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神獣テイマーの異世界放浪記 〜未知なる食を求めて〜  作者: 葉山ローリエ
第二章:交易都市グランツ編 ~新たなる幻獣との出会いと、街を脅かす巨獣の影~
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第32話:ギルドの激震と、深森の調査依頼

ロレンスさんに極上のスイーツを作る約束をした俺は、「市場での買い出しと、道中で倒した魔物をギルドに報告してきます」と伝え、一旦商会を出て冒険者ギルドへと足を運んだ。


街中で騒ぎにならないよう、ハクには【神隠し】のスキルを使って俺の影の中に潜んでもらっている。

ギルドの扉を開けると、昼間から酒を飲む荒くれ者たちや、クエストを探す冒険者たちで賑わっていた。

俺はまっすぐ買取カウンターへと向かい、受付嬢に声をかけた。


「すみません、討伐報告と素材の買取をお願いしたいんですが」


「はい、お疲れ様です! 冒険者カードと討伐部位を出していただけますか?」


笑顔で応じる受付嬢にカードを渡しつつ、俺はマジックバッグからドサァッ! と巨大な熊の死骸を取り出して、ギルドの床に横たえた。


「ひっ……!?」


「なっ……なんだあれは!?」


その規格外の大きさと、死してなお放たれる強者の威圧感に、ギルド内が一瞬にして静まり返る。

受付嬢は震える手で図鑑を確認し、信じられないものを見るような目で俺を見た。


「こ、これはBランク魔物の【ディープ・フォレストベア】……!? そ、それに、カードの等級はE級……しかも、パーティーを組んでいないソロのテイマー、ですって……!?」


彼女の叫び声に、周囲の冒険者たちがざわめき始める。


「おいおい、嘘だろ? E級のテイマーが一人でBランクの主を倒せるわけねぇ!」


「……いや、待てよ。そういえば最近、Bランクの『シェル・タランチュラ』を単独で討伐した規格外のテイマーがいるって噂を聞いたことがあるぞ……。まさか、こいつが?」


「馬鹿言え! いくらなんでもこんな子供が……どうせ罠か何かに運良くかかったんだろ!」


冒険者たちが疑いの目を向けてくる中、ギルドの奥からドスドスと重い足音が響いてきた。


「騒がしいぞ! いったい何の騒ぎだ!」


現れたのは、顔に大きな傷跡がある筋骨隆々の大男。この交易都市グランツのギルドマスターだった。


「ギ、ギルドマスター! 実はこのE級のテイマーが、ディープ・フォレストベアをソロで討伐したと……」


「なんだと? ……お前が、これを一人でやったというのか?」


ギルドマスターの鋭い眼光が俺を射抜く。

俺が「従魔たちと一緒に倒しました」と素直に答えると、彼は短く息を吐き、俺の目をジッと見つめた。


「……嘘をついているようには見えんな。ならば、俺の【鑑定眼】で直接確かめさせてもらう」


ギルドマスターの瞳が一瞬だけ金色に輝いた。

上位の冒険者やギルドの重鎮だけが持つ、対象の真のステータスを暴く希少スキルだ。

だが次の瞬間。


「――なっ!?」


ギルドマスターは目を見開き、一歩、二歩と後ずさりをした。

その顔からは一気に血の気が引き、滝のような冷や汗がドッと吹き出している。


「ば、馬鹿な……攻撃力1200……敏捷性3000、だと……!? 防御力に至っては8500……!? それに、この肩に乗っているネズミと、牛の魔獣……信じられん、なんだこの規格外の魔力量は……!!」


「えっと……ギルドマスター?」


俺が声をかけた、その時だった。


『……我がマスターを疑う痴れ者はどこだ?』


俺の足元の影がヌルリと歪み、そこから気高く美しい白き神獣――ハクが音もなく姿を現した。

ギロリと青白い瞳でギルド内を睨みつけるハク。その絶対的な強者の威圧感と、空気を凍らせるような神聖な魔力に、ギルドマスターを含めた全員が息を止めて硬直した。


「ひっ……!?」


「し、神獣……白虎……!?」


「ちょ、ハク! 急に出てきたらみんな腰を抜かすって……」


俺が苦笑いしながらハクの白い毛並みを撫でると、ハクは「ふん、つまらん」と鼻を鳴らし、堂々と俺の隣に腰を下ろした。

伝説の神獣が、まるで大人しい飼い猫のように俺に寄り添っている。その光景に、ギルド内は水を打ったように静まり返っていた。


「お、お前……いったい何者なんだ……。Sランクの英雄ですら、こんなデタラメな数値は見たことがないぞ……それに今の神獣は……」


あの歴戦のギルドマスターが、震えながら敬語を使っているのだ。俺の討伐が不正ではないことなど、誰の目にも明らかだった。


「信じてもらえましたか?」


「あ、ああ……。疑ってすまなかった。このステータスなら、Bランクの熊など赤子を捻るようなものだろう。……だが、一つ聞かせてくれ。この魔物はどこで倒した?」


ギルドマスターが真剣な表情で問いかけてくる。


「グランツの街に向かう途中、森の入り口付近です。突然、木をなぎ倒して飛び出してきまして」


「森の入り口だと……!? このディープ・フォレストベアは、本来なら森の最奥から絶対に動かないヌシだぞ。それがなぜ……」


俺の肩の上で、リコがピンと髭を揺らして念話を送ってきた。


『ギルドマスターの言う通りですわ。あの熊の様子は、怒りというより恐怖に駆られているようでした。おそらく、森の奥深くで何か『とてつもない異変』が起きており、それに怯えて住処を追われたのだと推測しますわ』


「……うちの従魔の推測ですが、森の奥で何か異常事態が起きていて、この熊はそこから逃げてきたんじゃないかって」


俺がリコの言葉をそのまま伝えると、ギルドマスターは顎髭を撫でながら深く頷いた。


「俺も同意見だ。これは街の危機に関わるかもしれん。……リオン、お前にギルドから正式な『指名依頼クエスト』を出したい。後日、森の奥地の調査に向かってはくれないか?」


「調査、ですか。まあ、俺たちで良ければ構いませんよ」


「恩に着る。この調査が終われば、お前の等級も大幅に見直させてもらう。お前のような実力者をE級のままにしておくのは、ギルドの恥だからな」


こうして俺は、森の奥地への調査依頼を引き受け、晴れてランクアップの確約まで手に入れることになった。


「あ、そうだ。この熊の素材は買い取ってほしいんですが、『肉』だけはギルドの解体屋さんに頼んで綺麗に切り分けてもらえませんか? 今夜、どうしても熊鍋にしたくて」


「く、熊鍋……? ああ、わかった。解体には少し時間がかかるから、後で取りに来てくれ」


「ありがとうございます! それじゃあ、解体してもらってる間に、市場へ果物を買いに行ってきますね!」


ギルドマスターや周囲の冒険者たちが呆然と見送る中、俺は堂々と歩くハクを引き連れて、ホクホク顔でギルドを後にした。

さあ、みんなに極上のアイスクリームをご馳走するため、市場で珍しい果物を探すぞ!

いつも読んで頂きありがとうございます。

ブックマークをしてくれる人が増えてきて大変嬉しく思っています。

現在投稿中の第二章ですが、執筆自体はすでに章の最後まで完了しています。

後半はバトル要素が多くなっていますので、楽しみにしていてください!

現在、第三章の制作に取り掛かっています。


ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、毎日の執筆の何よりのモチベーションになります!

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