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神獣テイマーの異世界放浪記 〜未知なる食を求めて〜  作者: 葉山ローリエ
第一章:最弱テイマーの規格外な旅立ち 〜最強の神獣たちとの出会い〜

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第8話:初めての解体と、野営の絶品飯

太陽が西の山に沈みかけ、空が茜色に染まり始めた頃。

俺たちは街道を少し外れた開けた場所で、野営の準備を始めていた。


「よし、今日の晩飯はこいつだ!」


ドサッ、と重い音を立てて、リーダーのガイルが巨大な猪のような魔物を地面に放り投げた。

道中で遭遇した『ファングボア』という魔物らしい。ガイルが一撃で仕留めたため、肉の損傷はほとんどない。


「解体は私がやるわ。リオン君、見ておく?」


魔法使いのエイミーがナイフを取り出し、手招きをしてくれた。


「はい、ぜひ教えてください。料理人として、食材がどうやって処理されるのかは知っておきたいんです」


俺が真剣な顔で頷くと、エイミーは嬉しそうに解体の手順を丁寧に解説してくれた。

血抜きの方法、毛皮を傷つけない剥ぎ方、武具の素材になる牙の切り離し、そして魔物特有の関節の外し方。

料理のプロとして毎日肉を扱ってきた俺には、彼女が説明する『筋の構造』や『部位ごとの肉質』がすんなりと、手に取るように理解できた。


(なるほど……地球の猪と骨格は似てるけど、魔力の影響か筋肉の繊維がかなり太いんだな。なら、あそこの関節を狙えば――)


「少し、俺にもやらせてもらえませんか?」


「ええ、いいわよ。ほら、ここの関節にナイフを入れて……」


エイミーの指導と、リコの演算サポートによる手元の微調整。

そのおかげで、初めての魔物解体にもかかわらず、俺はかなりスムーズに綺麗な精肉を切り出すことができた。


「すごいわ、リオン君! 初めてなのに、すごく丁寧にできてる!」


「ははっ、昔から包丁は握り慣れてるもので。それじゃあ、この新鮮なお肉で晩飯にしますね」


驚くエイミーからお墨付きをもらい、俺は手早く調理の準備に取り掛かった。

◆ ◆ ◆


今日のメニューは『ファングボアと異世界野菜の濃厚シチュー』だ。

大鍋に油を熱し、一口大に切ったボアの肉の表面を一気に焼き上げて旨味を閉じ込める。

そこに、村で分けてもらった野菜を投入。

さらにここで、隠し味の登場だ。

村で大成功したあの『干し果実(極上スイーツ)』を細かく刻んで、鍋に加えるのだ。干し果実の強烈な甘みとコクが、肉の臭みを完全に消してソースに深い奥行きを出してくれるはずだ。


グツグツと煮込むこと数十分。

夜の野営地に、暴力的なまでに食欲をそそる香りが漂い始めた。


「よし、完成です。熱いうちにどうぞ」


木のお椀によそって渡すと、冒険者の4人はゴクリと生唾を飲み込んだ。

寡黙なタンクのドンが、一番最初に肉を口に運ぶ。


「…………っ!!」


ドンはカッと目を見開き、無言のまま、もの凄い勢いで親指を突き立てた。


「熱っ、ほふっ……う、美味ぁぁぁぁぁいっ!! なんだこのお肉!? 口の中でホロホロに崩れるぞ!!」


「シチューのスープが凄いわ……! お肉の旨味だけじゃなくて、上品な甘みとコクが……これ、王都の高級レストランより美味しい……っ!」


ガイル、エイミー、ミランダの3人も、あっという間にお椀を空にしていく。

俺が取り分けた専用の小皿を舐め回しているリコも、幸せそうにお髭を震わせていた。

◆ ◆ ◆


食後。

満腹になって焚き火を囲む中、俺はずっと胸に秘めていた思いを口にした。


「実は俺……冒険者になってみたいんです」


「冒険者に?」


「はい。色んな街や地方を自分の足で巡って、まだ見ぬ未知の食材を探したい。……そのためには、自分の身を守れる冒険者になるのが一番だと思って」


俺の言葉に、ガイルは少しだけ難しい顔をした。


「……気持ちはわかるが、テイマーが冒険者になるのは並大抵のことじゃねえぞ。本人が戦えなけりゃ、魔物を従えることすらできない最弱の不遇職だからな」


ガイルの言う通りだ。

だが、彼は昼間に俺が『剣の素振り』を完璧にこなしたことを思い出し、ニッと笑った。


「だけど……お前のあの『異常な飲み込みの早さ』なら、なんとかなるかもしれねえな」


「え?」


「これだけ美味い飯を食わせてもらったんだ。俺たちも、飯のお礼にお前の夢に協力してやるよ。街に着くまでの数日間、俺たち4人で『冒険者の基礎』を教えてやる!」


「本当ですか!?」


ガイルの提案に、他の3人も力強く頷いてくれた。

そこからは、毎日の野営のたびに怒涛の基礎特訓が始まった。

ガイルからは『剣の型とステップ』、ドンからは『怪我をしない受け身』、ミランダからは『回復魔法の基礎理論』、そしてエイミーからは『魔力の感じ方と、攻撃魔法の基礎』だ。


「いいか、リオン君。へその下にある魔力の溜まり場を意識して、それを指先に集めるの……」


「へその、下……っ!」


俺はエイミーの言葉に従い、額に汗を浮かべながら必死に集中する。

リコの演算サポートのおかげで「理論」は完璧に理解できる。だが、実際に魔力を動かすとなると、全身の筋肉が軋むような疲労感に襲われた。


「んんん……っ! 出ろぉぉっ!!」


数分間、顔を真っ赤にして踏ん張った結果。

俺の指先から『ポッ』と、マッチの火のような小さな小さな炎が灯った。


「つ、着いた……! 火が出たぞ……!!」


俺は嬉しさのあまり歓声を上げたが、周りのエイミーやガイルたちは、目を丸くして完全に固まっていた。


「う、嘘でしょ……!? 専門職でもないのに、魔力の扱いを教わったその日のうちに火を出せるなんて……!」


「ああ。いくらなんでも、初日でそれは凄すぎるぞ……!」


どうやら、素人がいきなり火を出すのはあり得ないことらしい。

みんなが驚愕する中、俺の頭の中にリコの冷静な声が響いた。


『……ふふっ。リオン、あなたの魔力適性ではなく、私の演算による魔力操作の最適化のおかげですよ。ただ、今は光属性のわたくししかいないため、他属性の魔法はあの小さな火種が限界です』


(え? じゃあ、属性が違うと使えないのか?)


『ええ。魔物や魔法には、それぞれ生まれ持った属性があります。他属性は少し練習が必要ですが……光属性の私があなたと繋がっているのですから、光の魔法なら、もう少し上手く扱えるはずですよ』


「なぁ、リコ。光の魔法って、どうやって使うんだ?」


『ふふん、簡単ですよ。魔力を練って、指先に集めて……ピカーってやるのよ!』


「ピカー、って……」


俺の脳裏に、日本にいた頃によく見た、世界的に有名な『黄色い電気ネズミ』のキャラクターがよぎった。

リコも真っ白とはいえネズミの姿をしているし、なんだか絶妙に被っている気がする。


「……十万ボルトとか出ないよな?」


『じゅうまんぼると? 何ですかそれは。いいから、ピカーです!』


俺は苦笑いしながら、エイミーに教わった通りへその下の魔力を指先に集め、「ピカッ!」と念じてみた。

――カッ!!!!!!!

次の瞬間。

夜の野営地に、太陽が落ちてきたかのような『強烈な閃光』が弾け飛んだ。


「うおっ!?」


「「「ぎゃあぁぁぁぁっ! 目、目がぁぁぁっ!!」」」


あまりの眩しさに俺自身も目を瞑ったが、直視してしまったガイルたちは悲鳴を上げて地面に転げ回っている。

「な、何よ今の閃光!? 敵襲!?」


「前が見えねえっ! ドン、盾を構えろ!!」


パニックに陥る冒険者たちを前に、リコが肩の上で得意げに胸を張った。

『ふふっ。極限まで圧縮した光の魔力を、一気に解放しました。物理的な殺傷力は皆無ですが、敵の視覚を完全に奪い、行動不能に陥らせることができます』


(なるほど……光属性って、優しい光で照らすだけじゃなくて、現代の『閃光弾フラッシュバン』みたいな使い方ができるのか!)


俺は、目をシパシパさせながらも、心の中でガッツポーズをした。


「……ご、ごめんなさい皆さん! すぐに治まりますから!」


俺が慌てて平謝りすると、涙目のガイルたちが「お前、本当に規格外だな……」と呆れたように笑い合った。

心強い先生たちと、頼れる相棒のクスッと笑えるサポート。

街に着く頃には、自分の身を守るための強力な手札を持てそうだと、俺は確かな手応えを感じていた。

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