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第53話 救ったものと埋めたもの(1)――並縫いの月

管理番号KR-07 矯正相談記録

課題5 — 私が数えるもの。


* * *


この前、先生は、数字は二つだと言いました。数える側と、数えない側。


それから、この課題を出されました。


タイトルが、書式に印刷された字ではなくボールペン書きだったので、その場で決まった課題だとわかりました。


この中で、私が数えているものから書きます。


一日にショッピングバッグ四百個。


朝の点呼で呼ばれる私の番号。


運動場一周は三百十二歩です。


寝台の縁の刻み目は、もう数えていません。六十八でやめました。


終わった日の翌日からは、数える理由がありませんでした。


今週、数えるものが一つ増えました。


運動の時間に、チュックのチームが私を一人と数えました。


チームを組んでいた人が指で人数を数えていて、私を指さして「六」と言いました。


こっちが六、あっちが六。私はその数字の中に入りました。


ボールは三回蹴りましたが、三回とも塀の方へ飛んでいきました。


チームを組んだ人は、塀の方へ蹴る癖は直せ、と言いました。


その癖がどこから来たのかは、言いませんでした。


* * *


課題のタイトルは、相談の最中に決まった。彼が日付を数えたと言ったからだ。


運動場一周が三百十二歩だというのは、俺も知らなかった。


* * *


あっちにも、数える人がいました。私ではありませんでした。


孤児院には、毎朝、騎士を数える子がいました。


日が昇ると、騎士たちが塀からはしごで降りてきます。


その子ははしごの下に立って、降りてくる人を一人ずつ数えました。一つ、二つ、三つ。大きな声で。


院長に言われた仕事ではありません。その子が自分で引き受けた仕事でした。


最後の人が地面を踏むと、その子は最後の数をもう一度叫びました。五人の年もあれば、六人の年もありました。


その数が出てから、倉庫の前に集まっていた子たちが走ってきました。


それまでは、誰も鎧にしがみつきませんでした。


その子は猫も数えました。


私が降りると、魚の匂いを追って猫たちがはしごの下に集まったのですが、その子ははしごの近くにいる猫をみんな騎士と数えました。


だからある朝は、騎士が九人でした。


騎士団長は、猫は抜けと言いました。


その子は、猫も一晩中、塀の下にいたと言いました。団長は、それには答えられませんでした。


その日から、騎士団の朝の人数は、猫を入れて数えました。


院長は、人数が増えても猫の分の飯は出ないと言いました。


一度、その子が最後まで数えられなかった朝がありました。四人で止まりました。


五番目が、降りてきませんでした。


その子は五を呼ばず、はしごのてっぺんを見上げました。倉庫の前の子たちは動きませんでした。


その日は、誰も鎧にしがみつきませんでした。


その子が止まった数字を聞いただけで、みんなわかりました。


最初の課題に、騎士団が五人だったのが四人になったと書いたのは、その朝です。


* * *


数字が多い。


一、二、三、五、六、九、四。


人の名前は今回もない。数字は、一つも間違えずに書いた。


* * *


その子は、私によく訊きました。


「騎士さんは、一晩中、何を見てるんですか?」


私は答えませんでした。代わりに、毎晩言っていたあの言葉を言いました。


他の子たちは、その言葉を聞くと目を閉じました。その子は、閉じませんでした。


その子は、騎士さんが見ているものを自分も数えたいと言いました。


あれらがいくつ来るのか分かれば、少しは怖くない気がするようでした。


私は、それは数えるものではないと言いました。その子は、数えるものだと言いました。


その子の計算では、はしごから降りてくる人が数えられるなら、森から降りてくるものも数えられるのでした。


私は、その日、その子に勝てませんでした。


今、もう一度考えてみても、その子の言葉には、間違っているところがありません。


その子とあの話を交わしたのは、叙任を受けて迎えた最初の冬でした。


数日後、鐘が鳴った夜でした。


子たちは、いつものように倉庫へ下りていきました。


私は、はしごの下であの言葉を言いました。院長が、いちばん最後に下りて、扉に鍵をかけました。


その夜、あれらはなかなか来ませんでした。


冬は虫が鳴かないので、あれらが来るのを前もって知るすべがありませんでした。


森は、最初から静かでした。


塀を引っかく音は、夜明けが近くなって、ようやく一度だけしました。一か所で、一度。それだけでした。


乗り越える場所を探すときのように、塀に沿って移っていく音ではありませんでした。


私は、その音がした場所を覚えています。倉庫のほうでした。


倉庫には、外へ通じる穴が一つありました。


森側の壁の下、風を入れるために開けた穴でした。


鉄格子の棒が三本、打ち込まれていました。


大人の手は、格子の間に入りませんでした。子一人なら、抜け出せました。


それは、あのことがあってから知りました。


日が昇りました。騎士たちが、はしごを降りてきました。


はしごの下では、数字が聞こえませんでした。


私は、その子が寝坊しているのだと思いました。


倉庫の扉が開いて、院長が子たちを数えました。


院長は、声を出さずに指で数えました。二度数えました。それから、私を見ました。


その子は、塀の外にいました。


森の縁、いちばん前に立っている木の下でした。


木にもたれて座り、森のほうを見ていました。目は開いたままでした。


私は、その子の前にひざまずき、手を当てました。


手のひらが温かくなりました。井戸のときと同じでした。


けれど、手のひらの下で閉じるものは、何もありませんでした。


傷はありませんでした。どこを確かめても、ありませんでした。


治すところがないのに、その子は冷たくなっていました。


私は、手を離しませんでした。日が木のてっぺんを越えるまで、そうしていました。


手のひらの温もりは、どこにも行けず、その場に溜まっていました。


その子の目は、私が閉じました。


まぶたを下ろしながら、あの言葉を言いました。


「怖いものは見ないで目を閉じて寝ろ。俺が見てる」


その子は、初めて私の言うとおりにしました。


私はその子を抱えて、塀の下まで歩きました。


騎士たちが、はしごを下ろしてくれました。


片腕でその子を抱えたまま、もう片方の腕で横木をつかみました。横木に巻かれた布は、その間に凍りついていて、手のひらに貼りつきました。


その子は、軽かったです。


塀の上で、前歯の欠けた騎士がその子を受け取りました。


その子は毎朝、はしごの下からてっぺんを見上げて、数字を数えていました。塀の上は子供たちの場所ではないので、一度も上がったことはありませんでした。


その日、初めて上がりました。


* * *


傷はなかった、と書きました。どこを押してもなかった、ともう一度書きました。


あれらが何をしたのかは、書きませんでした。それを見た者は、その子だけです。


* * *


子供たちの墓は、塀の中に作りました。庭の西の隅、井戸から二十歩ほど離れた場所でした。


塀の外はあれらの側なので、そこには誰も埋めませんでした。


その隅には、先に埋められた者たちがいました。


私の鎧の前の持ち主も、そこにいました。五で止まった朝の五番目の騎士も、そこにいました。


子供の墓は、ありませんでした。少なくとも、私が来てからは。


冬の土は凍っていて、シャベルの刃が入りませんでした。


騎士たちが交代で掘りました。つるはしで凍った土を割って、割れた土をシャベルでかき出しました。


一尺掘るのに、半日かかりました。


私は、自分の順番が終わっても、穴から出ませんでした。


つるはしの柄で、手のひらが擦り剥けました。


目の下に点のある騎士が、手を治せと言いました。私は治しませんでした。


その日は、手が痛いほうが、耐えやすかったです。


院長が毛布を持ってきました。院長の部屋にあった冬の毛布でした。


二十年以上、かぶってきたものだと、院長は言いました。


その子は、その毛布で包みました。


私は、院長が帳簿を開くのだと思いました。毛布にも値をつけるのだと思いました。


院長は、帳簿を開きませんでした。


その冬を、院長は毛布なしで越しました。


騎士団長が自分のマントを差し出しました。院長は、それは受け取りました。


子供たちは、穴をぐるりと囲んでいました。歌は歌いませんでした。


子供たちが知っている歌は、はしごの歌ひとつだけでした。それも、塀に上がる者に歌ってやる歌でした。


代わりに、石を投げた子が数字を数えました。


土をひとシャベルかけるたびに、ひとつ、ふたつ。誰も止めませんでした。


石を投げた子は、三十一で止まりました。穴は、いっぱいになりました。


次の日の朝、はしごの下で数字を呼ぶ者は、いませんでした。


騎士たちは黙って降りてきて、子供たちは倉庫の前で待っていました。


全員降りた、と誰かが言ってくれるまで、誰も走り寄りませんでした。


しばらくそうやって立ったあと、騎士団長が数えました。ひとつから、六つまで。


団長は声が低いので、倉庫の前までは聞こえませんでした。


それで、その次の日からは、私が数えました。


騎士団で、私の声がいちばん大きかったです。


猫は、数えませんでした。猫まで騎士に数える数え方を知っていたのは、その子だけでした。


* * *


この課題で、ノートを一冊まるごと使い切りました。


課題用のノートは月に一冊支給されます。私はその一冊を、課題三つで使い切りました。


それで購入申請書を出しました。品目欄にノート、用途欄に課題。


お金は作業奨励金から出ました。


今回、初めて換算してみたのですが、ノート一冊がショッピングバッグ二百枚の値段でした。


この課題の前半分は、ショッピングバッグ二百枚で書いた計算になります。


同室のご老人はその申請書を見て、舌打ちしました。奨励金は菓子を買って食うための金だ、紙を買う奴は初めて見た、と言いました。


そう言って、この課題を読みました。墓のくだりで長いこと止まっていました。


読み終えてから、自分も墓を掘ったことがある、と言いました。正確には売ったのだ、と訂正しました。


教会の裏山に納骨堂を建てると言って、場所を先に分譲したのだそうです。一番上の段は空に近いからと、倍の値段を取りました。


納骨堂は建ちませんでした。裏山は他人の土地でした。


ご老人は、その件でここへ来たのではない、と言いました。その一件は、まだ引っかかっていない、とも言いました。


次の日の朝、ご老人はそのくだりを外してくれ、と言いました。一晩じゅう祈ってから計算し直したら、公訴時効があと2年残っているのだそうです。


私はでは、2年後にこの課題を出してもいいものか、先生に伺ってみます、と言いました。


ご老人は、それは長すぎる、今週に出せ、と言いました。2年のあいだ他人の手にあると思うと、自分が不安で生きていられないからだ、と。


* * *


救った子は四十人。埋めた子が何人なのかは、書かない。


院長が帳簿を開かなかった日が、初めて出てくる。


* * *


最初の課題に、私は子供たちを四十人ほど救った、と書きました。


正確に数えたわけではない、とも書きました。数えていると、別の数までいっしょに数えることになるので、やめたのだ、と。


その別の数が、これです。


はしごの下で数を数えていた子が、一人目でした。


そのあと、何人か続きました。


庭の西の隅は、6年のあいだに少しずつ広がりました。


私はそのたびに、つるはしの柄を握りました。何度握ったのかは、わかりません。


救った子供たちは、大ざっぱでも四十人ほど、と言えます。あちらは、大ざっぱにも言えません。


埋めた子供の数は、数えませんでした。


* * *


彼は、あの子の目を閉じた、と書いた。


あの夜、あの子が森から下りてくるのを幾つまで数えたのかは、誰も尋ねなかった。


あの孤児院の朝の人数から、猫はその日、抜けた。


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