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・・・一人に見えるか

更新です

神将の魔力は膨大だ。

カリエンテは精霊憑依を使って長く戦いすぎた。姫巫女もまた、同様に魔力を失いつつある。

神将とて傷つき、血を流し、その身に深手を負っている。だがそれでも、対する二人の方が早く損耗し、力を失いつつあった。


「存外楽しめたけど・・・そろそろ諦めてしまいなさいな。あなた達は同胞を道連れに死への行進を続けているにすぎないのだから。少しは現実を見たらどう?」

「・・・・・・現実を見たところで、お前が望むような絶望などしてやれんがな」


赤い唾を吐きだしながらカリエンテが言う。


「わからんか?知恵なく、実りなく、やせ細った老木のお前には視えないものがあるということだ」

「私の未来視に視えないものなどないわ」

「致死の未来視、確かにおそるべき権能だ。だが本当に、未来が視える程度の事で俺たちを止められると思うのか?」

「・・・・・・なんですって?」

「くだらない、エルフは不老不死ではない、死に至る未来など生まれた瞬間から決まった運命でしかない。定まった死に絶望などするものか」

「黙りなさい、不遜な世界樹の若木。お前一人の死ではない、愛する者も、親友も、お前に従う無数のものどもの死を見ても・・・」

「それでも我らが民すべての滅びではない!!!」


カリエンテの言葉に姫巫女が続く。


「死は飲み込もう、その後ろに我らの民がいるのなら。新しき命が芽吹くなら、人々の営みが、ともしびがそこに残るならば、命を惜しむ理由などありません!!」


世界樹を背にした姫巫女が叫ぶ。

精霊が呼びかけに応じ、生み出されたのは残像のような似姿が三つ。


「二ノ陰!三ノ陰!!」


突撃槍を持った虚像の姫巫女が神将アマリアに迫る。

手刀一閃。

霞の様に切り裂かれた虚像を越えて、最後の虚像が砲弾のように飛び込んだ。


「無駄な事」


余裕の表情を浮かべて最後の虚像を切り裂こうとするアマリアの手刀を虚像の姫巫女が掴み止める。

認識阻害の精霊魔術が解け、そこに立つのはカリエンテ・フルブライトだ。


「・・・おのれ・・・!!!」

「いまだ!!」

「・・・兄様」

「やれ!!レリアン!!!!!!!!!!!」


おそらくは最後の攻防。精霊憑依で残された力の全てを籠めてカリエンテがアマリアを抑え込む。

技は互角。だが体力で、魔力で負けているカリエンテがアマリアから時間を稼げるのは虚をついた数秒だけだ。


「雲海の吐息、ジネルゴの愉悦、束ねし太陽、集う先触れ、暗夜を分かつ白銀の顎!!!!」


放たれた精霊魔術は天高くから降り注ぐ稲妻の一撃。

姫巫女の魔力の全てを注ぎ込んだ一撃は大地を砕いて巨大なクレーターを作り出していた。

維持するだけの魔力を失い、姫巫女を包んでいた現界武宝の鎧と武具が消える。


姫巫女は震えながら自分の腕を掴んだ。

クレーターの中央に立つのは、腕を折られて今にも息絶えそうなカリエンテと、いまだ衰えることないアマリアの姿。


「・・・そんな・・・・・・・・・」

「精霊魔術で私を殺せると思ったの?無駄よ。どれだけ力があったとしても、精霊の力じゃ弱すぎて私には届かない。それを信じるお前たちには理解できないだろうけれど」


どしゃり、と音を立ててカリエンテが崩れ落ちた。

息の根を止めようと膝を落とし、手を伸ばしたアマリアとカリエンテの眼が合う。


「・・・・・・奢ったな、神将」


呟きのようなカリエンテの言葉。

その眼は揺れて、アマリアではなくアマリアよりも遥か遠くを見ているようだった。


「まさか、本当に私に勝てると思っていたの?奢ったのはあなたよ。惰弱なエルフ一人の命と引き換えに私を葬ろうだなんてね」

「・・・一人に見えるか」


カリエンテが笑う。それは神将アマリアを嘲笑するような、憐れみの笑み。


「始祖ベスティアから俺たちに至るまでの道を知らず。稀人の血に流れる意志を、考えた事もない・・・原初の大神に跪き、そこで止まり続けているお前こそ・・・一人きりだ」

「・・・なんの話?」

「俺は信じた。始祖ベスティアが王配に座す緑の君を信じたように。俺も、レリアンも、オストワルトも賭けた・・・・・・意味がわかるか?」

「・・・もうおやすみなさいな」


神将の背に二十を超える爆裂火球が生まれた。すでに精霊憑依を失っているカリエンテを十度殺して余りあるだけの魔術。

光球が一斉に放たれんとした刹那、世界樹の実り溢れるこの大地に『砕けろ』と鋭い声が響き渡る。

火の粉を散らす事も無く残らず砕け散った魔術に驚きながら振り向くアマリア。

双眸から涙を流した姫巫女レリアンが、糸が切れたように膝から座り込む。




その風は鮮烈な速さで森の中を駆け抜けた。

風は風を喚び、王都に積もった塵を吹き飛ばし、澱んだ牢獄を吹き抜け、人とエルフの戦いを遮るように吹き荒れる。

そして―――――――――。


白金の神将に冷たく、銀髪の姫巫女に温かく吹き込んだ新しき風。

神代の古語は、新しき風の事をセルシスと呼んだ。

次回は彼女のお話しになる予定!あはは、どっちでもいいよね!(まて)

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