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神獣テイマーの異世界放浪記 〜未知なる食を求めて〜  作者: 葉山ローリエ
第二章:交易都市グランツ編 ~新たなる幻獣との出会いと、街を脅かす巨獣の影~
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第75話:竜の楽園と、黄泉軍(よもついくさ)召喚

俺は力を込め、重厚な扉を押し開いた。

扉の先には、暗い洞窟の景色……ではなく、目を疑うような光景が広がっていた。

果てしなく広がる青い空。切り立った雄大な緑の山々と深い谷、そしてそれらをぐるりと囲むように広がる透き通った海。

まるで、どこか南の島の広大な大自然そのものが、ダンジョンの空間拡張によってすっぽりと収まっているかのようだ。


「こ、これは……」


リコが、かつてないほどに緊張した声で呟いた。


「『竜の楽園』ですわ……」


「竜の楽園……。なんか、元の世界にあった映画の『ジュラシック・パーク』みたいだな……」


俺の目の前には、圧倒的な生態系が広がっていた。

空には巨大な翼を持つ飛竜ワイバーンが群れをなして舞い、海には水しぶきを上げて海竜が優雅に泳いでいる。

さらに緑の大地には、山のように巨大な陸竜をはじめ、強烈な魔力を放つ様々な種類の凶悪な魔獣や、おそらく彼らのエサになるだろう草食魔獣たちが我が物顔で闊歩していた。


「ここは過去に攻略されたはずですが……復活したようですね」


「ダンジョンの攻略って、そんなに難しいのか?」


「難易度はそれぞれ違いますが、この『竜の楽園』は歴史上最も被害の出たダンジョンですわ」


「えぇ……。そんなんばっかだな、おれ……」


思わず遠い目をする俺に、リコが当時の記録を語り始めた。

ずっと昔、初めてこのダンジョンが出現した際、五大ギルドが手を組み攻略に挑んだという。

その討伐軍の中には、俺が闘技場で戦ったジークやセリアほどの実力者たちも多数いたらしいが、彼らはほとんどの戦力を失い壊滅した。

世間的には民を安心させるために「攻略した」と報道されていたが、おそらくダンジョンコアを破壊できず、封印をした可能性が高いとのことだった。

封印されている間もダンジョンは力を蓄え続け、やがて封印が解けて……そこからさらに三十年。

当時とは比べ物にならないほどの規模に成長しているようだ。


「はぁ……やるしかないよな。とりあえず、奥にあるダンジョンコアを見つけて破壊すればいいんだよな?」


「一番簡単なのはそれですが、それでいいのですか? いずれ戦うことになるバハムートに、今のままのあなたで勝てるとでも?」


「うっ……確かにそうだ」


このダンジョンは、いずれ霊峰で対峙する最強の龍・バハムートに挑むための、絶好の修行場でもあるのだ。

とはいえ、俺は眼下に広がる自然の景色を見下ろした。


「……だけどさ。無闇にここにいる魔獣を倒していくのも、なんだか心苦しいんだよな」


「ふふっ。そう言うと思いましたわ」


俺の甘い言葉に、リコは小さく微笑んだ。


「ですが、安心しなさい。ダンジョンの魔獣と、外の魔獣は別物です」


「別物?」


「ええ。ここの魔獣はダンジョンが生み出したもので、敵意しかありません。侵入して来た者の命を奪い、ダンジョンの糧とします。もしダンジョンブレイクが起これば、周辺の人や魔獣を襲って糧にするのです」


リコは言葉を切って、真っ直ぐに俺を見た。


「あなたが予選で出会ったスノー・スネイクなどの優しい魔獣たちも、すべて被害を受けますわよ」


「なるほど。……要するに、遠慮なく倒していいってことだな」


迷いが晴れた俺に、不意に声が響いた。


『――リオンよ。お主に、わらわのもう一つのスキルを見せてやろう』


腰の魔剣から、イザナミの声が響いた。


「ん? どうしたんだ急に」


『そこに飛んでいる飛竜を斬ってみよ』


上空から、俺たち侵入者に気づいた一体のワイバーンが急降下してきていた。

俺はよくわからないままイザナミを抜き放ち、すれ違いざまにワイバーンを斬り捨てた。

ズバァァッ!!

ワイバーンの巨体がズシンと地面に墜落し、息絶える。

すると、イザナミが亡骸から魔核だけを吸い出すように、黒い靄を伸ばして吸収した。素材となる上質な肉や皮は、しっかりとそのまま残っている。


『よく見ておけ。……【黄泉軍よもついくさ召喚】』

イザナミがそう紡ぐと、倒れたワイバーンの亡骸とは別に、空間から『先ほど倒したワイバーン』が音もなく姿を現したのだ。


「こ、これは?」


『妾が取り込んだ魔核は、不死の魔獣として召喚できるのじゃ』


「不死の魔獣……? いや、何か違和感が……影がない?」 

『魔力で蘇らせた霊体じゃ。お主の魔力が上がれば、こやつも生前より強くなるぞ。霊鼠リコが言った通りなら遠慮はいらぬ。ここの魔獣を全て取り込むがよい』


「全てって……ここに何体いるんだ?」


俺が尋ねると、リコが冷静に周囲を見渡して答えた。


「竜種が二千体、その他の魔獣が千体ってとこですわね」


「三千体!? そんな数を召喚できるようになったら、もはや軍隊じゃねぇか……。てか、気が遠くなる数だな」


「数だけが問題ではありませんわ。……明らかに次元が違う魔獣が、5体いますね」


リコの索敵能力が、広大な楽園の各所に潜む強大な気配を捉えていた。


「数だけでも大変なのに……どうするリコ?」


「手分けしていきましょう。海、森の中、草原、崖の上に、それぞれ上位の竜種がいます。そして……島の中央には、さらに強い魔力を放つ魔獣がいますわ」


「ガハハ! なら、俺はあっちの草原の方に行ってみるぜ」

「我は崖の上にいる飛竜どもの相手をしてくる」


タンクとハクが、それぞれやる気満々で名乗りを上げた。


「おれ達は海の方に行ってみる」


「ええ。……ああ、魔核と料理用の素材が必要ですので、ハクとタンクは倒した魔獣や竜、見つけた宝箱などは1箇所に集めておいてくださいね」


「任せとけ! ゴーレムにやらせとくぜ」


「承知した。我も分身にやらせておこう」


さすがは神獣たち、ドロップ品の回収手段まで万全だ。


「みんな気をつけろよ!」


俺の号令と共に。

タンクは草原へ、ハクは崖へ、そして俺とリコは海へと、それぞれの戦場に向けて一斉に駆け出した。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白い!」「神獣たちが可愛い」「続きが読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、

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