできるけど、俺は自由民代表の旅人さんである。しがらみの無さがこんな感じで跳ね返ってくるとはー。


ぶっちゃけ俺の遺体が川に浮いてたとしても型通りの捜査がされて犯人不明でおしまいなんだって。

その日の朝に街を出た傭兵団が怪しいと思われるかもしれない、けどそれだけ。

俺と傭兵団で揉めたって話から、傭兵団が報復したんだろう。ビルブラッド傭兵団は怒らせちゃいけない、敵に回すとおっかないって噂が流れ・・・あれ。やばいね、ほんとに全然まったく俺を殺さない理由がないぞ。メリットしかない。


「どうしてこうなった」


異世界旅行が一週間で異世界逃避行になりそうだとか。

世知辛い世の中である。

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