早速だがこれを持ちたまえ
書いてて一回消えた・・・!!おのれブラウザ、貴様敵だな?
ダーナの回復魔法で意識はすぐに取り戻した。
なんだか恐縮した様子で申し訳なさそうにする姿がとても可愛い。
こちらも謙遜しつつ褒めたら一瞬でダーナの顔が真っ赤になった。
やだなにこれ可愛い。可愛すぎる生き物。死ねる。
ドムッ、と鈍い音で俺の鳩尾に拳がめり込んだ。
デジャブ!?
意識を失う直前に喰らったような一撃が照れるダーナの手元から続けて射出されてくる。
やだなにこれ怖い。怖すぎる生き物。物理的に死ねる。
フェザー級のタイトルマッチみたいな勢いで打ちこまれる拳を紙一重でさばきながら会話を続ける。
やーだー、もー、みたいな女子高生ノリで会話してくる女性は40歳まで大丈夫な俺だが、女戦士、お前はダメだ!!
ペチペチとかポカポカじゃないからね!?
ギュンッ!とかビュオッ!!みたいな擬音でグーパンが突っ込んでくるとか、拳が凶悪すぎてどこにも可愛らしさを感じねぇよ!!
どうも恥ずかしさがスイッチになっているようで、照れ隠しに暴力を振るう機能が実装されている様子。
お嬢さん!!会話機能が壊れてますよ!!!
というかオミットしたバージョンはねえのか!?リコール対象機種だろこんなの。タスケテー。
2発目の拳が肋骨の下から鋭角に突き刺さる。思わず喘ぐ俺。
回避しようにも魔力切れでクラクラしていて動きが鈍い鈍い。それなりに見えてるんだけど初動が追いつかないから無理ですわ。
フラフラの俺を庇うようにフェイが間に入ってきた。遅いぞダチ公。なんだか不満そうだったがフェイの説得で渋々ダーナ嬢が訓練場を出ていく。うん、謝罪したりないって雰囲気だったけど、やってる事から見たら殴り足りないみたいに見えますよ!!このポンコツ赤毛!!可愛いなぁ。
ダーナが去った後の訓練場には3人が残された。俺とフェイと、あとなんか渋いオッサンだ。
大声で模擬戦を止めたおっさん。ショーン・コネリーみたい。雰囲気は芝居の師匠に似ていた。
「あらましはフェイから聞いたが、セルシス君の希望は冒険者ギルドへの登録、で良いのかな?」
「はい。よくわからないうちに模擬戦しちゃいました、すみません」
「ああ、若いうちはそれくらいで構わないよ。では、早速だがこれを持ちたまえ」
手渡されたのは黒いカード。まんまクレカのブラックカードみたいでちょっとテンションが上がった。
いやほらだってさ、声優業なんて個人事業主やってるとカード作るのも大変だったりするんだぜ?
声優志望者はまず両親がローン組んでるか確認するべき。家とか車とかローン組めない生活とかマジ大変なんだからな!!社会にでるまでわからんだろうけども。けどもー。
持ってみると予想外に重い。ひゃっほう、アメックスセンチュリオン気分だぜ。
「そのカードに自分の魔力を通してみなさい」
「こうですか?」
ほんの少しの魔力を通すとカードが淡く輝いて軽くなった。
見ればカードの表に、セルシス、Gランク、と浮かび上がっている。
「冒険者ギルドでは必ずGランクからの登録になる。30日以内に依頼を2つ成功させることでFランクに昇格し、以降は達成した依頼の数や質をもとに、しかるべき審査に合格することで昇格していく。実質的に冒険者ギルド構成員というのはFランク以上のカード保有者と考えてくれて間違いない。これは内勤の事務員たちも同様だ。Gランクのまま31日目を迎えた場合は残念ながら登録取り消しとなり、以降半年の間はあらゆるギルドでの新規登録ができない。そのカードは君の身分証明書になるため無くさないようにしっかり管理すること。再発行には銀貨10枚かかり、同時にランクが一つ落ちるから注意しなさい」
なるほど、まずは依頼を2つ達成しないと・・・ん?
「事故を防ぐために、ギルド長、あるいは副ギルド長の許可が無い限り、受けられる依頼は自分のランクから1つ上までとなっている。ギルド一階の壁は見ただろう?貼りだした依頼は各ランクに合わせてある程度切り分けられているので、受注する際は剥がして窓口まで・・・・・・・・・」
そのままギルド内での注意事項とか、カードの使い方とかギルド員の義務とか権利とかみたいなものをつらつら喋っているが、正直右から左にスルーしてしまう。
「ちょっといいですか?」
「なにかな?」
「Fランク以上の冒険者で無いとギルド構成員とみなされないんですよね?事情がありまして、なるべく早くGランクからFランクになっておきたいんですが」
「ああ、そのことか。話はフェイから聞いているから安心しなさい」
そういうと手を出してきたので俺はギルドカードを渡す。
「指名依頼、G級冒険者セルシスはC級冒険者ダーナと模擬戦を行うこと。依頼の達成を確認。指名依頼、G級冒険者セルシスはC級冒険者フェイと治安維持活動を行うこと。依頼の達成を確認。以上2点の依頼達成を持って、G級冒険者セルシスの昇格を認める」
淡く輝くギルドカード。再度手渡されたそれを見るとGランクと書かれていた部分がFランクに変わっていた。さらにその右下に、小さく刻まれた星型のマークが2つ。
「この星は?というか、それよりも先に・・・お名前を聞いてもよろしいですか?」
よく考えなくてもショーン・コネリーみたいなオッサンが普通の人なはず無いわな。
「ギルド長のレスター・グランドゥエルだ。君の戦闘能力を評価して星を2つ付けておいた。規定では1つ上のEランクまでしか依頼を受けられないが、3つ上のCランクまで自由に受注してくれて構わない」
ギルドカードを受け取るとそのまま握手された。
レスターが破顔する。
「冒険者ギルドへようこそ、新人君」




