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弱きを助け強きを挫く

「あのあのあの、ゆうべは、ありがとうございましたっ!」

「怪我はもう大丈夫?」

「はいっ!」

「ホントに?ガツンって結構鈍い音で殴られてたけど・・・」

「全然大丈夫です!獣人族は頑丈なんです!!」


ムフーと鼻息荒くドヤ顔するドミ。豊田萌絵みたいな声ですな。


「店の中で暴れちゃって申し訳なかったね、怖かったろ」

「そんな!かっこよかったです!!」

「かっこよかったか?」


我ながら懐疑的な声が出た。

どうにもかっこわるい立ち回りだと思うんだがなぁ。


「とってもとってもとってもかっこよかったです!」


凄いキラキラした目で断言される。なんだこの罪悪感。

いや、可愛いんだよ?猫耳がピクピクしてるとことかマジ可愛い。

でもなー。ロリ属性が無い俺からするとなんだか小さい子を騙してるような気がしちゃうんだよなー。


「そう渋い顔するな。小さな英雄さん」

「その呼び方やめて貰えます?」


モテ中年と呼ぶぞコラ。ピンクエプロンが似合ってるのがまたなぁ。

ピンクが好きな野沢那智さんを思い出しちゃったじゃないか。もう。


「なにかおかしいか?英雄だろ。弱きを助け強きを挫く」

「英雄にはほど遠いですよ。可愛い子を助けるために弱い奴が無茶しただけです」

「にゃ!?かかかかかかわいい!?」


おお、良い反応。

この世界は人族至上主義みたいな側面が結構あるから獣人に可愛いと言う人間は珍しいんだろうな。

社会的に別に奴隷扱いされてるわけじゃないけど、獣人ってだけでそれなりに肩身が狭い思いをする事が多いはずだ。

ま、日本人である俺の感覚的には可愛ければなんでも良いやん?である。


「弱い、か。実際どうなんだ、セルシスのステータスは。それなりに高いんだろ?」


む?ステータス?


「・・・なんです?それ」

「知らないのか?ダブルスターなのに」

「だぶるすたぁ!?」


やっぱギルドカードは隠した方が良いかも、ドミの俺を見るキラキラが増したぞぅ。

もう俺の胸元に飛び込む勢いでギルドカードをガン見である。


「カードの使い方くらい聞かされただろ?」

「あー、ギルド長がなんか言ってた気がしますけど、ちょっと考え事してましたんで記憶にないです」

「・・・大物だな」


苦笑された。いやいや、単に物を知らないだけですから。


「ならいま見てみると良い。ギルドカードに触りながらステータスと言ってみろ」

「こうですか・・・ドミ、ちょっと近いから離れてくれる?」

「にゅにゃ!?ご、ごめんなさい~」

「ステータス」


フォンッと機械的な擬音を立てながらステータス画面がポップアップする。

なんというか、ホログラフィー?みたいな感じで透けている四角いウィンドウだ。


「これって皆から見えてるんですか?」

「ウィンドウが出てるのはわかるが書かれてる内容は本人にしか見えないな」


じゃあなんでドミは俺のステータスを見ようと顔を近づけているんだ。可愛いから許すけども。

ステータスウィンドウはシンプルだった。

レベルとかスキルとかゴチャゴチャ書いてあったりはせず名前の下に能力値が書かれている・・・が、見る限り特に高いとか低いとか言う変な値じゃない。

目で確認していくと最後の部分に加護、と書かれた欄があった。


「そんなに高くないですけどねぇ・・・」

「そうか?確かに能力値は目安みたいなもんだが」

「目安なんですか?」

「どれだけ足が速くても酔いが回れば足元が怪しくなる。頭が良い奴だって寝なきゃ簡単な計算を間違えたりするだろ。数値はあくまで最大値、持ってる能力を最大に発揮した場合の値だ」

「なるほど、能力値の差が戦力の絶対的な差ではないって事ですか」

「そういうことだ。まして戦闘職なら身体強化で随分と違ってくるだろ」

「それは確かにそうかも・・・この、最後の所にある加護ってなんですかね?」

「はは、セルシスはやっぱり加護持ちか」

「加護持ち!?凄いですっっ!!」


ニヤリと笑うピンクエプロン。ぐわっと顔が近づくドミ。近い近い近い。

そういえば貰った知識の中にあったっけ、神々に愛されたものには加護があるとかなんとか。物語の英雄なんか、たいてい加護持ちで書かれてるみたいだけど実際どーなんかね。


「ギルドカードを貰えばわかるが、登録者の中には稀に神々の加護を得ている奴がいるんだ。ウィンドウの一番下に記述がある」

「それで強さに違いが出ると?」

「加護持ちだと全然違います!!」

「一概にとは言えないが、能力値の差は足し算みたいなもんだ。加護の差は掛け算、わかるか?」


おお、そういうことならイメージはできる。


「ならたくさん加護があると良いってことですね」

「そう簡単に言うが複数の加護を持ってる奴なんてそうそういるもんじゃないぞ。ダンブランのギルド長をやってるレスターだって現役時代は相当な腕だったが、それでも加護は3つとか4つとか、そんなもんだ」


懐かしそうな、嬉しそうな顔でモテ中年の顔がほころぶ。

なんだろう?そっち系なの?レスターラブなの??

あ、だめだめ、マズイ方向に考えるのはやめよう・・・。


「あー、となると複数の加護って、結構凄いんですねぇ」

「そうだな。加護を得て生まれてきた物は神々に愛されて生を受けたとも言われる、お前さんが加護持ちなら大事にした方が良い」

「後から増えたりしないんですか?」

「増える事もあれば減る事もある。神々は常に我々の生活を見守られているからな。行いに即して新たに加護を授けられる事もあれば、残念ながら逆に失ってしまう事もある」


気のせいか、モテ中年の顔が暗くなった。


「獣人の神様は戦いの中で勇士に加護を授けてくださいます!!きっとセルシス様にも加護をくださいますよ!!」

「ありがとう、ドミ。えーっと、これって加護のところを選択すれば詳細が見られるんですかね」

「ウィンドウを押してみると良い、複数あるなら詳細を見られるはずだ」


アンカネブラの加護くらいはついてると良いなぁ。旅人だし。

ドミの顔に触れちゃいそうだったから再度離れて貰って、ウィンドウをぐにっと押してみる。


ブォン、と音を立てて一回り小さいウィンドウがポップアップする。

【加護(15)の詳細を確認しますか?Y/N】

なにも考えずイエスを選択。


商いと旅人の神アンカネブラの加護★★★★★

・旅の中で学んだ技術を即座に自分の物とすることができる。芸達者は餓える事が無い。

獣神ソンドバルンドルグララオの加護★★★★

・感覚強化+40%。その知覚は思考を凌駕する。

太陽の神ドドラガリの加護★★★

・全能力値+15%。光はその身にあまねく届く。

月の女神ピサンティエの加護★★

・看破の魔眼。月光は隠されしものをあばく。

酒と薬の神バーナベーダの加護★★

・毒への耐性+20%。酒は三献に限る。

麦の神アラヴィスムの加護・・・・・・・・・



俺は無言でウィンドウを閉じた。

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