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神獣テイマーの異世界放浪記 〜未知なる食を求めて〜  作者: 葉山ローリエ
第一章:最弱テイマーの規格外な旅立ち 〜最強の神獣たちとの出会い〜

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第6話:極上スイーツの完成と、新たなる旅立ち

村長さんの家の軒先にあの果実を吊るしてから、一週間が経った。

初めはパンパンに張っていたオレンジ色の皮は、すっかり水分が抜けてシワシワになり、表面にはうっすらと白い粉が吹いている。


「……うん、いい感じに干し上がったな」


『ふふっ。私の演算通りです。太陽の光と風によって渋み成分が完全に不溶化し、内側の糖度が極限まで凝縮されています。今がまさに食べ頃かと』

肩に乗ったリコが、お髭をピクピクと揺らしながら喉を鳴らす。

俺は吊るしていた紐を解き、一つ手に取って半分に割ってみた。


「おお……っ」


外側は少し歯ごたえがありそうだが、内側からは黄金色に輝く、ゼリーのようにとろりとした果肉が顔を出した。

俺は躊躇なく、それをパクリと口に放り込む。


「……っ!! な、なんだこれ、めちゃくちゃ美味いぞ!?」


噛んだ瞬間、濃厚で上品な甘みが口いっぱいに爆発した。

元々が強烈な渋みを持っていたからだろうか。日本の干し柿に似ているが、それよりも遥かに甘みが強く、それでいて後味はスッキリしている。高級な和菓子をそのまま食べているような、極上のスイーツに変貌していた。


「村長さん! 出来ましたよ、食べてみてください!」


「む? おお、ついに出来たか。しかし、あれほど渋かったものが本当に……」


半信半疑の様子で、村長さんが干し果実を口に運ぶ。

数秒後。

村長さんは目を見開き、わなわなと震えながらその場にへたり込んだ。


「あ、甘い……! 甘いぞおぉぉっ!! あの悪魔のように渋かった果実が、王都の貴族が食べるような甘露に変わっておる!!」


「ははっ、大成功ですね」


大騒ぎする村長さんの声を聞きつけ、村人たちが次々と集まってきた。

小さく切り分けた干し果実が配られると、あちこちから「美味い!」「信じられない!」という歓声が上がる。

未知なる異世界の食材が、俺の知識と料理の腕で新しい『美味しさ』に生まれ変わる。

そして、それを食べた人たちが満面の笑顔になってくれる。

これが、料理人として一番嬉しい瞬間だ。


『……リオン。私の分は? 早く、早くわたくしの口にもその至高の甘味を!』


「はいはい、分かってるって」


俺が小さくちぎった果肉を差し出すと、リコは前足で器用に受け取り、うっとりとした顔で頬張った。

◆ ◆ ◆


村の特産品は、これにて見事に大化けした。

そしてもう一つの懸案事項だった、畑を荒らす魔物の問題。

これも、ブラッドホースが約束通り完璧な仕事をしてくれていた。


「この一週間、本当に魔物が一匹も寄り付かなかったな」


俺が村の外れにある畑を眺めていると、背後から『ブルルッ』と誇らしげな鼻息が聞こえた。

振り返ると、足の怪我がすっかり完治したブラッドホースが立っている。


「ありがとうな。お前が畑の周りをマーキングして守ってくれたおかげだよ」


俺が首筋を撫でてやると、頭の中に、以前よりも少しだけハッキリとした声が響いた。


『……あるじ、の、おかげ。……おれ、この村、ずっと守る』


「そっか。ここはお前の新しい縄張りになったんだな。頼りにしてるよ」


【魔を知る者】の進行度が9%になったことで、魔物の感情が言葉として伝わってくる。

力で支配するのではなく、お互いの優しさで結ばれた絆。

それが、こんなにも心地よいものだとは知らなかった。

ブラッドホースと別れ、俺は改めて村の畑を見渡した。

魔物の脅威は去り、特産品も甘く美味しくなった。だが……。

(……やっぱり、日本の畑とは土の質もうねの作り方も全然違うな)


俺の目から見ても、土が少し痩せているように感じる。

もっと土壌を良くして、効率のいい育て方をすれば、あの果実も野菜もさらに美味しくなるはずだ。

(でも、俺は料理を作る専門であって、農業にはあんまり詳しくないからな……。文化的な違いもあるだろうし、俺一人じゃこれ以上はどうにもできないか)


せっかくの美味しい食材が育つ場所だ。

もっと作物が育ちやすい環境を作ってあげたいが、今の俺にはその知識がない。

(いつか旅の途中で、土や植物を育てることに詳しい仲間――それこそ、農家顔負けの魔物なんかに巡り会えたら、めちゃくちゃ面白いことになりそうだな)


まだ見ぬ未来の仲間に思いを馳せながら、俺は小さく笑った。

◆ ◆ ◆


その日の午後。


「リオン殿! この村を救ってくれたこと、本当に感謝してもしきれん! これは少ないが、村のみんなで出し合ったお礼じゃ!」


村の入り口で、村長さんはじめ村人全員が見送りに来てくれた。

渡されたずっしりと思い革袋には、旅の資金となるお金と、あの干し果実がたっぷり詰まっていた。


「ありがとうございます。干し果実は長持ちするから、旅の保存食にぴったりで助かります」


「いつでもこの村に帰ってきてくれよ!」


「ありがとう、リオン兄ちゃん!」


温かい声援を背に受けながら、俺は村を出発した。

目指すは、ここから数日の距離にあるという大きな街。


「さあ、次はどんな未知の食材と、美味い料理が待っているかな」


『ふふっ。私の【森羅の叡智】とあなたの料理の腕があれば、この世界のすべての美食は私たちのものです』

肩の上で得意げに笑うリコと共に、俺の異世界放浪メシの旅が、今、本格的に幕を開けた。

(第一章・第1部 完)

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