表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ニューワールド  作者: 池宮樹
ある男の回想 エルトリン学院時代編
22/46

第七話 夜道が暗くて大変だった

ゴリゴリゴリ………。マゼマゼマゼ………。


ゴリゴリ、マゼマゼ………。


水を入れてさらにゴリゴリ………、ツメツメ。


ガンガン………。


………。


……………。


……………………!


できた!


あとは乾かすだけ!




あ~今回はマッドなジオ君がお送りするぜ。


学院に入学して、3ヶ月が経った。


最近はぼちぼち授業にも出るようになった俺は、相変わらずのぐうたら学生生活を送ってる。


あの日以来、アニーは何かと俺の世話を焼いてくれるようになった。


一緒にいるとき、目のやり場に非常に困るんだが。


そして彼女はやたらめったら何かにぶつかる。何でだ?


あとうれしいことに彼女は「私も御領主様みたいなアルケミストになりたいんです!」と言ってくれたので、近々魔改造を始めようかと思ってたり。



昔ギルドメンバーに「ぱらさん新人の魔改造乙☆」とかよく言われたわ………。


通常ソロで100時間かかるレベル1~20を、3時間でやったりな。


魔改造得意です。



今日は学院が休みなので、俺は実家に戻っていて、今農園にある作業部屋の中にいる。


昔は3人が作業するのが精一杯だったこの小屋も、この2年ちょっとの間に2回の増築を繰り返し、今では7人一緒に作業ができるまでになった。


今も俺の周りには、6人の奴隷の働き手さん達がいて、黙々と作業を行っている。


もちろん分業。元日本人なら当然。


え?人数が増えてるって? 

そうそう、シランに頼んでおいた50人のうち10人は、うちで農園の世話とここでの作業をしてもらってる。



あと、最初にうちに来たジトーとセロン、マオルルとキーナがデキた。


俺がまだ学院に入学する前の話なんだけどな。


まぁ、毎日一緒にいれば成り行きとして、そうなるよね~。


デキたついでに子供もデキたらしく、ジトーとマオルルが必死の形相で俺に謝りに来て、自分の命と引き換えに………とか言い出したから、ちゃんと働いて金返せ~お幸せにな~と言ったら、4人に涙流しながら死ぬほど頭下げられた。


俺みじんも怒ってないんだけどな~。


ついでに家族用に家をそれぞれ建ててあげた。


借金追加な~、と笑いながら言ったら、また大泣きされたけど。


………借金追加とか悪い事したかな?



んで、俺が学院に入学する直前に生まれた赤ちゃんが、それはそれはかわいいんだわ。


ジトーのとこが男の子で、マオルルのとこが女の子。


名付け親に~って言われたから、黒い髪の男の子に、シュバルツ(ドイツ語で黒)。


小麦色の髪の女の子に、そのままムギってつけた。


我ながらネーミングセンスゼロな名前だったんだけど、それぞれの親が喜んでくれたしいいよな。


そんなこんなでジトーたちはめちゃめちゃ頑張って働いてくれている。


あと子供たちが生まれたことで、アリアたち4人にも結構いい影響があったりして俺としてはすごいうれしい。


アリアとエリアは元々世話好きだし、リューネも気になるのか何かと見に来るらしい。


そして一番いい影響があったのが、シルウィ。


足しげく赤ちゃんのところに通っては、黙って赤ちゃんを見て幸せそうにうっすら笑ってると、マリエルから念話で聞いた。


最近俺が家に帰っても、感情を前より上手に出せるようになってきた気がするし。



そういえば、あの子たちが生まれてしばらくして二人が一緒に熱出した時には、たまたま学院の休みに帰ってきてた俺と父上が一緒にパニクっちゃって、母上とマリエルに怒られたなんて事もあったなぁ。


アホみたいにポーション持っていったからな。



この辺の一連の話を、イナ先生がシランに話したらしい。


腹抱えて笑ってたとよ!あんにゃろうめ!



コレだから悪い大人は!



ま~そういう感じなので、追加で来てくれた10人にも、恋愛は自由だからと言ってある。


人はパンだけで生きるにあらず!


恋愛って生きるのには必要だと思うし。


もちろん無理強いしたら、そいつは4分の3殺した後、要らないモノは切るって言ってあるけど。

あと恋愛関係でもめたら、他の場所に移動とも言ってある。


うちで俺のことをただのガキだって思ってる奴はいないから、みんなちゃんと言うことを聞いてくれて助かる。


ま~イロイロとありえないもん見せてるからね~。



さてと、俺も今日はここらで切り上げて、2人の天使の顔でも見に行きますかね?



◇◆◇◆◇◆◇◆



うん、かわいかった。


ほっぺがプニプニしてんだよな~、赤ちゃんって。


そういう感じでマリエルたちも交えて赤ちゃんを堪能、その後父上たちと食事をして、今は夜の間に学院に駆け戻ってる最中だ。


今日はいわゆる朧月夜で、ちょっと薄暗いけど何とか大丈夫。


魔法のカンテラ持ってるし。


そう思いながらカンテラ片手に夜道をひた走っていると、いきなり風を裂いて俺の頭めがけて何か飛んできた!


それが何かを認識する前に何とか間一髪かわし、カンテラを投げ捨て様、即座に腰からダガーを引き抜いて臨戦態勢を取る。


その瞬間俺のスイッチが切り替わる。


チラリと見た俺の背後に刺さっていたのは、一本の矢。


こんなところに矢を打ってくるような人型のモンスターはいない。


つまり相手は同じ人間。



にゃろう、どこのどいつだ。



矢の刺さってる角度からして、敵は向かって左手の森の中か?


相手は盗賊? 冒険者? まぁなんでもいいや。




―――さて、人間相手の初めての実戦か。



おそらくそれほどの数はいない。


気配からすると………4人か。


そうこうしているうちに目の前の森から3人出てきやがった。3人?


あ~そういうことか。



ということは今までもそうだったと? あちゃ~。



まったく、まだまだかなわないなぁ………あの人には。



わずかに雲間から零れ落ちる月明かりを頼りに、こちらに歩いてくる3人の先頭の奴の顔を見ると、そいつは汚らしい顔したおっさんだった。


装備も見えた分だけではあるが、どれもEグレードのものばかり。


おそらく冒険者崩れのごろつき野郎。


他の二人も似たようなもんだな。


舐められたモンだ、俺も。


とりあえず楽しい楽しいお話で、情報を可能な限り引き出すとするか。



「おっさん、月も朧な闇夜のご挨拶にしては物騒だな。


誰かと間違えたってんだったら、手加減、してやらなくもないぜ?」


その俺の言葉に、おっさん達が笑う。汚い歯見せんじゃねぇよ。


「ガハハ!小僧!


いくらお前が貴族のガキだろうと、今はたった一人だ!


そんな大口叩いても、誰も守ってくれやしねぇよ!


パパ~、ママ~とか叫ばなくていいんでちゅか~? 


殺されちゃいまちゅよ~。」



………台詞が三下以下なんだよ、おっさん。



いいや、予定変更だ。



とりあえずきっちり上下関係分からせてから、情報を吐かせるか。



「おっさん………、その台詞そっくり返すわ、こいつと一緒にな!」


俺はそう吐き捨てると同時に、護身用の小さなナイフをおっさんめがけて投げつける。


闇夜を鋭く走る一筋の光が、見事におっさんの左内腿に刺さり、「ぐぁ!」というくぐもった声が聞こえた。


闇夜の中で明らかに動揺する3人の男。


そんな事には委細構わず、俺はわずかに漏れる月の薄明かりを頼りに、一番後ろにいたメイジ風の男に切りつける。


左腕、右腕、右わき腹、両足を切り裂き、戦闘不能状態に追い込んだあと、あごを掌で強打して気絶させる。


俺の早業にパニックになったもう一人の男が、弓矢を放りだして逃げようとするが、逃がすわけがない。


後ろから迫って同じように死なない程度に加減して血だるまにした後、今度は延髄をぶっ叩いて寝かしつける。


オヤスミ。


さ・て・と。


「おっさん、あんたのパパとママは呼ばなくていいのか?」


そう言いながら振り返るとおっさんは血だらけの左足で、何とか立ち上がって震えながら剣をかまえていた。


うわ、生まれたての小鹿みてぇ。


「て、てめぇ!何モンだ!

何でてめぇみたいなガキの癖に、な、なんで、レ、レベル14もある俺たちが3人がかりでやられるんだよ!いったいどういうことだ!」


おいおい、おっさん、声が震えてるぜ? さっきまでの威勢はどこに行った?


そしてレベル14程度でいばってんじゃねえよ。


そんなレベル、俺は8歳の時に通り過ぎとるわ!



「簡単だろ? 俺がおっさんたちより強いんだよ。そんだけのことさ。


あとさ、一応貴族の一人息子の俺が、本気で一人でこんな暗い夜道を行き来してると思ってんのか?


………イナ先生!もういいでしょう!」


ミスリルダガーについた血を腰のポーチにいつも入れてあるボロ布で拭いながら、俺がそう叫ぶと案の定おられましたよ、我がお師匠様。


俺の背後の闇の中から浮かび上がるように現れた先生は、珍しくそのナイスミドルなお顔に満面の笑みを浮かべておられました。



まったくスパルタにも程があるっての。



「いつから気づいていた?」


「情けない事に、こいつらの気配を探った時に一緒にですね。4人いるって感じましたから。」


「ふむ。まぁ何とか及第点、といったところだな。


ジオ、一度こいつらを連れて屋敷に帰るぞ。その後改めて送って行こう。」


「は~い。というわけで!」


イナ先生の登場に逃げようとするおっさんに向かって、俺は威力を半分ほどにセーブした《ファイヤーボール》をお見舞いしてやる。


闇を赤々と染める紅蓮の炎が、おっさんに向かって飛ぶ!


突然の赤い光に耐え切れなくなったおっさんは振り向いて、そして絶望の悲鳴を上げた。


着弾!


おっさんは見事ミディアムレアに。


『上手に焼けました~♪』って幻聴が聞こえた気がしたけど、殺してない、はず!


そこまでやり遂げた俺は周囲の気配を改めて探ってから、戦闘状態を解除。



その瞬間、人間の肉を切った事実や人間に向かって魔法を使った事に軽く吐きそうになる。


でもまだましだ、昔のアレに比べれば。



ふ~~~~。



人間様と戦うのは………しんどいねぇ。



◇◆◇◆◇◆◇◆



あの後父上に連絡して、荷馬車と人手を用意してもらい俺を襲撃したおっさん3人を家まで護送した俺は、後のことを父上とイナ先生に任せて自分の部屋で寝た。


さすがにあの後、学院に戻る気にはならんかったわ。


まぁおっさんたちは死なないとは思うが、死ぬよりつらい目にあうだろうね~。


どのみち賞金首は決定だしな。


《New World》では『PKプレイヤーキラー』はシステムとしては存在するが、そのリスクは他のMMORPGと比べると比較にならないくらいに高い。


いい機会だから、これも説明したほうがいいか。



PKプレイヤーキラー』とは、プレイヤーがプレイヤーを一般フィールド上で襲って殺す行為のことを指す。


これをやった奴は、大陸中部に存在する悪徳の街「アンギル」以外の街でのサービスが受けられないようになり、なおかつ一般の街に入れば警備兵に攻撃される。


さらに成功しても失敗しても賞金首となってしまい、他のユーザーからの合法的攻撃対象になっちまうので、基本これをやる奴は悪役のロールプレイをしてるやつか馬鹿だけ。


さらに3回賞金首として狩られたアバターは、神の祝福を失い、現実での一定期間ゲームに参加する事ができない、つまりキャラの使用凍結を運営側から食らう。


確か1週間だったかな?


またこうなった場合、全てのアイテムと資金を失う事になるというアホ仕様である。


勿論メリットがないわけじゃない。


倒したプレイヤーの持ち金全額ぱくれるからな。


但しデメリットがでかすぎる。


まぁ実際、犯罪行為ってそんなもんだよね。


公式設定では、冒険者たちに加護を与える勇気の神『アスリオン』が理由無き争いを禁じている為こういう風になっていると説明があったはずだ。



まぁ、今度の場合は、それ以上に………父上がヤヴァイ。


おっさんたち、元気でな~。


星になってオ・ク・レ。


少しは夜道が明るくなるだろうし♪



学院にはイナ先生に学院長に直接事情説明をしてもらう為に行ってもらい、俺はしばらく実家で休むことにした。


これでどう事態が動くか、だな。


おそらく誰かが俺を襲うように依頼したんだとは思うんだが………。





ど~~~~~~~~~~~~~~う考えても豚しか思いつかねえ。



あの豚。そんなに死にたいのか? 死ぬのか? 馬鹿なのか?



まぁ思い込みは良くないし、結果出てからだな、全部。



にしても殺してないせいか、狩りで生き死にに慣れすぎたせいか、精神的にほとんど動揺してない今の俺ってどうなのよ?


さすがに昨日一晩は人を切った感触とか、焼いたあの臭いとかでなかなか眠れなかったけど。


ウェアラットとかゴブリンとかの時あんなにきつかったのにな。


これって成長なんでしょうか?


日本でなら間違いなく過剰防衛だしなぁ。


まぁわかんないこと悩んでも仕方ないか。



久々に家でゆっくりするか~。



気分転換がてら、アリアたち連れて赤ん坊の顔見に行こっと。



………後日15、000Gが賞金首退治の報酬として与えられた。ゴチです!


但し全部内々に処理してもらったから、情報まったく表に出てないけどね!

お読みいただきましてありがとうございます。

ご意見、ご感想、誤字脱字の指摘など幅広くお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ