なんか省略の仕方がおかしいよ
ゲスな話しですのでお許しを・・・!!
粘りつく悪しきマナを消し飛ばして世界樹に触れる。
とくん。とくん。と感じるのは世界樹の鼓動だ。
とくん。とくん。
とくん。とくん。
まるで心臓でもあるかのように、世界樹の命が音を立てて流れていく。
今にも消えてしまいそうな弱々しい鼓動。
精霊たちが世界樹から生まれて世界樹に還っていく。
悪しきマナを吸い込み、正しいマナに浄化して世界樹が吐き出していく。
グランディスタと俺が繋がっていくのがわかる。
いくつものマナが混ざり合い、再び世界樹に戻っていく。
それは白い世界に溶けていった時とよく似た、心地よい感覚。
「「「「「ありがとう」」」」」
精霊たちの声が響き、泉を囲う祭壇が光り輝く。
まばゆい光の中から現れたのは丸顔で誠実そうな青年だった。
捧げられた果実を手に取り、幸せそうな笑顔でぱくりと食べる。
その足元から無数の草木が生まれ、花が咲き、種を落として広がっていく。
エルフたちが這いつくばるほど頭を下げた。
俺とリオ、それから蒼白な顔の姫巫女だけがかろうじて立っている。
「よかった、ようやくここに来ることができた。ありがとうセルシスくん」
声が届く範囲の草木が喜びに波打つ。
麦の神アラヴィスムの魔力は俺と違った形で声にも宿っているのだろう。
「歓迎します。世界樹の友にして七つの鍵の守護者、実りと豊穣を司る御方」
「僕の素性を覚えているエルフがまだ存在しているとは驚きだね。知っていながら立っていることにも驚くけれど」
這いつくばるエルフたちが一斉に姫巫女を見た。
耐えるように姫巫女は一瞬だけ瞳を閉じ、開く。
「神々への敬意を忘れた事はございません。ただ、私はしるべたるものなれば、平伏せず向き合う必要もありましょう」
「英断だね、ベスティアは良い後継者を得たものだ。あの頃のエルフたちより種族として強く、個々として弱くなったとばかり思っていたけれど君は例外かもしれない」
「お褒めに預かり光栄に存じます」
「硬くならなくて良いよ・・・と言っても難しいよね」
くすくす、と丸い顔に柔和な笑みを浮かべてアラヴィスムが笑い━━━
「そうだ。君、僕の子供を孕む気はないかな?」
その誠実そうな顔面に思考する事無く放たれた俺の右拳がめり込んだ。
「痛いっ!?セルシスくん!?」
「やいセクハラ神、もういっぺん言ってみやがれコノヤロー」
「そうだ。君、僕の子供を孕む気はないかな???」
「死ね!!」
右回し蹴りを頭部に喰らったアラヴィスムが派手に地面を削りながら吹っ飛んでいく。
ああもうなんだ!!さっきまでの神秘的な雰囲気とかなんだったんだ!!
「ちょっと!やめてよ!?僕神様なんだよ!?足蹴にするとかなに考えてるの!?」
「おいカミさま」
「待って待って、もっと敬意を持って読んでくれない?なんだかチェーンソーでバラバラにされそうなニュアンスで呼ばれてる気がするんだけど」
こいつ、レプロンの同類か!?
「お前もサブカル神か。カミサマってのは暇なんですかねコノヤロー」
「暇じゃないよ!!忙しいんだからね?ハーレム漫画だって雑誌連載を追えないからコミックス待ちしてるくらいなん・・・」
「余裕ありまくりじゃねえか!!」
ボディブローを喰らったアラヴィスムが、ぐえっとカエルのような声を上げる。
「わかった!わかったから殴るの禁止!!神様殴るの良くない!」
「・・・冗談もほどほどにしろっての。何が、僕の子供を孕む気はないかな?だ、正気の発言じゃねえぞ」
「えー、だってさ、僕の場合は権能の関係で地上に降りる機会がなかなかないんだよ?今回だっていくつもの制約をクリアしてようやくこの場所に来れたんだから。この機会を逃したら勿体ないじゃない」
「勿体ないなんて理由で女を口説くな!大学生か!?」
「それにエルフと出会う機会なんて絶無だよ?しかもこの胆力、良い子を産めると思うんだよね!」
「会って1分でその結論ってのはいきなりすぎるだろうが!」
「そうかな?得難い人に会っているのに1分も口説かないなんて失礼だと思うけど」
イタリア人か。
おお、なんということだ。いまだかつてここまで価値観の合わない神にあった事はないぞ。
「ステップを踏めって話しだよ!ステップ!!」
「どうせやるのは一緒なんだからいいでしょ」
おいゲスヴィスム。いや、アラゲスムか?
「おいゲス」
「まってまってー。なんか省略の仕方がおかしいよ、あと、曲がりなりにも神をゲス呼びっておかしいよね?」
「おかしくねえよ!だいたいなんで人間と子供作るんだおまえ!」
「そっちの世界だってそういう神様たくさんいたでしょ?それに、僕の子供ならみんな僕の加護を持って産まれてくるわけだし、森を育てられる人材が増えるのはエルフにとって悪い事じゃないと思うけど?」
そりゃあそうかもしれないけども。
・・・・・・・・・え?なに、もしかして俺が間違ってるの??いやそんな馬鹿な。
思わぬ形で異世界の洗礼を受けた気がして周囲を見ると、エルフたちは全員あんぐりと口を開けて俺を見つめていた。
姫巫女は驚きに目を見開きながら、リオは妙にキラキラした眼で俺を見ている。
「僕がするのが嫌なら君が子孫を増やせばいいんだよ。エルフの国で百人くらい孕ませて行けば中興の祖として敬われるよ?」
「冗談にしても低俗すぎるって言ってんのがわかんないかな!?」
「冗談じゃないよ。使ってくれないと僕が加護をあげた意味がないじゃないか、ダンブラン脱出の時だってせっかくハーレムルート考えてあげたのに」
「レプロンとアンカネブラに妙なルート囁いたのはおまえか!?」
「ハーレム、良いじゃない、ロマンじゃない。男子の本懐だよ?」
「俺はそういうのダメなんだよ!!」
「なんで」
「決まってるだろうが!!!俺には・・・!!・・・・・・・・・あ、れ?」
「俺には?なに?」
なんだろう。言おうとした言葉が消えた。何かを忘れている気がするが思い出せない。
「・・・あれ?・・・・・・俺には・・・・・・・・・・・・なんだ?」
「ね。君は何も背負っていないんだ。背負うべきものなんてこの世界のどこにもないんだよ。だから、もっと自由に行動するべきだ。子供を作っていかなければ生き物は種族として滅びるだけだからね。これは真理だよ?命ある者が繁栄するためには子をなさねばならない」
それは・・・まあ、そうだ。
頭の中に霧がかかったような妙な感覚がある。
違和感は感じるのに、それが何なのかがさっぱり思い出せない。
「いや、だからって・・・必要以上に孕ませて回るとかオカシイだろうが」
「必要って君の倫理の問題だけだよね?少なくともこの世界で気にすることではないし、女性がそれで良いのなら問題ないでしょう?求められたら答えてあげるのが善行なんだとしたらどうするの?」
どうって・・・・・・どう、するべきなんだ。え?いや・・・・・・ほんとに、わからない。
「難しく考える事じゃないよ。郷に入れば郷に従えって言うでしょ?ほら、試しに彼女なんてどうかな?きっと良い子を産んでもぼげらっっぷ!?」
呆ける俺をかすめるように放たれた猛烈な勢いの蟻しぶきがアラヴィスムを飲みこむ。
「そこまでなんだよ。セルシスに変な事を吹き込まないでくれる?」
「・・・・・・リオ」
ぴしゃり。と、両手で挟むように俺の頬をリオが叩く。
「そんな顔してちゃダメなんだよ。セルシスはリオちゃんの仲間でしょ?リオちゃんはセルシスの仲間なんだよ?困ったときは仲間に助けを求めればいいの。セルシスのためだったら、リオちゃんどんな事だってしてあげるんだよ」
「・・・すまん」
「そうだ!!セルシスくん、君の希望通りにグーパンできる加護をあげよう!なんと副次的効果として腹パンでも気持ち良くな・・・」
「死ねゲス!!」
脊椎反射で蟻の群れから這い出てきたアラヴィスムに遠慮なく蹴りを入れる。
「ぐ・・・・・・これが・・・ヒトの子の、サ・・・・・・」
「言わなくていい!!もう帰れ!!!」
今週中(たぶん金曜の朝)にもう一回更新します。
シリーズ通してゲスの出番は今回と次回だけになるかもしれません。
こういうタイプのキャラは動かすのわりと苦手なので(書いてて加減が難しくて怖いんですよね)
・・・・・・はあ、サンドラップ書きたい。




