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神獣テイマーの異世界放浪記 〜未知なる食を求めて〜  作者: 葉山ローリエ
第二章:交易都市グランツ編 ~新たなる幻獣との出会いと、街を脅かす巨獣の影~
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第35話:小さな勇者の決意と、森の覇者

(カーバンクル視点)

僕は森の奥深くに住む、臆病な魔獣だ。

額にある赤い石のせいで、昔からいろんな怖い魔物や人間に追いかけられてきた。だから、いつも隠れてビクビクしながら生きている。

数日前、氷の洞窟の近くで、小さくて可愛いのにすごい魔力を持ってる子と、ツノの生えた強そうな大きな子、それにかっこいいけど少し怖い白い虎を連れた人間を見た時も、僕は岩陰に隠れて震えていた。

みんな、僕と同じかそれ以上に『特別な魔獣』だって、なんとなくわかったから。

でも……あの人間は違った。僕を捕まえようとするどころか、僕が落としてしまった宝物の赤い石と一緒に、僕が育てていた野菜を、そっとそこに置いていってくれたのだ。

あの優しい人間は、僕が育てたこの野菜のことを『人参ニンジン』と呼んでいた。

僕は今、あの人間が置いていってくれた場所に戻り、大切に育てたその野菜を両手で抱えてかじっていた。


「きゅっ……きゅむ、きゅむ……♪」


甘くて、シャキシャキして、本当に美味しい。

あの人間の笑顔を思い出しながら食べていると、ふいに、森の空気が「ビリッ」と震えた。

ドシンッ……! ドシンッ……!

地面が揺れ、木々がへし折れる不吉な音。

僕は全身の毛を逆立て、慌てて近くの岩陰に飛び込んだ。

森の奥から姿を現したのは、見上げるほど巨大な緑色の鱗を持つ怪物――この森の絶対的な覇者、『フォレストドラゴン』だった。

最近、森の奥でずっと暴れていて、他の魔物たちを追い出している張本人だ。


(見つかったら食べられちゃう……!)


僕は岩陰で、ギュッと目を閉じて震えていた。

どうか、このまま通り過ぎて……!

だが、ドラゴンは僕の隠れている岩のすぐ近くで立ち止まると、大きな鼻をフンフンと鳴らした。

その視線の先にあるのは……僕がさっきまで食べていた、あの野菜だった。

ドラゴンは僕には見向きもせず、その巨大なあぎとを開き、僕が一生懸命育てた野菜ごと地面を喰いちぎろうとした。


(あ、ダメ……っ!)


体が勝手に動いていた。


「きゅいぃぃぃぃっ!!」 


僕は岩陰から飛び出すと、野菜とドラゴンの間に立ち塞がり、両手を広げた。

ガチィィィンッ!!!!

額のルビーが強く輝き、僕の固有スキルである【絶対防御イージス・シールド】が展開される。

ドラゴンの巨大な牙が透明な壁に激突し、激しい火花が散った。


「……グルルルルッ!?」


獲物を邪魔されたドラゴンが、怒りに満ちた咆哮を上げる。

怖い。すごく怖い。足はガクガクに震え、尻尾は股の間に丸まっている。


(これは、僕が育てた大切な野菜なんだ……あの人間が、僕に残してくれたものなんだから……っ!)


僕は必死に魔力を振り絞り、結界を維持した。

怒り狂ったドラゴンが、丸太のような太い尻尾で結界を何度も打ち据える。

本来、僕の【イージス・シールド】は物理的な力で破られることはない。どんな攻撃も確実に弾き返していた。

しかし――。


(怖い……怖いよぉ……っ!) 


圧倒的な暴力と殺気を前に、僕の心が限界だった。

恐怖で頭が真っ白になり、結界を維持するための魔力がうまく練れなくなっていく。

フッ……と僕の集中が切れた瞬間、展開されていた光の結界が、嘘のように消え去ってしまった。


「きゅ……っ」


無防備になった僕に向かって、ドラゴンが容赦なく巨大な爪を振り下ろす。

僕はギュッと目を閉じ、あの優しい人間の顔を思い浮かべた。

――その時だった。


『間に合った……!』


シュンッ!!!!

突風のような音と共に、何かが信じられない速度で僕の前に割り込んだ。


「……きゅ?」 


恐る恐る目を開けると、そこには見覚えのある背中があった。

あの、優しい人間リオンだ。


「ギギギギッ……!!」


彼は鉄の剣で、ドラゴンの巨大な爪を受け止めていた。


「くっ、さすがに重いな……! この剣じゃ、長くは保たないか……!」


彼の腕力がドラゴンの力に拮抗しているものの、武器そのものが限界を迎えていた。ピキッ、と鉄の剣に嫌なひび割れが走る。

人間は素早く後ろへ飛び退きながら、叫んだ。


「リコ! タンク! ハク! こいつを頼む!」


『お任せを!』


『がははっ! 任せとけ!』


人間が声をかけると、森の奥からあの小さくて可愛い子とツノの生えた大きな子が飛び出してきて、僕を庇うように立ち塞がった。

さらに、あの時一緒にいた、かっこよくて少し怖い『白い虎』までが、涼しい顔で歩み出る。


「ふん。図体ばかりでかくて、魔力はスカスカのトカゲだな」


白い虎が鼻で笑うと、ドラゴンは明らかに怯んだように一歩後ずさった。


「ケガはないか? 逃げずに、よく頑張ったな」


人間リオンが振り返り、僕に向かって優しく微笑みかけてくれた。

その温かい手に頭を撫でられた瞬間、僕は張り詰めていた糸が切れ、「きゅ〜……」とその場にへたり込んでしまった。


「こいつが森の魔物たちを怯えさせていた原因か……! 少し武器が不安だが、このまま一気に討伐するぞ!!」


人間の力強い声が、森に響き渡った。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白い!」「神獣たちが可愛い」「続きが読みたい!」と少しでも思っていただけましたら、

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