死なれるのは嫌だ
逃げるように店を出た俺は宿に帰って酒飲んで寝た。
翌日も宿から一歩も出ずに朝から酒飲んで飯食って寝た。
さらに翌日。
「・・・ステータス」
逃避も二日で飽きたので現実と向き合う。加護の数は15個あった。
一通り見てみたが大半は★1で、★が多いほど加護の効果が強いようだった。
というかアンカネブラの加護やばいだろ。ダーナの身体強化をすぐに真似できた理由はこれっぽい。
色々と検証してみたが、どうやら荒事素人の俺でもそれなりに戦えるくらいの加護は貰っている様子。
そろそろ路銀も無くなってきているし冒険者としてちょっと働いてみるのも良いかもしれない。
ギルドの一階は冒険者でごったがえしていた。
どうも依頼が貼りだされる時間と重なったようで、誰も彼もが我先にと依頼を奪い合っている。
もうすこし遅い時間に来た方が良かったかもしれないなあ。でも良い依頼が無くなってたら嫌だし・・・うーん、何時ごろくるべきか、慣れるまでちょっとわからんな。
「よぅ!朝から依頼探しか?」
声をかけられた方を見ると、肩を補強した皮鎧に身を包んだフェイと、同じように皮鎧を着て槍を持ったダーナがいた。
「そのつもりだったんだけどな、正直こんなに人がいるとは思わなかった」
「いまだけよ。昼には落ち着くわ。それと、その、この間はごめんなさい」
そう言って頭を下げるダーナ。
「良いよ。ほんとに気にしないでくれ、良い経験になったと思ってる。ダーナに感謝してるくらいだ」
「本当に怒って無い?」
「な?言ったろ、セルシスは怒りゃしねえってさ」
フェイ、お前には怒るかもしれないけどな!
「なあセルシス、どんな依頼を受けるつもりなんだ?」
「あんまり考えてはいないけど、まあF級からかな」
「F級だと街中の何でも屋だぜ?E級は薬草探しとかが多い。ただ、どっちも金額が安いし割にあわねえぞ」
「そうね、剣だって使えるんだもの、D級以上の討伐依頼で良いんじゃない?その・・・ダブルスターなんだし」
ダーナがちょっと小声で言った。周りに気を使ってくれてるのだろう。
「これ、やっぱり周りに知られない方が良いんじゃ・・・」
「そんなことねえって、見せとけばバカが寄ってこないからな」
「・・・・・・確かにね」
自信満々に言うフェイと苦笑しながら頷くダーナ。うーん、なら見せたままで良いか。
「二人も依頼を受けるのか?今日はしっかり武器まで持ってるみたいだけど」
「ええ、私たちはC級依頼をいくつか受けたの」
「今からゴブリンの群れを討伐しに行くところなんだぜ」
依頼は複数同時に受注しても良く、期限内に成功報告できれば細かいことはあまり聞かれないらしい。だから薬草なんかは事前に集めておいて、依頼を受注して即納品、みたいな事もよく行われているんだって。
「ゴブリンの討伐依頼か。結構な数がいたりするんじゃないか?」
「そうね、でも所詮ゴブリンだから平気よ。私たちの敵じゃないわ」
ゴブリンなどの魔物は悪いマナが集まって生まれる生き物であり、倒すと良いマナに還元される。ギルドカードはそのマナの一部を吸収して討伐数を自動で記録しておいてくれるそうな。便利だなギルドカード!
「なあ、良かったらお前も一緒にくるか?」
「ゴブリン退治に!?俺が!?」
「そんなに驚くことないだろ、銀貨20枚の依頼だったから4人までは揃えても良いかってダーナと話してたんだよ」
「そうね、セルシスだったら私も文句は無いわよ」
異世界初仕事がゴブリン退治か。いや、まあファンタジー世界としては普通・・・なのか?
銀貨20枚を4人で分けると1人あたり銀貨5枚。悪くない。
コンビニ店員のバイト気分、ってわけにはいかないだろうけども。
「正直自信ないぞ、二人の足を引っ張る結果になってもおかしくない。なにしろこっちはこないだ登録したド新人だからな!ダブルスターだかなんだか知らないけど、素人と組むのは不安じゃないか?」
「連携組んで戦うような内容だったら素人はゴメンだ。でもまあダーナ相手にやれるんだからゴブリン相手なら大丈夫だろ。それに森に入るからな、道すがら薬草でも採取していけばE級以下の依頼も並行してこなせる。損はないぜ」
「セルシスの考え方がもう素人じゃない気がするけど・・・もともと私とフェイだけでもこなせる依頼だから大丈夫よ。来てくれると助かるわ」
ここまで言われたら断りたくないね。うん。
「ありがとう、ならご一緒させてくれ。先に言っておくが俺の武器は短剣が2本。魔法は初歩的なものなら使える。素人なりに考えて行動するつもりだが間違える事も多いだろうから、その時は遠慮なく注意してくれると助かる。指示にも可能な限り従わせてもらうよ」
その後、弓使いのゴンベックを誘って俺たちは四人のチームを組んだ。
ゴンベックはヴィゴ・モーテンセンみたいな風格と品のあるオッサンだ。ああ、ゴッド・アーミーでルシファーやってたヴィゴとかまた見たいなあ。
フェイ、ダーナ、俺とゴンベックの四人は受付に並び、依頼を受ける前のギルドカード情報を登録しておく。これで依頼を達成したあとにギルドカードを確認すれば、誰が何をどれくらい討伐してきたかがわかるわけだ。
俺以外の三人は互いに何度か組んだ事があるらしいのだが、みんな固定パーティを組まないフリーの冒険者ということだった。
不思議な事に冒険者ギルドにはパーティを組むのと同じくらい、一人で活動するフリーの冒険者がいるらしい。
「なんでパーティを組まないんだ?組んだ方が依頼を受けやすいだろ」
「パーティなんて組んだら自由に依頼受けられないじゃない」
「報酬だって単純な頭割りにできないだろ?経費払って運営まで考えるなんて俺は嫌だね」
なるほど。それはそうかもしれない。
「以前は組んでいたが、女が俺をかばって死んだ。俺がかばって死ぬのは良いが、死なれるのは嫌だ」
ゴンベックが言った。
なるほど、それは、同感だ。




