第九話 忙しくなりそうで大変だった
ジオだ。
今シランとの念話が終わったところなんだが、もう既に授業を受ける体力なんぞ1ミクロンたりとも残っていない。
もう無理っす。
俺はそんなにタフじゃない。
シラン黒い………、アイツ黒過ぎる………。
アイツはヒューマンじゃないと思う。腹黒ドSという名の新しい種族だ。
もしくは地獄生まれのヒューマンなんだ、そうに違いない。
ダウンOウンの浜Oゃんもビックリだぜ………。
さすがに今度ばかりは心から豚に同情するよ。自業自得とはいえな。
哀れだ。せいぜい上手く、そして滑稽に踊ってくれ、豚君。
同情を禁じえない………。
そしてアイツは俺の命を何だと思ってやがるのか………。
一応俺あいつの主っていうか、雇用者っていうか、そんな感じの存在だよな!
容赦がないにも程があるわ!もっと大事に扱えや!
まぁいまさら愚痴を言ってもしょうがない。
理解しちゃったんだから。
さて、となると早急に強くなる必要があるな。
正直あんまり猶予がない。
微妙にギロチンの刃が俺の頭上に見える気がする………。
コワイコワイ、刃物コワイ。
さて強くなる為に俺がすべき事は2つ。
まず転職、いい加減決めないとな。
ウィザードは決まりとして、ウォーリアかレンジャーか。
ロマンかリアルか、だな。
その後のレベル上げは………アレをやるか。
予定よりは随分前倒しにはなるが、もう準備は整ってるし。
もうちょっと入念に実験をしてからにしたかったけどな。
もしミスったら確実に死ぬから………。
やだな~死ぬの。生き返るけどさ~。
ちょうど半月後に、学院は1ヶ月間の長期休暇に入る。
それを使って戦士職、魔法職の転職。
そして超高速レベル上げだ。
ついでにドロップアイテムでぼろ儲けかな。
本当は今度の長期休暇は、アリアたちとゆっくり遊んでやるつもりだったんだが………、仕方ないな。
4人とも泣くだろうな………、埋め合わせの方法考えないとな………。
テト? あぁ今頃じぃにしごかれながら、執事の勉強とかで大忙しだろうから、あいつに遊んでる暇なんかないよ。
さて………、部屋に行って寝よう………。精神的に限界………。
シランの野郎………オボエテヤガレ!
復学初日からサボリでいいのかって?
仕方ないじゃん………、もぅ無理………。
◇◆◇◆◇◆◇◆
あの襲撃事件の後も、俺は今までどおりのぐうたら学生生活を続けた。
あのシランとの念話の翌日、虚勢だろうなやたらと胸をいからせて歩く豚と通りすがった時に、ニヤ~と笑ってやったら顔を真っ青にして震えながら、回れ右してどっかに走り去りやがった。
ありゃ、もうちょい追い込んだら木に登っただろうな。
豚も追い詰めりゃ木に登る~ってか?
その後豚は、俺の前ではカチコチに固まるようになり、俺のいないところでは周りに当り散らすようになったらしい。
当り散らされる周りのみんなごめんな。ちゃんと卒業までには何とかするから、もうちょっと我慢してくれ。
………豚、まぁ今は生かしといてやるから、せいぜい今の間に人生楽しんでおくんだな。
あとはクリス嬢は相変わらずプリプリ怒ってるし、ヘルガー少年も変わらず俺の事を観察するように見てくる。
まぁ変わらないな。
あとアニーには、あの後ちゃんと謝った。心配かけてゴメンネって。
「とんでもありません!」と顔を伏せて、真っ赤になったアニーは新しい妹が出来たみたいでかわいかったな。
おとなしくて、真面目で、かわいらしくて。女の子らしい女の子っていう感じだな。
うちの4人は………、ほらいろいろと過激なとこがあるから。
まぁそこがかわいいとこでもあるんだけどね。
そんなこんなで入学から約5ヶ月、授業はだんだんと実践的にはなってきた。
とはいえまだ魔力の感じ方、コントロールの仕方といった初歩の初歩であるために、俺には暇で仕方ない。
正直俺、言葉が話せるようになったときには、既に《ファイアーボール》使えたと思うし。
さすがに試さなかったけどね。
そしてアニーの『アルケミストになりたいんです』発言を受けて、俺は彼女の『魔改造』計画を発動した。
とりあえずまずポーション作りからだ。
今の間にスキルではなく、自分の手でもポーションが作成できるようにしておく。
どうやらスキルでポーションを作るだけの奴らに比べ、きちんと自力でポーションを調合できる人間の作るポーションはいいものになるみたいである。
まぁこれができるようになれば、まずMPが無くなるまでポーションをスキルで作成、その後MPの自然回復を待ちながら普通にポーションを調合、回復したらまたスキル発動、という無限ローテーションが組めるようになる。
上手にポーションが作れればそれだけで食いっぱぐれる事がないのは、俺のこれまでの収入が証明しているから、まずアニーにはこれを覚えてもらっている。
そんなわけで毎日学生棟にある調合室でマンツーマンで教えているんだが、何と言うか、うん。
体が二次成長期に近づいてきたせいなのか、今まで以上に女の子が気になるようになってきた。
そこにロリの癖に、巨乳を超える巨乳であるアニーと毎日密室で二人きり………。
俺はロリじゃねえええええええええええええええ、と叫んでみてもいつまで耐えられるか、正直自信がない。
マリエルがいなかったら襲ってたかも、いや実際はやらんけどさ。
そのくらいやばいわ、あの乳は。
あと相変わらずアニーはいろんなものにぶつかりがちだ。
乳がでかすぎてバランスが悪いのかとも思ったが、さすがにそれは発想がエロ親父過ぎたので却下。
ん? いろんなものにぶつかりがちで、顔を良くしかめてる。
………これはもしかして。
「アニーちょっとこっち向いて。」
「はい?」
アニーは最近やっと俺に打ち解けてくれるようになってきた。
最初は、「若様お手ずから何か教えていただくなど滅相もない!」とか言っていたが、今では何とか慣れてくれた。
「これ何本に見える?」
指を数本立てる俺。眉根にしわを寄せてじ~~~とそれを見つめるアニー。
「え~~と、3本ですか?」
残念、2本だ。
なるほど、道理でいろんなものにぶつかりがちだと思った。
目が悪いんだこの子。
ん~となると眼鏡だが………。
ついでだし、休み中に手に入れてくるかな?
そしてそれから半月後、遠くに見える高山にうっすらと雪がかかり始める頃、学院は一ヶ月の長期休暇を迎えた。
それにしても一ヶ月か………。
少しはゆっくりしたいもんなんだがな。
◇◆◇◆◇◆◇◆
今、俺は実家からの迎えの馬車で、実家に帰っているところだ。
目の前には、アニーがいる。
彼女がこの休暇中は実家には帰らず学院で過ごす、と言ったので、じゃあうちにおいで、と誘ったわけだ。
まぁもちろん最初は固辞された(御領主様のお屋敷に、私ごときが!って感じで)が、農園に行けばいろんなポーションの材料も見ることができるし、学院で習った事をうちの双子に軽く教えたりして過ごせばいい、といって何とか納得させてつれてきたわけだ。
まぁ、馬車一つ乗せるのも大変ではあったが、なんとかここまでこぎつけたぜ。
アニーは本当に真面目でいい子なので、うちの領地の子でなくても俺は仲良くしていきたいと思っている。
あとはアルケミストになろうって人間は、こっちでも貴重なのできちんと囲い込まないとな。
青田買いって大事だと思う。
他の有望そうな学院生も取り込むか? ヒーラー(パーティにおける回復役)やバッファー(パーティにおける強化魔法役)の素晴らしさを話して、今から洗脳しようかな………。
正直一番分かりやすい転職先であるソーサラーは、わざわざ育てなくても数が多いからな。
閑話休題。
それにしても………。
「アニー、そんなに緊張しないで」
「ひゃい!」
アニーはうちに行くことが決まってからずっとこんな感じ。
どうも父上に挨拶するのに緊張しているらしい。
大丈夫なのにな~。
父上はちょっと親馬鹿過ぎるところと、訓練の時にトリガーハッピーならぬボマーハッピーなところを除けば、割と普通だから。
「アニー、あのね、俺はこの休暇中めちゃくちゃ忙しいんだ。
もちろん俺がいる時は可能な限り、一緒にいるようにするけど、あんまり長い時間は無理だと思うんだ。
だからさ、うちにいる女の子達を紹介するから、その子達と仲良く1ヶ月過ごしてくれると助かる。
ポーションの練習とか魔法の訓練とかは、自由にやってくれていいから。
父上も教えてくれると思うよ?」
「ひゃい!かしこまりました!」
父上の名前を出しても変わらないアニー。
ここまで緊張していると、イジメたくなるな。
「アニー、目をつぶって。」
「ひゃい!え?目ですか?」
「そそ、目つぶって。」
そうすると顔を赤らめながら、目をつぶるアニー。この馬車暑いのか?
まぁいいや、そう思いながら俺は目の前に座っているアニーのほっぺに手を伸ばすと………。
「ひゃう!?」
アニーのほっぺを両手でぎゅっとつぶした。
あっちょんぶりけ!な顔になるアニー。いや、おもろい。
「わかひゃま、ひどいでひゅ、おてをおひゃなしくだしゃい!」
アニーさんから苦情が出たので、ぷにぷにのほっぺから両手を離す。
「ひどいです!若様!どうして私の顔をぎゅってするんですか!」
「ん~アニーが緊張しすぎであんまりかわいらしかったからさ~、ちょっとイタズラしたくなっただけ」
まんまるほっぺをぷく~と膨らませてお怒りをあらわにするアニーさん。
やめて、ロリをそれ以上強調しないで!かわいいけど、腹が痛い!
あぁ、そんなことを言ってる間に家に着いたらしい。
アニーにとっては、のんびりとした休暇、俺にとっては忙しすぎる休暇がこれから始まる。
まぁ今日一日だけはゆっくりさせてもらうとしよう。
「アニー着いたよ、ようこそ、ラ・テオフラストゥス家へ。」
そうアニーを促して、ドアを開け外に出た俺を、最初に出迎えてくれたのは「ジオちゃんお帰り~~~。」という母上の声と抱擁。
母上ストップ!お客さんいるのに恥ずかしいから!
それを唖然としながら見つめるアニー。
こんなことでそこまで驚いてると、うちでは色々大変だよアニー?
こりゃアニーにとっても大変な休暇になるかも?
お読みいただきましてありがとうございます。
ご意見、ご感想、誤字脱字の指摘など幅広くお待ちしております。




