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神獣テイマーの異世界放浪記 〜未知なる食を求めて〜  作者: 葉山ローリエ
第二章:交易都市グランツ編 ~新たなる幻獣との出会いと、街を脅かす巨獣の影~
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第62話:食べるラー油と、キマイラの味?

極大の魔力砲によって冒険者が消し飛ばされた後。

俺は警戒を解かず、真っ二つに両断した『キマイラ』をアイテムボックスへと収納した。

(口封じをされたってことは、こいつの体からも何か情報が引き出せるかもしれないからな)

日没の時間が迫っていたため、俺は急いで空へ舞い上がり、闘技場へと帰還した。

 ◇ ◇ ◇

王都の闘技場。

生きて戻ってきた参加者は、1,000人以上いた中からわずか70人ほどにまで減っていた。


『これより、持ち帰った魔石の数と質による結果発表と、本戦出場者の選定を行う!!』


騎士団長の声が響く。

列に並びながら、俺は肩の上のリコに小声で尋ねた。


「なぁリコ。俺、あんまり目立ちたくないんだけど……魔石って何個ぐらい出せば、安全に予選を通れそう?」


「調べてみますわ」


リコは小さな瞳をチカチカと明滅させ、周囲の冒険者たちが持っている袋の中身を【索敵】で透視・解析していく。


「……一つだけ所持している者が50名ほどいますわね。リオンが所持している『Aランク魔石』を二つ提出すれば、上位陣には食い込まず、中堅の無難な位置で確実に通過でき、目立つことも少ないでしょう」


「おっ、サンキュー! さすがリコだ」


俺は言われた通り、アーマー・ブルともう一体のAランク魔石の二つだけを提出し、狙い通り無難な順位で予選を突破した。

大会の本戦は一週間後に開催され、対戦相手は前日に発表されるとのことだった。

 ◇ ◇ ◇

闘技場を出た俺は、冒険者ギルドが運営する巨大な解体所へと足を運んだ。

アイテムボックスの中に溜まりに溜まった魔獣たちの解体を依頼するためだ。


「おっちゃん、解体をお願いしたいんだけど」


「おう! ここに出しな……って、な、な、なんだこれはぁぁぁッ!?」


ドサァァァァァッ!!

俺がアイテムボックスから獲物の山を取り出すと、屈強な解体屋の親父が腰を抜かしてひっくり返った。

俺が予選で狩ったAランク魔獣の数々に加え、俺が修行している間にタンクとハクが森で狩りまくっていた獲物たち。


S級魔獣『ストーム・グリフォン』をはじめ、その亜種である『サンダー・グリフォン』、さらには凶暴な『マッド・グリズリー』や『ブレードホーン・ディア(剣角鹿)』など、ざっと20体以上が山積みになっていたのだ。


「ば、馬鹿野郎! こんな量、一気に解体できるわけねーだろ!」


「えっ、そうなの? とりあえず、急ぎで欲しい部位とかあるんだけど……」


「はぁ……。どれが急ぎなんだ?」


「えっとね、そのサンダー・グリフォンの肉と、そこの豚(黄金豚王)と、そのアーマー・ブルの肉をください」


俺が指差しながら注文すると、親父は青筋を立てて怒鳴った。


「お前なぁ、肉屋の店先みたいに注文すんじゃねぇよ!!」


「ご、ごめんって」


「素材は全部ギルドで買取かい?」


「いや、肉は全部持って帰ります。あとの素材は買取でお願いします」


呆れる親父だったが、リコが魔獣の山に『鮮度を保つ結界』を張ってくれたため、「これなら時間がかかっても大丈夫だ」とホクホク顔で解体を引き受けてくれた。

 ◇ ◇ ◇

夜。

王都で借りている宿屋の、広い裏庭。

俺が結界を張って中に入ると、待っていた従魔たちが一斉に集まってきた。


「ただいまー」


「きゅぴ! リオーン、おかえりー!」


真っ先にルーが飛びついてきて、俺の頬にスリスリと顔を擦り付ける。

『がはは! 無事に帰ってきて何よりだ! それで、美味そうな獲物は獲れたか?』

タンクが尻尾を振って期待の目を向けてくる。


『……リオン。何かあったようだな』


ハクだけは、俺の僅かな疲労と血の匂いを察知したのか、鋭い視線を向けてきた。


「鋭いな、ハク……ふふっ。まぁ、色々あったよ。とりあえず飯でも食いながら話すよ!」


「きゅぴぴっ! 今日はなにつくるのー?」


「今日はね、『バンバンジー』と『酢豚』を作るよ!」


俺は早速、調理器具を展開した。

まずは、コカトリスの極上胸肉をネギや生姜と一緒にしっとりと茹で上げ、手で細かく割いていく。

異世界で見つけたキュウリやトマトに似たみずみずしい野菜を千切りにして皿に敷き詰め、その上に割いた鶏肉を乗せ、特製の『濃厚ゴマだれ』をたっぷりとかければ、絶品バンバンジーの完成だ。

次は、黄金豚王ゴールデン・ボア・キングの豚バラ肉をカラッと揚げ、たっぷりの野菜と一緒に炒める。そこに甘酸っぱい特製の『甘酢ダレ』を絡ませて、照り照りの酢豚が完成!


「さあ、冷めないうちに食べようぜ!」


完成した料理をテーブルに並べると、一同は凄まじい勢いで食らいついた。


『むおぉぉっ! この豚肉、外はサクッとしているのに中はとろけるように柔らかい! 甘酸っぱいタレが肉の旨みを極限まで引き出しているぞ!』


「きゅぴーっ! このおバンバンジー、すごく柔らかくてゴマのソースが甘くておいしいのー!」


みんなが無我夢中で食べている途中、俺はニヤリと笑って小瓶を取り出した。


「バンバンジーはこのままでも美味いけど……俺は味変で、これをかける!」


それは、俺が密かに手作りしていた『食べるラー油』だ!

従魔たちも食べやすいように辛味はギリギリまで抑え、ごま油の香ばしさと、フライドガーリックやフライドオニオンのザクザクとした食感を極限まで高めた自信作である。

俺がバンバンジーの上にそれをたっぷりとかけると、ガーリックの食欲をそそる香りが弾けた。


「ルーもかけてみるか?」


「きゅぴ! かけるー!」


食べるラー油をかけたバンバンジーを口に入れた瞬間、ルーの耳がピーンと立った。


「おいしーーっ!! なにこれ、中に入ってるカリカリしたやつ(ガーリックチップ)の食感がすっごく楽しいのぉ!」


『がはははっ! こりゃあヤベェ! ごま油の風味とカリカリの食感で、肉もご飯も無限に腹に入っていくぞ! 止まらねぇ!』


タンクは食べるラー油の魔力に取り憑かれ、一心不乱にご飯を掻き込んでいる。

一方、ハクとリコは上品に『酢豚』の方を気に入り、何度もおかわりをしていた。

 ◇ ◇ ◇

食後の温かいお茶を飲みながら、俺は今日の森での出来事――キマイラのことや、蛇と融合した人間が口封じに殺されたことをみんなに話した。


『ふむ……何やらきな臭くなってきたな』


タンクが腕(前足)を組んで唸る。


『少し警戒が必要だな。俺たちも周囲の情報を集める方がいい』


ハクがスッと立ち上がると、彼の影がぐにゃりと歪み、そこから彼と全く同じ姿をした三体の『影分身』が音もなくスッ……と現れた。


『王都に怪しい動きがないか、探ってくる』


影分身たちは一切の音を立てず、夜の闇へと溶け込むように消えていった。


「すげー……ハク、忍者みたいだ」


俺が感心していると、リコが肩をポンと叩いた。


「リオン、先ほどのキマイラと魔石を出してくださる?」


「お、おう」


俺が裏庭に真っ二つになったキマイラを出すと、リコが目を細めて【解析】と【鑑定】の魔法を重ね掛けした。


「……やはり。このキマイラを作った者の『魔力の残穢』が微かに残っていますわね。これは……人間ではない、別の種族のようです」


「別の種族?」


「ええ。この魔力の波長……どこかで感じたことがあるような……」


リコは小さな顎に手を当てて考え込んだが、やがて首を振った。


「まぁ、今ここで考えても仕方がありませんわね。ハクの分身からの情報も待ちましょう。今日はもう寝るとしますわ」


「そうだな。予選で結構疲れたし……」


俺が伸びをしながら片付けを始めようとした、その時。

「あ、そうだ。言い忘れていましたけど、このキマイラ、問題なく食べられますわよ?」


「…………え?」


俺は、獅子の顔、山羊の胴体、蛇の尻尾を持つ、おぞましいキマイラをまじまじと見つめた。


「……これ、食べんの? えぇ……」


『がははっ! どんな味がするのか楽しみだな! リオン、明日の朝飯はキマイラステーキで頼むぜ!』


「きゅぴーっ! わたしもたべるー!」


満面の笑みでリクエストしてくるタンクとルーを前に、俺は引きつった笑いを浮かべるしかなかった。

(キマイラ……どうやって調理すればいいんだよ……)

未知なる食への探求は、時として残酷である。

俺は頭を抱えながら、異世界の食材の奥深さに震えつつ、眠りにつくのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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