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ジャムをくれ!!

総合ランキング297位と表示されて狂喜乱舞したので勢いで更新デス。

「ばーか」

「ぐっ・・・・・・」

「あほー」

「このっ・・・・・・・・・」

「反省しろタコスケ」


椅子に縛られたヴェラーラを罵倒しながら、ソンドバルンドルグララオはカップにコーヒーを注いだ。

砂糖、砂糖、砂糖、ミルクの順番で淹れられたそれを一口啜ると満足そうに頷く。


「レプロン、このコーヒープレスってのは結構な代物だな!挽いた豆で味がはっきり違うぞ!」

「そういって貰えたら推薦した甲斐があるというものさ。豆は十五種類ほど用意したので自由に飲んでくれたまえ。私個人の好みとしては沖縄産のコーヒー豆を挽きたてで淹れるのが至高だと感じているが、趣味嗜好に高低の違いはないからね。自分がもっとも好ましいと感じるものを嗜んでこそ幸福と言えるだろう。だからと言って嫌いな味を否定するのも良くないから気を付けたまえよ?禍福は糾える縄の如しという言葉の通り、味覚においても変化し・・・」

「ジャムをくれ!!」

「・・・・・・そのコーヒーに、ジャムかい?ロシアンティーではないのだがね」

「嫌いな味を否定するのは良くないんだろ?」


二人から離れたテーブルで調べ物をしていたレプロンが、苦笑しながら指をパチンと鳴らす。

現れたのはベビーリーフ、カリフラワー、カボチャ、豆などが盛り付けられた大皿と、チーズが置かれた小皿、バゲットが溢れんばかりに収められたバスケットだ。


「否定を悪だとまでは言わないさ。ただ己の真理ではないというだけで、誰かの真理を無価値と断ずる事ができるほど我らは賢者ではない。神ではあるけどね。さ、まずは私が勧める組み合わせを試して感想を聞かせてくれたまえ。ベーコンジャム。人間の飽くなき探究心が実を結んだ傑作だよ」

「べえこんじゃむだと!?」

「バゲットにサラダやチーズを乗せて一緒に食べてみると良い。おすすめさ」

「俺も食べたいぞ」


縛られたヴェラーラの前で、勝ち誇るかのようにソンドバルンドルグララオが笑う。


「反省したか?ヴェラーラ」

「反省するような事はしてない」


ヴェラーラに睨まれて渋面を作るソンドバルンドルグララオ。

パチパチ、とレプロンが手を叩いた。


「二人ともいい加減にしないか。間借りしている立場で憚りなく喧嘩をする事がどれだけ恥知らずで無様な行状か、言葉にしなければわからないのかい?私はそこまで知能の劣る品性下劣な同僚を持った覚えはないのだがね。もし性根を隠して私を偽ってきたのであれば称賛するが、同時に、二度と私と飲食を共にすることはできないと思いたまえよ」


普段通りの口調であったがレプロンの言葉は最後通牒に似た響きを持っていた。

戦いに身をおかない神の言葉に、戦いに身を捧げた二人の神が震える。


「遊びが過ぎたのは認める。だが、こいつには言わなきゃならんことがある。戦士として、神でない者の気持ちがわかるものとしてだ」

「・・・反省するようなことはしていない。わからないことに謝罪はできない。だが、ロンが話し合えと言うなら、俺に否はない」

「・・・・・・なら、迷惑にならない程度に話し合いたまえ」


二人の間まで足を運んだレプロンが、ことん、とテーブルの上にジャムの瓶をひとつ置くと、ヴェラーラを縛る縄がばさりとほどけて虚空に消えた。


壁を埋め尽くす書架の中に持っていた本を戻すと、広大な図書館の奥に向かってレプロンが去って行く。



「・・・・・・・・・なんで邪魔をした」


先に口を開いたのはソンドバルンドルグララオだった。


「邪魔?なんのことだ」

「魔宮の森でだ。一度俺の干渉をはじいただろ」

「あの戦いはあいつのものだ。あいつ以外の誰かが決めるものじゃない」

「俺はセルシスに加護を授けた。しるべを示す義務がある、それは神がすべきことだろうが」

「あの男は戦士じゃない、何もしなければ迂回していたはずだ」

「は?迂回なんてするわけないだろうが」

「戦士でない者が危機に飛び込むものか」

「飛び込むさ、じゃなけりゃダンブランからとっくに逃げてたはずだ」

「逃げられない種類の臆病者もいる。変化を恐れ、戦いを恐れ、世界に文句を言うだけの愚者だ」

「稀人が臆病な愚者だと!?本気で言ってやがるのかヴェラーラ!!?」

「戦う力を持ちながら満足に振るう事も無く、研鑽もせず、これが臆病な愚者でなければなんだ?」

「てめぇ!!」


激昂して立ち上がった鼻先にサラダとチーズが盛られたバゲットが突きだされた。

丸顔の青年が笑顔のまま、ソンドバルンドルグララオに丁寧に手渡す。


「うるさいから少し静かにしようね。ロンが怒るならまだいいけど、気を付けないとあの人に焼き殺されちゃうよ?」

「・・・ああ」


毒気を抜かれたソンドバルンドルグララオが一口バゲットを齧る。

ベーコンジャムの予想外に甘い味が、複雑な美味さが口の中に広がる。


「はい、どーぞ」

「・・・ラヴィーも食べるか?」

「僕は良いよ。そろそろ行かないとだからね」


もぐもぐとパンを食べ、ぐびぐびとコーヒーを飲む。

沖縄産の次にハイチ産のコーヒーをプレスで注ぎながら、ソンドバルンドルグララオが言った。


「・・・もう少し人間への接し方ってのを考えろよ。常識外れってのは神格の問題だから目をつぶるにしても、お前はセルシスに対して厳しすぎるぞ」

「お前たちがどうしてあの男を評価しているのか理解できない。アンも、エナも、ロンもラヴィーも、あの男に何を期待してるんだ?何もしないあの男に」

「そこが不満なのか?十分に行動してるだろうが」

「俺には手を抜いているようにしか見えない」


小さく首を横に振りながら、ソンドバルンドルグララオは大きく息を吐く。


「お前は強い。強いがな、強すぎるから人の気持ちがわからねえのさ」

「神だからな。お前だって神だ、人より強い」

「そうさ、だが俺は元々人間・・・獣人だからな、獣人が優れた戦士だと言っても弱い時期はある。弱かった自分に何が火をつけてくれるのか、俺はよく知ってる。戦士でもなかった奴が急に戦士になる瞬間を何度も見てる」


「戦士は生まれながらに戦士だ。戦士は戦士以外になれない」

「お前が人間を愛してるのはわかる。だが美化しすぎだぜヴェラーラ」

「強い奴が戦士だ」

「強い人間なんざ一人もいねえ」


そう言いながらソンドバルンドルグララオはバゲットにベーコンジャムを塗り、シェーブルチーズを乗せて齧る。


「どいつもこいつも、ケツに火をつけて頑張ってるだけさ。女に蹴られて火が付く奴、ガキが生まれて火が付く奴もいれば、逆に女に溺れて火を消すやつもいる。わかるか?」

「わからん」

「てめえは戦ってりゃいいだけだからそれで良いんだろうがな、人間ってのは戦うだけじゃねえのよ。だから、戦う事を教えてやらなきゃいけねえ、その魂がある事をわからせてやらにゃならねえ」


「お前風に言えばな、人間はみんな弱い。だが、戦士になれねえ人間はいねえんだ」

「弱い女や子供でもか」

「弱い女や子供でも、だ。自分の身を守るためなんて理由じゃ戦えない奴でもな、大切な誰かや、何かのためなら戦ってみせるのよ」

「・・・・・・それは戦士じゃない」

「そうだな。お前の言う純粋な戦士じゃあねえわな」


「でもなあ、お前の理想そのままの戦士なんてのがこの世にいるかね?」

「いるはずだ。少なくとも、かつてはいた」

「そりゃ、もしかしてベスティアの旦那さんか?ありゃお前・・・・・・もうそもそも違うだろう。ありゃお前、グランディスタの人間と比べちまったら可哀想だっての。ありゃお前、ありゃ、もうな。モノが違うわ、俺がくぐった修羅場を百周くらい走り続けてすり潰されないだけの心が必要だぜ?いてたまるかよ」

「だが子はいる。薄くとも血はある。あの男の血を持つものが戦士でないはずがない」


「戦士の血を受け継いだ奴が戦士って考えは獣人にもあるけどな・・・・・・強さの理由を血に求めるなら話はもっと簡単だぜ、ヴェラーラ」

「簡単?」

「どこの世界でも、人を作り出したのは神だって言うだろ?みんな神の子なら、その血に神が宿る人間にできねえことなんざ何もねえ。全身全霊全血でもって戦士になる事を望むなら、そいつは全員戦士になれるってことで良いじゃねえか。器はみんな持ってんだからよ」


俺に言わせりゃセルシスは十分に戦士だ。

よくやってるよ。どこかで間に合わなくなる時がくるだろうけどな。


ベーコンジャムをスプーンでガツガツと食べながら、ソンドバルンドルグララオはそう言った。

あまり頻繁な更新ができない遅筆者ですが、エタることなく書いていきますのでご容赦ください。

では、また来週!!


川崎バルザック

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