きっと、見てもつまらない、ですよぅ・・・
鍛冶の神オルトヴァの神殿、いばらの賢神カムナエナの神殿でも★が増えてくれた。
どちらもかなり嬉しい。
鍛冶の神オルトヴァの加護★★
武器の威力+20% 魂は己が手の先にまで宿る。
いばらの賢神カムナエナの加護★★
魔力+20% 知は力なり。
鍛冶の神オルトヴァは身の丈よりも大きい両刃の戦斧を持つ雄々しいドワーフのような恰好をしていた。
背中には短めの槌、腰には手斧、どうみても軍神か戦神の装いだ。
その猛々しい姿、躍動感が余すところなく石像に刻まれており、今までみたダンブランの神像の中では一番優れた出来に見える。
しかし、この勇壮な姿に似た種族はグランディスタに存在していないようだった。
ドワーフ族は大昔に滅びたという事だが、逆に言えば昔はいたということだ。オルトヴァは滅びたドワーフ達の主神だったのかもしれない。
一方の、いばらの賢神カムナエナは美しい女性だった。
全体にだぼっとした衣装で茨の冠をかぶり、手には本を持っている。
足元まで届く長い髪の途中からは茨が幾重にも突き出し、カムナエナを守るように広がっていた。
カムナエナの姿は唯一石像ではなく、一枚の絵として飾られていた。
彼女は知恵と知識の神であり、魔法の神であり、書物の神でもあるらしかった。
「セルシス様!次で最後ですね!」
元気いっぱいにドミが言う。様付はやめてくれと言ったが丁重に断られたのであきらめた。それどころか逆に、獣人族は受けた恩を生涯忘れることはないんです!様をつけないなんてとんでもない!と怒られたくらいだ。
この身長140センチの猫耳さんは表情がコロコロかわって、怒ってる時もとても可愛いらしい。
「セルシス様はどの神様が一番お好きなんですか?」
ドミが日本人には答えにくい質問をしてきた。
この世界の人は自分が信仰する神様に序列をつけるらしい。
どれも同じくらい、というのは神様をないがしろにしている行為にあたり不敬な事なのだそうだ。
七福神で一番好きなのは誰?とか、菩薩派?如来派?みたいな質問が出てこない日本人としてはぶっちゃけ全部好きと言ってしまいたいところだ。
クリスマスから一週間で初詣する国民性を舐めるなよ?
教会で式を挙げて神様に夫婦の誓いをしてからお墓に入って仏になるんだぞ。
「ドミはやっぱり獣神か?」
「はい!私の一番は獣神ソンドバルンドルグララオさまです!」
獣人族の名前は変わったつけ方で、生まれたら必ず2文字の名前になるらしい。
子供が男子なら戦士になった時に名前の最後に1文字足して3文字の名前に、女子ならば結婚した時に同様に1文字足して3文字にするんだそうだ。
そこから先は武功を立てたり部族の危機を救ったり、とにかく英雄たる証を立てた時に1文字、また1文字と名前の後ろに足していくらしい。
獣神様が実在したのかどうか知らないが、少なくとも戦士になってから9回は英雄と呼べるだけの結果を出したってことなんだろう。関羽みたいなもんかな。少なくとも顔良を余裕で斬るくらいの強さはありそうだ。
「俺は・・・うーん、やっぱりアンカネブラかな」
ピサンティエと合わせて、礼しかでてこない神様だ。もちろん獣神の加護もありがたいんだけども。
「・・・セルシス様は旅をされているんですもんね。でも、そんなすぐにどこかに行ったりしないですよね!?」
涙目になったドミがしがみついてきた。うん、好意が身に染みる。
「もちろん、すぐにどこかに行ったりするのは嫌だよ。路銀だって残り少ないし、まだダンブランで見てないものもたくさんあるしね。冒険者仕事もしてみたけど思ったより危なかったから、もう少し安全な仕事を探してみるつもり」
「そうですか・・・良かった!!」
満面の笑みである。ロリ属性が無かったから良かったもののこれで年上だったら全力で口説いていたかもしれん。はっ!あとで年上のお姉さんがいないかだけは確認しておかないと。
最後に訪れた戦いの神ヴェラーラの神殿は他の神殿と一線を画していた。
街の中心部からどんどんと離れた先、無数の馬小屋や騎士たちが訓練する練兵場と併設された神殿は他のどこよりも小さく、装飾の無い簡素なものだった。
ダンブランの正騎士や神殿騎士たちが走り、剣を合わせ、馬を走らせる喧噪のなか、ヴェラーラは凛々しく空の一点を見つめている。
その両腕は武器を持たない。鎧も着ていない。シンプルなベストにズボン、腰には剣帯。
動きやすさを追求したような質素極まりない格好だ。
そんな静かな石像なのに、不思議な威風を感じた。
ヴェラーラは神々の中で最も強いとされる。
戦えば勝つのだから剣を抜く必要が無いと言う。
斬られる事が無いのだから鎧を着る必要が無いと言う。
その目は空の一点を見つめる。
見据えた先には未来が、希望が、勝機が、およそ敗れる弱者が求めてやまないものがあるのだと言う。
「綺麗だな」
「はい・・・・・・にゃにゃ!!?」
この石像を彫った人の思いが溢れているようだった。何かの願いが込められている。この石像には命がある。素直にそう思える。そんな吸い込まれるような美しさがあった。
「にゃ・・・その・・・綺麗とか・・・だって・・・」
「綺麗だよ、持ち帰りたいくらいだ」
「もち!?・・・そんなこと・・・でも」
「一晩中見てても飽きないな、きっと」
「・・・・・・・・・その・・・小さいですし、きっと、見てもつまらない、ですよぅ・・・」
「触ってもみたい」
「にゃわっ!?で、でででででもでもでも、セルシス様は人族で!旅人で!!」
「そんなの関係ないだろ。綺麗なものは綺麗だ」
「嘘です!!」
「嘘じゃない。アンカネブラに誓っても良い」
「・・・・・・本当に、本気なんですか」
「本気だ。本当に綺麗だ。ダンブランに来てよかった」
うん、来てよかった。心からそう思う。
俺は国内旅行派だけど、海外旅行に行く人たちの気持ちってこういうものなのかもしれないな。
「・・・なら、今日、良い、ですよ?」
ん?この石像持ってって良いの?いや、それはさすがにダメだろ。
気が付けば俺にドミがピタっとくっついている。
しまった、無意識にドミの頭を撫でていたようだ。
「そ・・・その、初めてなので、やさ・・・優しく・・・」
なんだ。なんで真っ赤な顔で目がうるんでいるんだ。俺がヴェラーラの石像に見とれている間に何があったんだ?
「にゃにゃにゃ・・・は、恥ずかしいですよぅ!!」
上目遣いのドミが可愛く離れていく。
・・・・・・・・・・・・あぁ、ステータス、まだ見てなかったぞっと。




