まずはランクを上げること、ってな?
ゴブリンの武器や防具はボロボロで持って帰ってもお金にならないらしい。
雨が漏るようなテントの中まで見て回ったがお宝発見とはいかず、素材も剥げないし、まったく実入りの無い魔物と言える。
「・・・少し青いな」
まとめて焼く為にゴブリンの死体を積み上げているとゴンベックがぼそりと言った。
良くないマナが増えると肌の色が青くなっていくんだそうな。
死体を積む行為に若干抵抗はあったが、まあ腐敗して病気のもとになったりだとか悪いマナがさらに乗っかってアンデッドになったりするよりずっと良いだろうと我慢した。
「さて、そんじゃ、俺とダーナはもうちょっと奥まで散歩に行ってきましょうかねー」
フェイの言葉に俺が首をひねる。
「討伐ならもう終わったんじゃないのか?」
「・・・何か知ってるのか、フェイ」
「あー、いやな、オヤジに頼まれちまってさ。ちょいとした調査だよ、ちょーさ」
どうも最近悪いマナの影響を受けた魔物が増えているらしい。
最奥部の魔宮が活性化している、とまではいかなくとも、マナ溜まりかそれに近い何かがあるんじゃないかというギルド長の推測から、フェイとダーナは調査依頼を受けたんだそうな。
「それならみんなで行った方が良いんじゃないか?」
「同感だ、調査も4人でするべきだろう」
「ならゴンベックは一緒に来てくれ。セルシスは・・・ほれ」
そう言ってフェイが背負い袋から羊皮紙の束を出してきた。
「野草の採取依頼を片っ端から貰ってきたから、この辺で採取しまくっちまえよ」
「・・・・・・なんで俺だけ?」
「セルシスはまだF級でしょ?下級の昇格は数をこなさないとダメだから取れる時にたくさん取った方が効率が良いわよ」
「面倒かもしんねえけど新人の基本からやってみろよ。まずはランクを上げること、ってな?」
なるほど、これは先輩冒険者である2人が俺に気を使ってくれているんだろう。
それに一度にたくさん採取できるのなら稼ぎも期待できるかもしれない。
森での採取で生計が立つくらい稼げるなら危険な討伐依頼をする必要もないし、旅でどこに行っても食い扶持くらいはなんとかなるだろう。そう考えるとありがたい話しだ。
「だがセルシス一人残して行くのは危険で・・・もないか」
「そこは危険だと思っててくれ。俺は荒事は得意じゃないんだ」
「さっき見た限りでは、ホブゴブリン相手でも平気そうだったがな」
確かにホブゴブリン程度ならなんとかなる。
いや、切り札を使うならもっと格上でもなんとかなる。けど、荒事は無いにこしたことはない。
「心配しなくても少し先まで見に行くだけだから大丈夫よ、すぐ戻るわ。セルシスはこの辺りで採取して待ってて頂戴」
俺は頷いた。断る理由も特にない。
ダーナの火魔法でゴブリンを焼くとキラキラとしたマナが煙のように浮き上がり大気に溶けて消えていく。
浄化されたマナはグランディスタのマナと混ざり合い、再び形を得て生まれ変わるのだろう。
さて、ではここから採取の時間だが・・・ちょっと試してみたいことがあるので3人を見送ってから俺はステータスを開いた。
月の女神ピサンティエの加護★★
・看破の魔眼。月光は隠されしものをあばく。
看破の魔眼、実際にどうやったら使えて、どんな効果があるのか。
頭の中で看破の魔眼、と念じる。これだけでは視界に変化は無かった、まあ特に隠れたりしている誰かがいるわけでもないから当然か。
さらに念じる。対象は・・・・・・そうだな、薬草にしてみるか。
すると視界の一部に青白い光が浮かんだ。草花の中にたくさんの青白い光が灯る。
よしよし、たくさんの雑草の中から薬草を見破った、というところか。
なるべく周りの野草を踏み荒らさないように青白く発光する薬草を抜き、丁寧に土を払ってズタ袋に入れていく。具体的な名前や効果はアンカネブラが教えてくれたから見ればわかるが、いちいち判断していく時間が惜しい。
ざっと薬草を取り終えたら次は対象を広げて薬の元に変えてみる。さらに多くの草花が発光した。
面白いな。フェイの羊皮紙とにらめっこする事もなく黙々と採取する。
結構な時間採取に使って視界内をごっそり取りつくしたので、次はちょっと考えて、換金できるもの、を看破してみた。
視界内の花と木の実がちょっとだけ反応して青白く光る。なんだかわからないがとりあえず採取だ。
そのままぐるり、と周りを見て、さらに実験する。
対象は変わらず換金できるもの。それを、この木々に隠された森の中から看破する。
念じたとたんに視界が歪んだ。空から俯瞰して森を見る。葉や幹を透過して大地を見る。無数の生き物が青白く発光し数えられないほどの植物が発光し、どこに何があるかが脳内に書き込まれていく。
膨大な情報量で脳が焼けるように痛・・・痛い痛い!!
「無し無し無し!!」
声を出して膝をついた。距離とかもっと具体的に制限をかけないとダメだって事がよくわかった。
魔眼と言いながら実際には3次元レーダーみたいなもんだった。ハイエンドのPCならちゃんと処理できるんだろうけど、俺の脳なんてPC98どころか88程度ですよ?もちろんOSはROM-BASICです。無理ですわ。
森全体をサーチしただけならともかく結構な数の換金できる物を認識しちゃったんだろう。目の奥がジンジンする。あ、涙出てら。
魔眼がとても有効だという事はよくわかったので月の女神ピサンティエには感謝しておく。でもなんで★1つじゃなくて★2つなんだろうな。神殿まで行ったからか?でもあそこ正確には神殿近くの詰所だしなー。
ちょっと使った感じから判断すると、反応が多すぎた場合は身体への負担が大きくなるみたいだな、気を付けよう。となると反応が少ない物なら楽に使えるってことだから・・・んー。
調整しながら使えるかな?と、思いつくまま看破の魔眼を使ってみた。
森の中で、対象は・・・そうだな、俺が切り札を使わないと勝てない相手、でどうだろう。
今度はいきなり全域を見るんじゃなく、自分を中心に同心円状にレーダーを広げていくイメージだ。
本当になんとなくのつもりだった。この森にはそれほど強い魔物がいないと聞いていたし、いたとしても数は多くないはずだから、ちょっと自分の身の回りの安全確認、くらいのつもりで。
しばらく何も反応しない時間が過ぎる。
ここよりずっと森の奥までレーダーを伸ばしたところでようやく2つの反応を感じた。
次の瞬間、ズタ袋をかついだまま俺は走り出していた。
青銅色の肌をした巨躯の魔物にフェイが吹き飛ばされる姿が、看破の魔眼で一瞬だけ見えた。




