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これが宣戦布告になる

午前中時間があったので書けました!!

「誠ですかカリエンテ!」


森永麻衣子に似た声の姫巫女がそう言うと、エルフたちはしきりに俺を持ち上げ始めた。

なんでも最近世界樹の様子がおかしいらしい。

本来ならマナを浄化して世界を潤すはずの世界樹の力が日に日に弱くなっているらしいのだ。


で、俺ならそれを癒すことができるとかなんとか言うんだけども・・・・・・。


「ありえん!世界樹を癒すなど、麦の神アラヴィスムの加護でもない限り不可能だ!!」

「その加護なら持ってるけど自信は無いぞ?」


オストワルトに言い返した時の顔は凄かった。宝くじで何億か当たった人みたいな顔で俺を凝視する。


「まさか伝説の神の手を・・・!?」

「ビルブラッドと同じ!!」

「信じられない・・・」

「救われたぞ!我らの森は愛されている!!」

「素敵!!」

「くそ!」

「抱いて!!!」


男女の区別なく一斉に騒ぎ出すエルフたち。いや、なんか変な言葉混ざって無いか?

ミンスミンやトレハンクも目を丸くしているし、リオでさえ信じられないものを見るような眼で俺を見る。


「なんだよ?そんな珍しいのか、この加護」

「珍しいどころじゃないんだよ?星1つでも持ってたら村一つ自分の領地にできるし、星2つなら一代貴族になれるくらいの加護なんだからね?」


あはは。俺、星2つですよ?

え、でもなんでなんで??この加護って別にたいしたことなくない?


「アラヴィスムの加護を持つ者が畑を耕すと収穫率は最低でも倍になるからね~。凶作で半減しても普段と変わらない収穫が得られるって事がどれだけ大きいか、セルシスでもわかるでしょ?」


む、なんか言葉尻はひっかかるが理解した。

+200%とか言うのが単純に収穫量三倍に結びつくんだとしたらヤバイ加護だわ。

収穫が半減するような状況でも通常の1.5倍の豊作になるんでしょ?そりゃ国策として地位を与えてでも囲い込むよなー・・・・・・そんな話しが来ても断るけど。


・・・あれ?これって他国に寝返られると国力に直結するから断ったら暗殺される可能性とかあるんじゃないか。むしろ他国の人間に拉致されたり刺客を送り込まれて排除されたりするんじゃね?


・・・・・・・・・・・・うん、ここ以外では黙っておこう。危険回避は大切ー。


「稀人さま。真実加護をお持ちであるのでしたらお願いがございます。我らの母たる世界樹に触れ、癒しの御業をお示し下さい」


姫巫女の言葉に従う様に、すべてのエルフが片膝をつき、跪いて俺を見上げる。

ミンスミンやトレハンクの眼からは完全に敵意が消えていた。カリエンテは薄く笑い、オストワルトは俺を睨んでいるような気がするが・・・・・・もしかしたら、あれは人相の問題なのかもしれないなぁ。


「やってみても良いけど、何も起きなくても許してくれる?」

「託宣は嘘をつきません。ご安心ください」


安心できないって。だって俺、この加護使ったことないんだよ?意識したことないんだよ?

ただ触るだけで生育補助の効果とかあるのかよ??


断れる雰囲気でもないので渋々頷き、姫巫女に伴われて世界樹に近づく。

リオは俺の隣りを歩き、エルフたちも家臣団のように整然とついてきた。


触る前に一回だけステータスで加護の確認。



麦の神アラヴィスムの加護★★★

・生産・生育補助+1000%。神の手で命を育め。



なんか増えてる!?ちょ、え、1000%!?数字がおかしいって、なにこれ??

叫びだしそうになったがなんとか自重・・・奇声を上げても俺は悪くないよね!!?


「・・・・・・これ、さすがに大丈夫だと思って良いよなぁ」


とん。と右手で世界樹に触れる。大きすぎて現実感の無い大木だが・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?


何もおきない。


とんとん、ぺたぺた。すりすり。なんとなく触り方を変えてみたり、右手じゃなく左手で触ってみたりしても変化なし。


え、あれ?この雰囲気で何もおきないとかやめてくれる?

舞台で脚本家渾身のネタを完璧にやりきったのにお客さんがクスリともしなかった時によく似てるこの空気。まってまって。これはさすがに耐えられないよ神様?


「「「届いてないよ」」」


そう声をかけてきたのは精霊たちだった。


「世界樹に届いてないよ」

「邪魔してるよ」

「してるよ」

「見えないけど」

「邪魔してるよ」

「稀人には」

「見えるよ」


精霊たちの小さな声が脳の奥に響く。

俺は言われるままに看破の魔眼で世界樹を見た。


それは、光の膜だった。

薄い金色の膜が巨大な世界樹を覆い尽くしている。


「ぐぁ!?」


俺は立っていられなくなり、目を抑えてころげまわる。

その膜から感じたのは言語を絶するような意思。

痛みと歓喜、幸福と殺意が俺を塗りつぶすように襲い掛かる。


「セルシス!?」

「稀人さま!?」


リオが俺を抱きかかえる。目が潰れたように痛い。何も見えない。脳の奥に何かが響く。

腕を掴まれた。脚を抑えられた。暴れまわる俺を誰かが止めている。


滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。


死ね。殺せ。渇け。潤せ。


滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。


生きよ。飢えろ。満たせ。果てろ。


滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。


鳥肌が立つ。ああ、ああ、ああ、まさか、そんな。

これだけの声が、これだけの思いが、これだけの絶望が。


滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。滅びろ。


この悪意の束が。悪意にしか思えないこの絶望が。悪意ではないと、心が言う。

これは、人の枠の外から振りかざされた善意だ。


俺は強く加護を意識する。

心を蝕む毒と戦うために。


酒と薬の神バーナベーダの加護★★

・毒への耐性+20%。酒は三献に限る。


『砕けろ』


一瞬だけ緩んだ隙間で声を出す。

俺を操る何かを砕き、鼻から大きく呼吸する。自分が立っているのがわかった。


『砕けろ』


俺に差し込まれた感情を砕く。鼻から大きく呼吸する。強張っていた肩と膝の力を抜き、俺を抑え付ける手を軽く撫でた。


『砕けろ』


眼の痛みを、脳の奥の疼きを砕く。

鼻から大きく呼吸してから目を開けると、リオが頬を腫らして俺を抱きすくめていた。


カリエンテは姫巫女を庇う様に立ち、何人かのエルフたちが倒れ、それ以外のエルフたちは俺に武器を向けている。


「・・・・・・すまん」


回復魔法でリオを癒す。正直、どれだけ詫びても足りないくらいだ。

倒れているエルフたちにも謝罪しながら癒しの魔術を使う。


「セルシス、大丈夫?」

「大丈夫だ。問題ない」


何も考えずに竹内良太みたいな言葉を吐く。

大丈夫だ。ああ、大丈夫。俺は大丈夫だ。


「稀人、さま?」

「姫巫女に訊ねたい。魔神将と戦う気はあるか?」


看破の魔眼の中で、薄い金色の膜が水飴のように波打つ。


「舐めるなよ人間。我らエルフ、滅びても魔神から逃げはせん!!」

「滅びる為に戦うくらいなら逃げろ」


トレハンクに俺が言う。


「滅びるくらいなら逃げて良い。それは奴らを喜ばせるだけだ。勝って生き延びるためにエルフ族は戦えるか?」

「・・・・・・・・・無論です。我らエルフは、そのために生きています。太古の盟約に従い、始祖ホワイトモアの名に恥じぬ戦をしてみせましょう」


姫巫女の言葉に戦士たちが声を上げて同意する。


「なら覚悟しろ。これが宣戦布告になる」


俺は小太刀を抜いて世界樹に投げつけた。

ガツッ、と音を立てて幹に突き刺さった小太刀の柄で、青い房飾りが揺れる。


水飴のようにうねる悪しきマナが吸収されていくのを見ながら、俺は呼吸を整えた。

この世界樹を包むマナは膨大だ。小太刀だけでは吸収しきれないだろう。

魔宮の中で戦った魔神将の上位魔術。あれと同等、いや、それ以上の魔力。

できるか?と自問し、帰ってきた答えは久しぶりのものだった。


やるんだ。


できるとかじゃない、できないとかどうでもいい。

やろうと思ったなら、踏み込んだなら貫け。


限界までマナを吸収した小太刀を世界樹から引き抜き、俺が叫ぶ。


『砕けろ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』


切り札が世界樹を包む光の膜を消し飛ばした。

俺はもう一度手を伸ばし、世界樹に触れる。




そして、そこに神が現れた。

いつもありがとうございます。

読者の皆様がいるから書けています。本当にありがとう!!

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