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枯れ落ちる病葉になるなよ

レビュー頂きました!!佐倉治加さんありがとう!!!

招かれたのは山賊のねぐらだった。

エルフの街は世界樹を中心に広がっている・・・・・・と聞いていたけど、ここは良く言って集落。というか、どうみても山賊の住処にしか見えない。


なんだろうか、人間の都市と比べたら違うのは当然なんだけども。

野趣が溢れるというか、なんというか。少なくとも高貴とか神秘とかではない、生々しい生活感があるのは間違いない。


「食え」


カリエンテに手渡されたのは野菜と肉の煮込み汁だ。

よく血抜きされた猪肉が美味い。茸と野草の苦みも独特で、癖になる美味さがある。

藁葺きの民家とエルフのコラボレーションから感じるギャップ。ヤバイ、これヤバイ。

土間のような場所でエルフと膝をくずして鍋をつつくなんて、どうにも違和感しか感じない!!

・・・・・・のだけれど、不思議な事に悪い気はしなかった。


「ふぁああ」


蜂蜜酒に口をつけたリオが目を輝かせて嬉しそうな声をあげる。

カップ一杯をゴブリゴブリと飲み干したかと思うと、なみなみ蜂蜜酒が入った樽を自分のもののように抱え込んだ。


「おいこらリオ、エルフさんたちに返しなさい」

「美味しいんだよ!?これすっごく美味しいの!!」


うんわかったから。会話しような。


「ほら、猪肉も美味いぞ?」

「や~だ~、リオちゃんこれがいい~」


俺とリオのやりとりを見ていたエルフたちがクスクスと笑う。


「あー、いや、ほんと申し訳ない。いま取り返すから・・・」

「気にするな、蜂蜜酒ならたくさんある。お前も好きなだけ飲むといい」

「・・・すまない。こんな歓待を受けるなら何か持ってくればよかった」

「我らエルフは敬意を持って戦士に接する。お前は俺たちに勝ち、誰も殺さなかった。感謝と返礼を喜んでもらえるならそれ以上は何もいらない」


車座になっているエルフたちの何人かが頷く。

リオの酒癖に気を付けたものの特に悶着もなく、俺はエルフたちと笑いあいながら楽しい時を過ごすことができた・・・ほんの少しの間だけ。


「・・・なあ、ここって何人くらいエルフがいるんだ?」

「ここは拠点の一つで必要な時しか使わない・・・人数で言えば多くても三十人程度で使っているが、それがどうした?」

「なら、表にいる連中は仲間なのか?」


言い終わったと同時に、どかん、と扉を蹴破るようにして武装したエルフたちが飛び込んでくる。

十人程度の集団だが全員荒事に慣れている空気があった。人さらいの集団だと言われたら信じるレベルだ。


「カリエンテ!そいつらを引き渡せ!!」


頬に大きな刀傷のある先頭のエルフが言った。うん、もう山賊で良いんじゃないかな?

エルフザバーバリアンとか種族として新しくない?エルブンバンディットって斬新じゃない??声は玄田さんで良いんじゃない?・・・いや、細身だけども。


「なぜ、お前がここにいる?姫巫女さまの警護はどうした?」

「姫巫女さまに託宣があった。その二人を世界樹まで連行しろと仰せだ」


眉根を寄せたカリエンテが立ち上がる。


「ミンスミン・オーカーシーカー。いつからエルフは戦士を虜囚のように扱う下衆に堕ちたのだ」

「黙れ!!いくら貴様が頭目の一人であろうと姫巫女さまの言葉は絶対だ、逆らう事は許されん!!」

「それが誇りあるオーカーシーカーの言葉か。崇拝も信仰もお前の一部であってお前の全てではない、オーカーシーカー。祖霊に誇れる態度を示せ、旅人と戦士にいかなる非もない」

「世界樹の森に許しなく入ったことだけでも大罪だ!」

「森で羽を休める渡り鳥にさえ罪を問うのか?思考を放棄すればエルフは樹木と変わらぬぞ。いや・・・木の根ですら己の進む道を己で決める、枯れ落ちる病葉になるなよ、ミンスミン」


カリエンテが手をかざすと、今にも飛びかかりそうなミンスミンの身体が張り付いたように硬直した。


「・・・すまないセルシス。リオ。食事の途中だが同道して貰えるだろうか?身の安全は我が名と命に懸けて保証する」

「どこまで行くんだ?」

「世界樹だ。我らエルフの都がある」


エルフの都は興味あるなー。危険じゃないなら行ってみたい。危険じゃないなら・・・・・・無理だよなー、この流れで危険じゃないわけないじゃんね。


「帰るって言ったら?」

「困る」


カリエンテが即答する。正直だなオイ。

射殺すように睨みつけるミンスミンの視線を受け流しながらカリエンテが口元を歪める。


「困るが、お前たちはもっと困るぞ」

「・・・やっぱり、森の外まで連れてって貰うわけにはいかないよな」

「ここを離れる時は自力で逃げて貰う事になる。俺は追わないがミンスミンたちは追うだろう、お前たちがエルフを殺せば、俺もお前の敵になるかもしれない・・・あまり愉快な事ではないな」


デスヨネー。

ちらりとリオを見れば、樽を抱えて我関せずを決めこんでいる。

っていうか確実に聞いてないな。どんだけ社会に馴染めないんだこいつ。


「条件は三つ」


ミンスミンと呼ばれたエルフを見つめながら俺は大きく三本の指を立てた。


「一つ目、俺はエルフ族の文化、習俗に疎い。どれだけ無礼な事をするかわからんが、人間の街から来た田舎者のすることと笑って許してほしい。無知で無学だが、許容できるか?」

「許容する」

「ぬけぬけと・・・!!」


カリエンテが言い、ミンスミンがぎりっと歯をくいしばる。


「二つ目、こちらに交戦の意思は無い。穏便に交渉してくれる限りは俺が話を聞くし、命令や恫喝でなければ従う余地はある。だから・・・・・・だから、俺たちに仕掛ける前に、なるべく言葉を尽くしてくれ」

「・・・・・・できなかったら?」


楽しそうにカリエンテが問う。

わかって聞いてやがるな、性格悪いぞコノヤロー。


「エルフの強さはよくわかった。手加減できないことも。さっきはたまたま運が良くて誰も殺さずに済んだだけで、次もそうできるか自信がない」

「人間の分際で、我らエルフに勝てると言ったか!」


もう、そこ突っ込まないでくれよ。ミンスミンだっけ?もうちょっと行間を読んで欲しいなぁ。

切り札使っただけで殺せるよなんて言えるわけないんですよ、ええ。そんな情報漏らしたら姫巫女さまとやらに会う前に殺されるでしょ?なんで自分で自分の死刑執行届に署名しなきゃいかんのだ。


「勝てるとか勝てないとかじゃなくて、強いエルフと争う気はないから争う前に言葉でわかりあいましょうねって言ってるんデスヨー」

「・・・良いだろう。ミンスミン、人間を弱いと侮るならもっと堂々と構えておけ。嬉々として弱者を攻撃するものに始祖の恩寵はないぞ」

「・・・・・・わかっている!!」

「三つ目は・・・」

「まだあるのか!!」


最初に三つって言ってるじゃないの。


「食事が途中になったから、都でもそれなりに飲み食いさせて貰えると嬉しい。あと、そこの蜂蜜酒はリオの物にしてもいいかな?」


ベロベロと口の周りを汚すように蜂蜜酒を飲んでいたリオが、初めて興味を持ったように顔を上げた。

ははは、グーで殴りたい。なんだこいつ、グーで殴りたい。

全然酔っている様に見えないリオは、酒が自分の物になるとわかったら安心して飲むのをやめて樽をしまった。後でちびちび一人酒とかするのだろうか。


・・・・・・ん?

ざわざわとエルフたちからも声があがった。


「なあリオ、持ってた酒樽どこやった?」

「セルシスも飲みたいの?どうしようかな~、これはリオちゃん秘蔵のお酒なんだよ!!」

「ああ、うん、ついさっき俺が交渉してお前の物にしてやったエルフさん秘蔵のお酒ね」

「あはは、どっちでもいいよね。今はリオちゃんのお酒だもんね!」


すいません神様ー、こいつが泣かないくらいにグーで殴れる加護ってないですかね?プリーズヘルプミーですよー!


「まあ、どっちでもいいけどよ。それよりどこにやったんだっての」

「ここだよん」


リオがすっと手を動かすと、虚空から大人が一抱えするような酒樽がごろんと現れる。


「・・・・・・・・・は?」

「規模の小さな異空間と繋いで出し入れしているのだろう。失われた神代の魔術だな」

「師匠に習った魔術の中でも消費効率が一番良いから便利なんだよ。元々は大師匠が作った魔術らしいんだけどね!」

「・・・どうやってんだ?」

「識別用の魔力を対象にさすだけだよん。あとは近傍隣接する位相空間にぽいするだけ~。位相空間状に定義してあげた物体は変質しない特性を持つから便利!!自立移動で転移してくるわけじゃないから連続する位相空間の輪を収束させて・・・」


OKOK、そういやS級冒険者でしたね。≪冒涜者≫リオさんでしたよね。忘れかけてたYO。


「多層構造の次元界を繋いで定点固定する場合の計算式なんかは・・・」

「もういいわかった、俺は普段のお前の方が好きだって事がよくわかった」

「ふふん。リオちゃん天才だもんね~・・・え!?セルシスってリオちゃんと結婚したいの!?」

「んなこた言ってねぇ!?」

「あはは!エルフの街までの移動って、きっと裏のポータル使うんだよね?術式が少し破損してるところがあるから直してあげるね~」

「おいまて、勝手に行くな!!」



パタパタと走り出すリオを追いかけて俺が出ていく。



「・・・馬鹿な、人間が時空魔術だと・・・?≪渡界の隠者≫さまにしか使えぬと聞く秘術を・・・!!」

「ミンスミン!」


カリエンテが強い口調でミンスミンを黙らせる。


「・・・ミンスミン、本当に姫巫女さまが連行しろと言ったのか?芽吹く命、新しき風、そして神代の魔術の使い手を?」

「神託は本当だ。あとは・・・若長に聞いてくれ」

「もしかしたらビルブラッドを助けられるかもしれんぞ」


カリエンテの楽しそうなつぶやきを聞きながら、ミンスミンは複雑な表情を浮かべて唇を噛んだ。

なにが起きているのかわかりませんが、ユニーク4500なのにブックマークが90を超えています。

評価も頂いていて嬉しいやら嬉しいやら!!(大事なことなので2回言いました)

1点の評価でも作者には感謝しかありません。本当にありがとうございます!!

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