表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神獣テイマーの異世界放浪記 〜未知なる食を求めて〜  作者: 葉山ローリエ
第二章:交易都市グランツ編 ~新たなる幻獣との出会いと、街を脅かす巨獣の影~
PR
71/80

第71話:魔剣イザナミと、悲しき呪いの浄化

国を挙げての盛大な宴が終わり、疲れが溜まっていた俺は、宿屋のふかふかのベッドに倒れ込み、泥のように眠った。

その夜。俺は不思議な夢を見た。

二人の神様が、国を作り、「海の神」「山の神」「木の神」など、自然界のあらゆる神様を次々と生み出していく夢。

だが、妻が『火の神』を産んだとき、彼女は大やけどを負い、それが原因で亡くなってしまう。

最愛の妻を忘れられない夫は、死者の世界まで彼女を迎えに行く。


『私が戻れるように神様と相談してくるから、絶対に私の姿を見ないでね』


そう約束した妻だったが、待ちきれなくなった夫は火を灯して中を覗いてしまった。

そこで彼が見たのは、ウジが湧き、恐ろしい姿に変わってしまった愛する妻。

パニックになった夫は悲鳴を上げ、全力で逃げ出す。

約束を破られ、無惨な姿を見られて恥をかかされた妻は激怒し、恐ろしい魔物たちを放って猛スピードで夫を追いかける。

最終的に、夫は生者と死者の世界の境目に大きな岩を置いて道を塞ぎ、ここで二人は完全に別れることになった――。


「…………っ」


そこで、ふっと目が覚めた。

顔が冷たい。触れてみると、大量の涙が流れていた。

俺も元の世界で、心から信じていた人に裏切られ、捨てられた経験がある。女の人の気持ちが、痛いほどわかった。だからこそ、あの夢の中の妻の悲しみと絶望が胸に突き刺さったのだ。


「……なんで、急にこんな夢を」


涙を拭い、俺は小さく息を吐いた。

◆ ◆ ◆

その日の午前中。

宿屋に、国王からの遣いがやってきた。優勝賞品である『魔剣』の授与を行うという。

決勝戦で魔族が現れた影響もあり、授与式は公にはせず、王城で極秘裏に行われることになった。

俺は、人型に姿を変えた神獣たち(リコ、タンク、ハク、ルー)を連れて、王宮の謁見室へと向かった。

厳重な扉の奥。

謁見室には、国王と大臣、そしてS級クラン『星天の導き』のジークさん、セリアさん、ザックの姿があった。


「あれ? みんなはどうしてここに?」


「国王陛下と、魔剣の護衛として来てもらっている」

大臣が厳かに答える。


「リオンよ。魔族を退け、王都を守ってくれたこと、心より感謝する」


玉座から立ち上がった国王が口を開いた。


「これが優勝者に渡す金貨1000枚だ。そして……これが、魔剣イザナミである」


国王の合図で、仰々しい箱が運ばれてくる。

その中には、鞘に収まっている状態でありながら、禍々しく恐ろしい黒い魔力を放ち続ける一振りの日本刀が横たわっていた。


「イザナミ……?」


「この魔剣は、大昔に神獣が創り出し、かつて魔王が使っていたという伝説がある。その後の戦争でこの剣を使用した者は皆、呪われた力に飲み込まれ、命を落としている」


「えぇ……それ、魔王以外使えない呪いの装備じゃ……」


俺が呆れたようにツッコミを入れた、その時だった。


『……怨めしい……』


背筋が凍るような、底知れぬ女性の声。


「え?」


俺は思わず、セリアさんとリコの顔を見た。

二人とも「何?」というように不思議そうに首を傾げている。


『……怨めしい……。……情けない……』


「まただ! どこから声が……もしかして、イザナミか?」


俺が刀に視線を落とすと、頭の中に直接声が響いた。


『――お主、わらわの声が聞こえるのか?』


「やっぱり! イザナミの声が聞こえる!」


「リオンよ。何を言っておる? 我らには何も聞こえぬぞ」


国王やジークたちが当惑する中、刀身から溢れ出す黒い霧が俺に絡みついてきた。


『妾を持て、小童こわっぱよ。……力を貸してやろう』


不気味に赤黒く光り出すイザナミ。

俺は、何かに魅せられるように、フラフラとその柄に手を伸ばした。

そして、鞘から刀を抜こうとした瞬間。


「いけません、リオン! 離しなさい!」


リコの鋭い制止の声。


『もう遅いわッ!!』


ズガァァァァァンッ!!

俺の精神は、イザナミの放つ莫大な魔力に完全に支配された。

◆ ◆ ◆

――ここは、どこだ。

俺の意識は、イザナミの『記憶』の中を漂っていた。

見たことのある景色。昨日見た、夢と同じ内容だ。

いや、続きがある。これは日本の神話じゃなく、この異世界での記憶だ。

優しく、陽だまりのような魔力を持った男の手に、イザナミが握られている。

男の周りには多くの魔獣や魔族がいた。

だが、シーンが反転する。

男は深い絶望と憎悪に支配されているかのように、他国を容赦なく攻め滅ぼしていく。

その手にあるイザナミから、深い悲しさと、悔しさの感情が滝のように流れてくる。


『小童よ。……妾を、魔王様のもとへ連れて行け』


イザナミの痛ましい声が響く。

そのあまりの悲痛さに、俺はただ涙を流して動けずにいた。


『……なぜ、支配できぬのだ』 


俺の精神を乗っ取れないことに焦ったのか、イザナミが魔力をさらに強める。


「……辛いよな。悲しいよな」


『……なっ』


俺の言葉に、イザナミの感情が爆発した。


『小童如きに何がわかる!! 愛する者に裏切られ、救ってくれたあのお方(魔王)すら救えなかったこの痛みが!! 奴が憎い! 憎い! 憎いッ!! ……殺してやる。ここにいる全ての人間を、殺してやる!!』


現実世界。

俺の意思に反して体が勝手に動き、傍にいた仲間たちに向かってイザナミを振りかぶった。


「やめろッ、イザナミ! 俺の仲間には手を出すな!!」


俺は必死に自身の体を抑え込み、その凶刃を止める。


『……っ!(こいつ……なぜ支配できぬのだ。それにこの魔力はまるで……)』


イザナミが驚愕する。


『……ならば。妾の呪いを、貴様一人で受けろ。そうすれば仲間は救ってやろう』


「わかった。……みんな! 今から何が起こっても、手出ししないでくれ!」 


「何を言っているんだ!?」


「どうしたの、リオン!?」


ジークさんとセリアさんが青ざめる。


「……わかりましたわ。あなたを信じます」


リコは深く頷き、動揺する神獣たちを制止した。


「来い! イザナミ!」


『――【千曳ちびきの呪い】!』


俺が何もない空間を一振りする。

その瞬間。防御不能の千の斬り傷が俺自身の体に出現した。


「ぐぁぁぁぁぁっ!!」


全身から血が吹き出す。だが、俺は歯を食いしばって耐える。

『【黄泉の穢れ】!!』


今度は、俺の生命力そのものがイザナミに急速に吸収され始めた。

体が急速にミイラのように干からびていく。


『……温かい。こやつの生命力は、まるで陽だまりのようだ。呪いを受けているのに、こやつからは慈悲深さを感じる。これではまるで……』


「リオン!! 今助けます! 【ハイヒール】ッ!」


俺の悲惨な姿に耐えかねたセリアさんが、魔法をかけようとする。

だが、それをリコが止めた。


「どいて! リオンが死んでしまう!!」


従魔たちは、無言で、覚悟を決めた目でセリアさんを見た。

主が覚悟を決めたのだ。ならば我々は信じるのみ。

その絆の強さに圧倒され、セリアさんはその場に座り込んでしまった。


「はぁっ……はぁっ……」


俺の意識が朦朧とし始めた、その時だった。

突如として、イザナミの刀身が眩い光に包まれた。

同時に俺の体に魔力が逆流し、ミイラのようになっていた体が元の状態へと完治していく。


『……そなたの覚悟、見事じゃ。妾の力をそなたに貸してやろう』


声から憎しみが消え、気高く優しい女性の声に変わっていた。


「……ありがとう、イザナミ。これからよろしくな」


『久しぶりに賑やかになりそうじゃ』


「うちの連中はみんないい奴だよ。世界中を旅する予定なんだ。さっき言ってた魔王の所にも連れて行ってやるからな!」


『(こやつ、妾の願いを叶える気か? どこに魔王がおるのかもわからないのに……)……ふん、生意気なこと言うでないわ小童が』


脳内で響くイザナミの声は、どこか少しだけ嬉しそうだった。

俺はイザナミを鞘に収め、力強く拳を握りしめた。


「よし! あとはバハムートが目覚めるまでに修行して強くなるぞ! 次は絶対に勝ってやる!!」


強大な呪いの魔剣を相棒に加え、俺たちの『未知なる食』と『魔王の足跡』を追う新たな旅が、今ここから始まろうとしていた。

71話2回目の投稿になってしまい申し訳ありません…。

明日は72話載せますね!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ