エピローグ・上がMで下がS
第一部エピローグになります
目が覚めたら門の前にいた。
「・・・・・・は?」
思わず声がでるが誰も返事を返してはくれない。
きょろきょろと周りを見てわかったのは自分が一車線くらいの狭い道に立っているということだ。
背後は身長より高い生け垣で何も見えず、目の前のでかい門を挟んだ生け垣も同様に左右に伸びていて、終わりが見えない。
門はとてもシンプルで・・・魔宮の門みたいな材質さえわからない重厚で不気味な門じゃなく、すごく普通の木の門だ。
あ、いや、ダンブランで見る木の門って意味での普通なので地球の感覚だとハリウッドスターが持ってる別荘地の門みたいな感じ。ビバリーヒルズ的な。ビバリーヒルズなんとか白書的な。違うか。
2秒ほど考えてからノックしようとしたら、観音開きの門が内側に向かって自動で開いていく。
あははははは、明るいから良いけど夜だったらホラーハウスじゃねえか、なんだこれ。
スティーブン・キングの小説だったら昼間でも余裕でデッドイベント起きるシチュエーションですよ?
うわー、いやだ、入りたくない。もうさ、グランディスタに来てから十年分くらいの酷い目にあったと思うんだよね。ここから先はラブ&ピースなハッピーライフで良いと思わない?TOでラブるようなヤツ。ボーイズがビーするようなヤツでも良いんだけどもさ!!
こそこそと門の内側に入ってみて、どうしようもない広さに唖然とする。
戸建を1ダースくらいくっつけた「僕の考えた最強の家」みたいなでかさの建物が一つ。
隣りにはガレージ、向かいにはテニスコート。
こっちの手前にあるのはなんだろう?木とフェンスに囲まれるようにしてなんだか一段高くなってる事だけはわかるのだけど中がわからない。100メートル四方くらいありそうだ。
「・・・・・・またレプロンかな?」
庭に行った時の事を思い出す。
加護を貰って翌日確認した時は「なんじゃこりゃ」と思ったものだが、使ってみたら恐ろしく便利な加護だったのは間違いない。恐怖心とかそういうメンタル的な要因を全部無視して思った通りに一歩行動できるのは凄いことだ。
この一歩が物理的に足を出す以外でも有効なら株でもやってみようかな?
思った時に躊躇なく売り買いできるなら負けない気がする・・・いや、地球だと『相場の神ソウキュウ』とか『知恵の神ジョブズ』みたいな人の加護が無いとだめかもしれん。
良いなぁ、ジョブズの加護があったら起業するわー。声優だけでリーディングチーム立ち上げて地方巡業とかできるレベルまでもっていきたいですなー。
などと益体も無い事を考えつつ敷地の中を探索していると謎フェンスの中へ入れそうな場所を発見。
躊躇なく侵入。いや、だって気になるじゃないですか。
「うわぁー」
プール付きの豪邸というのを初めてみたけどこういう感じなんだなぁ。
個人で使える50メートルプールが敷地内にあるとかマジ理解不能。水道代とか管理費考えちゃう俺には仮に金があっても買えない物件ですわ!!ふわー、飛び込み台までついてるし。
「セルシスさま。ようこそいらっしゃいました」
そういって声をかけてきたのは・・・・・・・・・・・・痴女だった。
いやいやいやいや、冷静に考えて絶対に痴女と遭遇する状況じゃないよね!?
整理しよう。彼女は美人だ。ウェーブのかかった長い髪。胸がでかい。
たれ目がキュート。胸がでかい。小麦色の肌。胸がでかい。
OKOK、全然整理できないって事だけはわかった。
えーっと、なんていうのこういうの?爆乳?いや違う、胸の話しはどうでもいいんだ。
問題は着ている服の方だ。服?服って言うの、アレ?
マイクロビキニってやつですよ。生で見るの始めてだけども。だけどもー。
「お姉さまー、この人がマレビト?」
続いて登場したのは背の低い可愛いらしい御嬢さん・・・・・・・・・・・・の、痴女だ。
へいへいへーい、ここは桃源郷か?ないしドッキリ美人局的なイベントか?
整理しよう。彼女は可愛い。身長は150くらいでツインテールがよく似合う。あと胸が控えめ。
姉に比べて妹はつり目みたいだ。あと胸が控えめ。小麦色の肌。あと胸が・・・。
OKOK、オッサン舐めんなよ?こんなイベント余裕で踏破してみせようじゃあないの。
スタジオでアイドル系の若い子がキワドイ服装してても全然気にしないで収録していた実力を見せてやるぜHAHAHA。
「なんかさっきから胸見すぎなんだけどー。ホントにこのマレビトが神将に勝ったの?」
Oh、無理だったよ。だってキワドイ恰好とかじゃないもの。もうアウトだもの。
スタジオにいたらガン見しちゃうよ。収録なんてできねえよ。無理無理。
むしろこれで見ない方が失礼じゃない?失礼だよね?
「しかも、なんていうか、ぱっとしなくない?もっとカッコイイと思ってたんだけどー」
「・・・・・・すみませんセルシスさま」
「あ、いえいえ、気にしないでください。ところでお二人ともグランディスタの神様、であってます?」
痴女の神エローラとかですよね、きっと。いや、欲望の神とか色欲の神でも良いんですけど。
「はい、私どもは冥府の双神。妹は自由と死の女神ネイアエスナ、私は愛と生命の女神ナイアエムネと申します。本来でしたら神将を討ち果たされましたセルシスさまの元へこちらが伺って当然のところ、呼びつけるなど無礼千万な真似を致しました。いかように罰して頂いても構いません。ご不快でしたら、どうぞお気の済むまで私を打擲なさって下さい」
おお!小太刀に加護をくれた神様!!!ってまってまって、おれを見る目が酷くない?そんな暴力振るう系だった記憶がないんだけど。
「誠に申し訳ございません。私はなんでも致しますので妹だけはお許しください。なにとぞご寛恕いただきたく、伏してお願い申し上げ・・・」
「なんかすげー誤解があるみたいだけど、なんで俺が殴って当たり前みたいになってんの!!?」
涙目になって謝りながらナイアエムネが俺の身体に急接近してきて、ぽよんとアレがアレしたので慌てて止める。
「・・・ロンが、セルシスさまに会うのであれば当然こうすべきだと」
「ロンって誰?」
「マレビトあったことあるでしょー?レプロンだよ。螺旋なす時の神レープーローンー。忘れちゃったの?あったまわるーい」
くそぅ、ネイアエスナの暴言がイラっとするのにイラっとしない。なんかもうマイクロビキニってだけで暴言を許せてしまうなぁ。くやしいなぁ。
それにしてもレプロンめ、俺の悪評を神様回覧板か何かで周知してやがるんだな。こんどあったらとっちめてやる。
「この服装もロンに言われたのですが・・・いけませんでしたでしょうか?こうすれば喜ばれると聞いていたのですが」
心の友レプロン。
なんていうか、よく考えたらグランディスタで会った神々の中でお前が一番信用できる男だった。
なにしろ他の男神はドドラガリくらいしか会ってないしね!!
今度あったら何かオススメの甘味を教えてやろうじゃないか。ありがとうレプロン。
「・・・失礼しました。いま着替えますのでお待ちくださいませ」
「ストップ!!そのままで良いから!!!!いや着替えるのは良いけど俺の前で脱がないでくれ。ストップストップ!!!」
「・・・・・・お姉さま、マレビトに脱がしてもらえばぁ?」
ちょ、おま。なんだお前、敵と見せかけて味方パターンだったのか。誤解していたよ。
「そうですね。己の手で自らを処罰しようなどと思いあがった真似を致しました。セルシスさま、どうぞご自由になさって下さい」
「ひゃっほーぅ!!ってなるか!?」
さすがに慣れてきた。と、いうか、そもそもなんで俺はここに呼ばれたんだろうか。
レプロンの時は切羽詰まる状況だったんだけど、今回も何かあるのかしら・・・嫌だなぁ。
「ちょっと確認したいんだけどもさ。なんで俺を呼んだわけ?理由があるなら教えて貰えるかな??別に怒ったりしないから」
「・・・怒ってはくださらないのですか?」
ナイアエムネ。なんでモジモジしてるんだ??
「ロンに頼まれたんだよー。お手紙。マレビトは頭が悪いみたいだから特別に読み聞かせてあげよっか?」
「おい、いまどこから手紙だした」
「見てたでしょえっちー。ちゃんとお願いできる?良い子にしてお願いできたら読んであげるよ?」
なんだこのくそマイクロネイアビキニッスナめ。お願いします。
「『親愛なるセルシス、まずはおめでとうと言わせてほしい。君は我ら諸神の想像を超える結果を残した、これには私も驚きを禁じ得ない。驚きのあまり失禁してしまったほどさ
「おいまて勝手に文章足すな。そのまま読めそのまま」
「えー。しょうがないなー」
失禁するとかレプロンが言ったら俺が驚きのあまり失禁するわ。
「『君は我ら諸神の想像を超える結果を残した、これには私も驚きを禁じ得ない。上位魔神までならともかく、神将と相対して勝利するのは不可解な結果と言っても過言ではないだろう。驚くなかれ、理論値としての勝算は1%を切っている。無論、君だけの功績ではなく、神将が所有するマナが想定より少なかった事や、生き延びた冒険者たちが積み上げたもの、死んだ冒険者たちが積み上げたもの、それらすべてを合わせた結果だ。ヴェラーラがしでかした事を考えれば総合的に損失の方が大きいような気もするが、ひとまず生き残り次の歩みへ進む権利を得たのだ。勝利を祝い、歌い、踊り、大いに喜びたまえ。さて本題だが、君の加護についてだ。結論から言うと、君は死ぬ』」
「だから足すなってば。そのまま読んでくれよ」
「これは書いてあるよ」
「なんだとおい!?」
大いに喜びたまえ、君は死ぬっておかしいだろ!!!
「『まあ落ち着いて聞きたまえ。君の加護は本来の使い方を逸脱しているのさ。具体的に言えば、ピサンティエが与えている看破の魔眼だ。あれは本来物品の鑑定に使うような代物でね、有用であり希少性も高いが、ステータス表示での星は2つしかついていないだろう?君の使い方は説明書に書かれていない裏技のようなものだ。そもそも地球の人間でなければ、何かを探す時にグーグルアースのような機能を想像しないからね。まさか俯瞰で周囲一帯から目的の物を看破するなんて事ができるとは私にもピサンティエにも考えつかなかった。万が一そんな手法を思いついたものがいたとしても通常なら脳が処理できないか魔力が足りないかで実行できないはずなんだが、君はその辺りを加護で補填しているからね。耐えれば使用できてしまう。これが問題だ。
「『いいかいセルシス。勇気ある友よ。私は君の勇気を知るからこそ忠告する。悪い事は言わない、今後は使い方を改めたまえ。脳を焼くような痛みはそのまま君の命数を削っているのだと理解したまえ。君がしているのは新下関から東京までママチャリで移動しようとするようなものさ、ロードバイクと勘違いして使えばどれくらい負担がかかるかわかるだろう?
あ、ごめん、なんか急にわかりにくくなった。
あと、なんで新下関なんだろうか。
「『新幹線で移動できる本州の端を想定してみたんだがわかりにくかったかね?じゃあこう言い換えよう。アミューズメントパークに入場券のみで入って終日アトラクションに乗っていたら別料金で破産しかねないという事だよ。某ネズミの国を思い出したまえ
ネズミの国に入場券だけで入れたのって何年前の話しですかコノヤロー。
「『確かに今はできないが
「まてまてまて、もう絶対に手紙じゃないよな?リアルタイムでチャットでもしてるんじゃねえかって内容になってんぞ!!!」
さすがにおかしいだろう、というかレプロン直接来いよ、もう。
「『誤解しないで欲しいが、これはすべて事前に私がしたためた文書さ。あくまで君が返すであろう反応を想定して書いたに過ぎない。そこまで書くくらいなら直接会いに来いと思っただろうが、我々神々にはやらねばならない事がある。神であると言うのも不自由なものだ。なにしろ我々は人間を愛しているからね。こうみえて愛する者の為に人知れず励んでいるのだよ?企業戦士と変わらない、いや、毎日無休で残業続きだと思うと神の仕事と言うのは群を抜いてブラックだと言える。そうは思わないかね
知らんがな。
「『ともかく忠告はした。君の人生、君の歩みの決定権はどこまでも君にのみある。だが、命の値を間違えないようにしたまえ・・・・・・さて、最後にもう一つ、ヴェラーラがしでかした事について説明しておこう。彼女はアバターを使い君の前に現れたはずだ。メッセンジャーとして危機を伝えたわけだが、彼女は現在、とあるものを封じる職についている。ピサンティエやドドラガリ、私などと一緒にね。だが同じ封じると言っても神によって向き不向きがあり、使用する力の量も違えば効率も違うのさ。単純に言えば私と戦の神とでは戦の神の方が戦う力が強い。当然のことだと言える。今回ヴェラーラはフェイと言う冒険者に加護を与えてしまった。加護は神々の力を分け与える事に他ならない。アバターとして地上に降りるだけならともかく、本来なら使うべきでない力を加護として与えてしまったわけだ。無論平時なら問題ない。だが思い出してくれたまえ。なぜ君がグランディスタに来たか
マナ溜まりが限界にたっし・・・てたって・・・・・・言ってたな。おい。
「『3秒もあれば答えに辿り着くはずだ。そう。神将を倒すことはできたが、その分、消費された力の分は封印を抑えられなくなり、いくばくかの封印が解けてしまった。いますぐ世界が滅びるとは言わないが、その方向に一歩進んだと思って間違いないだろう。由々しき事態だともいえる
「どうすんだよおい!?」
「『どうするんだ?と君なら聞くだろう。どうもしないよ。かつて君に言った言葉をもう一度繰り返そう。自由に生きて構わない、そこになんの制約も我々は設けない、とね・・・・・・いまとなっては、設けた所で君が従うとも思えないが
いや、しかし、それじゃあ・・・
「『ヴェラーラの件は知っていて欲しいから伝えただけの情報さ。君がすべてを背負う必要は無い。戦う意思のあるすべての人間が戦うべきだし、戦わない人間も何をすべきかは決めるべきだろう。世界の歩みは人間一人一人が決めていくものだと私は信じている。むしろ背負うべきものがいるとするならば、戦の神に選ばれた君の友人の方かもしれないね・・・・・・セルシス、次に会う時を楽しみにしているよ。どうかそれまで元気に過ごしてくれたまえ
「あちっ!?もー、レプロンのばかー」
手紙を読み終えたからだろう。マイクロビキニッスナの手の中にあった手紙が燃えてしまい、キラキラとしたマナになって溶けていく。
「なあ、神々が封じてるものってなんなんだ?魔神将よりやばい何かなんだろ?・・・いや、我が主とか言ってったから想像はつくんだけどもさ」
「nnryndnsskntk」
「・・・は?なに?」
「マレビトってば耳悪いの?それとも耳元で囁いて欲しいの?だったらちゃんとおねだりしなきゃねー」
ビキニッスナまじウザイわー。
「セルシスさま。長い話しでお疲れになったでしょう。こちらをお飲みください」
スゴイムネネ・・・じゃなかった。ナイアエムネが手渡してくれたのは真っ赤なドリンクだった。
洋ナシ形のグラスに入ってるからカクテルとかそういう系統だと思うのだけど、ちょっと見た事がないくらい鮮やかに赤い。凄く綺麗で飲むのがもったいなく見えるほどのそれを一口含む。
目が覚めるような味だった。
美味さで言えばレプロンが出すものの方が上だけど、こっちの方が身体の芯に染み渡るような感じ。
「バーナベーダから譲り受けた薬酒になりますがお口に会いますでしょうか?」
「おいしいね、なんだか元気になった気がするよ」
「元気になった気がするじゃなくて元気になったの!!これでやっと起きれるんだから感謝してよね!」
「失った魔力や血を回復させてくれますから、じきに目が覚めることでしょう」
そういえば出血多量と魔力枯渇で気絶したんだっけか・・・もしかしてやばかった?
「昏睡状態みたいな感じだったりする?もしかして」
「そうですね、かなり長い間、意識を失ってらっしゃいます」
「うわー、そりゃみんなに心配かけちゃってるなあ・・・・・・一応聞くけど、みんな無事?」
「無事だよ!一番無事じゃないのがマレビトー」
みんな無事なら良かった・・・いや、本当に良かったよ。うん。
「起きたらみんなに謝らないといけないな」
「・・・それは、難しいかと」
「え?なんで?」
「マレビトがもういないからー」
は?ちょっと何言ってるかわかんないんだけど。
「だから、マレビトはもういないんだってば」
「俺は生きてるし目を覚ますんだろ?いないってなんだよ」
「ダンブランにいないんだよ。もう、わーかーれーよー」
「セルシスさまは南に向かって移動しておられます」
本当に何を言ってるのかわからない。
ナイアエムネを問い詰めると、彼女は俺に何が起きているのかちゃんと説明してくれた。
俺は手のひらで顔を覆う。ああ、なるほど、フェイはこういう気持ちと戦っていたのか、と心の底から理解する。
うん、よし、目が覚めたらとりあえず一発ぶん殴ろう。
絶対物理防御とか言っても気にせず殴り続けてやる。
女だろうがなんだろうがS級冒険者なんだから絶対手加減しねえぞコノヤロー。
≪冒涜者≫リオに拉致されたセルシスが目を覚ますのは、これからちょうど12時間後の事だった。
新しき風が北から南に吹き抜ける。
散り、枯れ、消えていく命の中で芽吹く命もあるのだろう。
風が何を運び何処へ向かうのか。
グランディスタに、結末を知る者はいない。
【第一部・完】
相場の神ソウキュウは本間宗久の事です。米相場の神。
今日は一時間ごとに(設定資料など)投稿していきます。




