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ニューワールド  作者: 池宮樹
ある男の回想 エルトリン学院時代編
24/46

第九話 忙しくなりそうで大変だった

ジオだ。


今シランとの念話が終わったところなんだが、もう既に授業を受ける体力なんぞ1ミクロンたりとも残っていない。


もう無理っす。


俺はそんなにタフじゃない。


シラン黒い………、アイツ黒過ぎる………。


アイツはヒューマンじゃないと思う。腹黒ドSという名の新しい種族だ。


もしくは地獄生まれのヒューマンなんだ、そうに違いない。


ダウンOウンの浜Oゃんもビックリだぜ………。


さすがに今度ばかりは心から豚に同情するよ。自業自得とはいえな。


哀れだ。せいぜい上手く、そして滑稽に踊ってくれ、豚君。


同情を禁じえない………。



そしてアイツは俺の命を何だと思ってやがるのか………。


一応俺あいつの主っていうか、雇用者っていうか、そんな感じの存在だよな!


容赦がないにも程があるわ!もっと大事に扱えや!


まぁいまさら愚痴を言ってもしょうがない。


理解しちゃったんだから。



さて、となると早急に強くなる必要があるな。


正直あんまり猶予がない。


微妙にギロチンの刃が俺の頭上に見える気がする………。


コワイコワイ、刃物コワイ。



さて強くなる為に俺がすべき事は2つ。


まず転職、いい加減決めないとな。


ウィザードは決まりとして、ウォーリアかレンジャーか。


ロマンかリアルか、だな。


その後のレベル上げは………アレをやるか。


予定よりは随分前倒しにはなるが、もう準備は整ってるし。


もうちょっと入念に実験をしてからにしたかったけどな。


もしミスったら確実に死ぬから………。


やだな~死ぬの。生き返るけどさ~。



ちょうど半月後に、学院は1ヶ月間の長期休暇に入る。


それを使って戦士職、魔法職の転職。


そして超高速レベル上げだ。


ついでにドロップアイテムでぼろ儲けかな。



本当は今度の長期休暇は、アリアたちとゆっくり遊んでやるつもりだったんだが………、仕方ないな。


4人とも泣くだろうな………、埋め合わせの方法考えないとな………。



テト? あぁ今頃じぃにしごかれながら、執事の勉強とかで大忙しだろうから、あいつに遊んでる暇なんかないよ。



さて………、部屋に行って寝よう………。精神的に限界………。


シランの野郎………オボエテヤガレ!



復学初日からサボリでいいのかって?


仕方ないじゃん………、もぅ無理………。



◇◆◇◆◇◆◇◆



あの襲撃事件の後も、俺は今までどおりのぐうたら学生生活を続けた。


あのシランとの念話の翌日、虚勢だろうなやたらと胸をいからせて歩く豚と通りすがった時に、ニヤ~と笑ってやったら顔を真っ青にして震えながら、回れ右してどっかに走り去りやがった。


ありゃ、もうちょい追い込んだら木に登っただろうな。


豚も追い詰めりゃ木に登る~ってか?


その後豚は、俺の前ではカチコチに固まるようになり、俺のいないところでは周りに当り散らすようになったらしい。


当り散らされる周りのみんなごめんな。ちゃんと卒業までには何とかするから、もうちょっと我慢してくれ。



………豚、まぁ今は生かしといてやるから、せいぜい今の間に人生楽しんでおくんだな。



あとはクリス嬢は相変わらずプリプリ怒ってるし、ヘルガー少年も変わらず俺の事を観察するように見てくる。


まぁ変わらないな。


あとアニーには、あの後ちゃんと謝った。心配かけてゴメンネって。


「とんでもありません!」と顔を伏せて、真っ赤になったアニーは新しい妹が出来たみたいでかわいかったな。


おとなしくて、真面目で、かわいらしくて。女の子らしい女の子っていう感じだな。


うちの4人は………、ほらいろいろと過激なとこがあるから。


まぁそこがかわいいとこでもあるんだけどね。



そんなこんなで入学から約5ヶ月、授業はだんだんと実践的にはなってきた。


とはいえまだ魔力の感じ方、コントロールの仕方といった初歩の初歩であるために、俺には暇で仕方ない。


正直俺、言葉が話せるようになったときには、既に《ファイアーボール》使えたと思うし。


さすがに試さなかったけどね。



そしてアニーの『アルケミストになりたいんです』発言を受けて、俺は彼女の『魔改造』計画を発動した。


とりあえずまずポーション作りからだ。


今の間にスキルではなく、自分の手でもポーションが作成できるようにしておく。


どうやらスキルでポーションを作るだけの奴らに比べ、きちんと自力でポーションを調合できる人間の作るポーションはいいものになるみたいである。


まぁこれができるようになれば、まずMPが無くなるまでポーションをスキルで作成、その後MPの自然回復を待ちながら普通にポーションを調合、回復したらまたスキル発動、という無限ローテーションが組めるようになる。


上手にポーションが作れればそれだけで食いっぱぐれる事がないのは、俺のこれまでの収入が証明しているから、まずアニーにはこれを覚えてもらっている。


そんなわけで毎日学生棟にある調合室でマンツーマンで教えているんだが、何と言うか、うん。


体が二次成長期に近づいてきたせいなのか、今まで以上に女の子が気になるようになってきた。

そこにロリの癖に、巨乳を超える巨乳であるアニーと毎日密室で二人きり………。


俺はロリじゃねえええええええええええええええ、と叫んでみてもいつまで耐えられるか、正直自信がない。


マリエルがいなかったら襲ってたかも、いや実際はやらんけどさ。


そのくらいやばいわ、あの乳は。



あと相変わらずアニーはいろんなものにぶつかりがちだ。


乳がでかすぎてバランスが悪いのかとも思ったが、さすがにそれは発想がエロ親父過ぎたので却下。



ん? いろんなものにぶつかりがちで、顔を良くしかめてる。


………これはもしかして。


「アニーちょっとこっち向いて。」


「はい?」


アニーは最近やっと俺に打ち解けてくれるようになってきた。


最初は、「若様お手ずから何か教えていただくなど滅相もない!」とか言っていたが、今では何とか慣れてくれた。


「これ何本に見える?」


指を数本立てる俺。眉根にしわを寄せてじ~~~とそれを見つめるアニー。


「え~~と、3本ですか?」


残念、2本だ。


なるほど、道理でいろんなものにぶつかりがちだと思った。


目が悪いんだこの子。


ん~となると眼鏡だが………。


ついでだし、休み中に手に入れてくるかな?



そしてそれから半月後、遠くに見える高山にうっすらと雪がかかり始める頃、学院は一ヶ月の長期休暇を迎えた。


それにしても一ヶ月か………。


少しはゆっくりしたいもんなんだがな。



◇◆◇◆◇◆◇◆



今、俺は実家からの迎えの馬車で、実家に帰っているところだ。


目の前には、アニーがいる。


彼女がこの休暇中は実家には帰らず学院で過ごす、と言ったので、じゃあうちにおいで、と誘ったわけだ。


まぁもちろん最初は固辞された(御領主様のお屋敷に、私ごときが!って感じで)が、農園に行けばいろんなポーションの材料も見ることができるし、学院で習った事をうちの双子に軽く教えたりして過ごせばいい、といって何とか納得させてつれてきたわけだ。

まぁ、馬車一つ乗せるのも大変ではあったが、なんとかここまでこぎつけたぜ。


アニーは本当に真面目でいい子なので、うちの領地の子でなくても俺は仲良くしていきたいと思っている。

あとはアルケミストになろうって人間は、こっちでも貴重なのできちんと囲い込まないとな。


青田買いって大事だと思う。


他の有望そうな学院生も取り込むか? ヒーラー(パーティにおける回復役)やバッファー(パーティにおける強化魔法役)の素晴らしさを話して、今から洗脳しようかな………。


正直一番分かりやすい転職先であるソーサラーは、わざわざ育てなくても数が多いからな。


閑話休題。



それにしても………。


「アニー、そんなに緊張しないで」


「ひゃい!」


アニーはうちに行くことが決まってからずっとこんな感じ。


どうも父上に挨拶するのに緊張しているらしい。


大丈夫なのにな~。

父上はちょっと親馬鹿過ぎるところと、訓練の時にトリガーハッピーならぬボマーハッピーなところを除けば、割と普通だから。


「アニー、あのね、俺はこの休暇中めちゃくちゃ忙しいんだ。

もちろん俺がいる時は可能な限り、一緒にいるようにするけど、あんまり長い時間は無理だと思うんだ。

だからさ、うちにいる女の子達を紹介するから、その子達と仲良く1ヶ月過ごしてくれると助かる。

ポーションの練習とか魔法の訓練とかは、自由にやってくれていいから。


父上も教えてくれると思うよ?」


「ひゃい!かしこまりました!」


父上の名前を出しても変わらないアニー。


ここまで緊張していると、イジメたくなるな。


「アニー、目をつぶって。」


「ひゃい!え?目ですか?」


「そそ、目つぶって。」


そうすると顔を赤らめながら、目をつぶるアニー。この馬車暑いのか?


まぁいいや、そう思いながら俺は目の前に座っているアニーのほっぺに手を伸ばすと………。


「ひゃう!?」


アニーのほっぺを両手でぎゅっとつぶした。


あっちょんぶりけ!な顔になるアニー。いや、おもろい。


「わかひゃま、ひどいでひゅ、おてをおひゃなしくだしゃい!」


アニーさんから苦情が出たので、ぷにぷにのほっぺから両手を離す。


「ひどいです!若様!どうして私の顔をぎゅってするんですか!」


「ん~アニーが緊張しすぎであんまりかわいらしかったからさ~、ちょっとイタズラしたくなっただけ」


まんまるほっぺをぷく~と膨らませてお怒りをあらわにするアニーさん。


やめて、ロリをそれ以上強調しないで!かわいいけど、腹が痛い!


あぁ、そんなことを言ってる間に家に着いたらしい。


アニーにとっては、のんびりとした休暇、俺にとっては忙しすぎる休暇がこれから始まる。


まぁ今日一日だけはゆっくりさせてもらうとしよう。


「アニー着いたよ、ようこそ、ラ・テオフラストゥス家へ。」


そうアニーを促して、ドアを開け外に出た俺を、最初に出迎えてくれたのは「ジオちゃんお帰り~~~。」という母上の声と抱擁。



母上ストップ!お客さんいるのに恥ずかしいから!


それを唖然としながら見つめるアニー。


こんなことでそこまで驚いてると、うちでは色々大変だよアニー?


こりゃアニーにとっても大変な休暇になるかも?

お読みいただきましてありがとうございます。

ご意見、ご感想、誤字脱字の指摘など幅広くお待ちしております。

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