光の魔弾よ、敵を撃て
魔宮の森と呼ばれる森林がダンブランの西に存在する。
入り口から中央部にかけては人の手が十分に入って比較的安全であり、下位の冒険者たちが採取や狩りに励む事も多い。
だが森の最奥には古の魔神を封じたとされる魔宮が存在し、そこから稀に生み出される高位の魔物たちはダンブランの冒険者に死を与える脅威ともなっていた。
ゴブリンがいると言われているのは森の入り口から少し入ったあたりで、薬草などを採取に来ていた下級冒険者が最初に発見したそうだ。数は10匹前後という話しだったが、フェイが言うにはもっと多くいるだろうとのこと。森の入り口あたりまで勢力を広げているなら、奥には大きな群れ・・・それこそ村のようなものがあってもおかしくない。
ゴブリン討伐の依頼はD級で十分に対応できる、しかし今回は森の入り口で見かけられたとの情報から安全を取ってC級依頼になっていた。
ダーナ、ゴンベック、フェイの三人は全員C級の冒険者だから、ある程度は高位の魔物と遭遇することを想定しているのかもしれない。
ちなみに冒険者ランクは最高位のS級を筆頭に、
A級(エリート冒険者)
B級(ベテラン冒険者)
C級(中堅冒険者)
D級(冒険者)
E級(新人冒険者)
F級(新人見習い)
G級(登録者)
みたいな感じで階級分けされている。
昇格には依頼の達成率とギルド側での審査があり、降格もそれなりにあるらしい。
わかりやすく声優で当てはめると
S級(伝説)羽佐間道夫、野沢雅子
A級(大ベテラン)井上和彦、田中真弓
B級(ベテラン)高木渉、林原めぐみ
C級(中堅)小野大輔、生天目仁美
D級 若手~中堅ランカー級(ランクギャラ)
E級 新人~若手ジュニア級(ジュニアギャラ)
F級 新人声優(ジュニアギャラでデビュー)
G級 養成所生(ガヤでデビュー)
みたいな事ですかね!!ステップランクとか考えると説明が難しくなるからあえて入れていないけれども。さかのぼって適用できるとか誰も得しないと思うんだけどなー。あれ。
冒険者ギルドのランク基準で一番良かったのは「仕事の成功率、仕事量と、本人のランクがそれなりに一致している」という部分。これは監査も含めて組織としてまともに機能しているってことだからね。同時に、有能な人間には高い依頼料で仕事をしてもらうのが当然だって感覚があるのも素晴らしい。
一方声優業界はこのあたり全然ダメ。ランクギャラ15000から賃上げするか否かが本人(ないし事務所)判断だからみんな横並びで値上げしない。先輩が値上げしないところに後輩が同じギャラで入ってくるから当然仕事が増えないで新規ランカーが詰む。
低い製作費で作らせてるわけだから末端の声優とアニメーターが損をするしかないんだけれど、正直ちょっとあんまりな制度だよなあとは思う。
有能な人間でも安く叩いてつかえって風潮なんだよね。
年間何本ランク仕事したかとか調査票でわかってるんだから、それをもとに日俳連が翌年の最低ギャラを強制的に決めたら良いのに。
昨年ランク仕事を100本やったから、次年度は最低でもランクギャラ25000からね。みたいな。んでその次の年に50本しかできませんでしたってなったらランクギャラ最低20000に、とか、10本でランクギャラ1000円ずつ上がる制度にしたら若干は公平感あるんじゃないですかね?
仕事できてる層の賃上げじゃなくて仕事できない層の賃下げを選んだステップランクと逆の発想だから、きっと受け入れられないんだろうなー。
ともあれ、今回俺はC級(小野・生天目)と同じ現場に来たF級(新人)ですからやる事は一つ。先輩の仕事の邪魔をしないって事だ。チャンスがあるなら取りに行く、取りに行ったら下がらない。でも先輩の邪魔はしない、ね。OKOK。
街道から離れた森に入っていくと、高い木々が日光を遮って少し暗く感じた。
採取や伐採でたびたび人が出入りしてる道は踏みならされてそれなりに歩きやすかったが、いざ戦闘となった時にやはり不安が残る。
ゴンベックは一番前を歩きながらときたま立ち止まり、耳を澄ませたり足跡をしげしげと眺め、そのたびに歩調を変えた。俺は立ち止まるたびに周りを見ては、ちょっとだけ役に立ちそうな野草などを手早く採取する。この辺りはアンカネブラに教えて貰ってよかった。ありがとうアンカネブラ。
しばらく歩いていると、俺の耳に妙な音が入る。はて。
気になって足を止めると、すぐにゴンベックも足を止めた。
「どうしたの?セルシス?」
ダーナの問いにゴンベックは無言で人差し指を立て、そのまま唇の前におく。静かに、の意味だ。
森の奥に目を向けるゴンベックの顔は真剣だった。俺には何があるのかわからなかったが、何かそっちに生き物がいる事は感じ取れた。ゴンベックならもっと色々とわかるのだろうか。
「いるな。少し多い」
矢を抜いて中腰になったゴンベックが静かに、しかし足早に進み始めた。
ダーナが槍をくるりと回してそれに続き、フェイに促されて俺も駆け出す。
その先にはボロボロの木切れやテントなんかをまばらに置いた集落のようなものがあった。うすい黄土色の肌をした何人ものゴブリン達が、乱杭歯を剥き出しにしてギギギギと甲高い声を出している。
錆びの浮いた短剣やこん棒で武装しているようだが、飛び道具の類は持ってなさそうだった。
「見えてるだけで15匹、ねぐらに隠れてる連中を足すと30匹ってとこか?銀貨20枚じゃ少なかったかもな」
「そうでもないでしょ。私たちなら対処できる数だし」
「俺が向こう側に回って弓で何匹か仕留める。混乱して好き勝手動き出したところで支持をだす奴がボスだ、それを叩いてくれ」
「あいよ。ゴンベックが陽動と牽制、ダーナが突撃、俺とセルシスが援護。良いな?」
俺は無言で頷いた。実戦は怖いが、フェイがわざわざ口に出して段取りを確認してくれたことくらいはわかる。それくらいには冷静だ。
力む身体をコントロールして緩ませる。緊張は悪い物じゃないが、身体が固まるのはダメだ。
意識してゆっくりと腹式呼吸しながら肩と背中を伸ばす。
まだこわばっているから、わざと肩に力を入れてやる。力めば緩む。息は吐けば吸える。役者として基礎訓練で何度もやったことだ。両足を揃えてぴょんぴょんと軽く飛ぶ。緊張して上がった横隔膜を下げてやる。
大丈夫。積み上げてきた身体訓練は俺を裏切らない。
「ギギギギギィィィ!」
ゴンベックの放った矢がゴブリンの身体を貫いた。続けて2射、3射と狙いは外れることなくゴブリン達の命を奪っていく。
逃げ出すもの、石を投げるもの、むやみに武器を振り回して奇声を上げるもの。
茂みに隠れて俺たち3人は息をひそめて待つ。
さらに何匹かのゴブリンが射殺されたあたりで、テントの中からひときわ大きなゴブリンが現れた。
ホブゴブリンだ。
「ギゴガガァ!!!!!!!!!」
雄叫び一つでこちら側の空気まで震えたような気がする。
わらわらとねぐらから出てきた十体のゴブリン達がゴンベックのいた茂みに殺到した。
「行くわよ!」
ダーナの声で俺たちが飛び出す。
本命のホブゴブリンと、その周囲に残った数匹のゴブリンを倒せば勝ちだ。
一瞬だけゴンベックの心配をしたが、それは余計なお世話だろうと考えを改める。
プロが自分の仕事をしたのだから俺たちも仕事に徹するべきだ。
「光の魔弾よ、敵を撃て」
俺の放った光弾がゴブリンの身体を跳ね飛ばす。魔弾は初歩の攻撃魔法で威力は低い、それでもゴブリン相手なら十分に効果的な魔法だ。
「漆黒の渦、貫きの魔弾、地を這い跳ねて敵を撃て」
フェイは光弾をアレンジした闇色の魔弾を放って援護する。こちらは威力が高くゴブリンの身体をしっかと抉っていた。俺たちの魔法で開いた道を激流のような速さでダーナが突っ走る。
圧倒的な戦力差で俺たちはゴブリンの群れを叩きつぶした。
ゴンベックは巧妙に敵を引き付けては場所を変えて矢を放ち、フェイの魔弾はゴンベック以上の速さでゴブリンを葬る。俺の魔弾は威力こそフェイに及ばないが、一度の魔法で数匹のゴブリンに光弾を打ち込んでいたから援護としては十分以上だったろう。加護のおかげで魔力が相当上がっていたからできた戦法でもある。
ダーナがホブゴブリンを倒すまでの数分で、俺たちはゴブリンすべてを討伐することに成功していた。
鎧袖一触とはこのことか!って感じだ。
声優ランクは誰を書いても怒られるような気がしました(苦笑)
S級やA級に関しては多分一般のアニメファンの方も同じ感覚でご理解頂けると思うんですが、若手~中堅、中堅~ベテランって判断が難しい。
今回はデビュー15年前後からを中堅としました。
10年だと若手!!!異論は認めます。




