第22話:立ち往生した馬車と、頼れる代車
いつも本作をお読みいただき、本当にありがとうございます!
本日から【第二章】のスタートとなります。
連載を始めてから、日に日に作品を見てくださる方が増えており、驚きと共に感謝の気持ちでいっぱいです。皆様の貴重な時間をこの作品に使っていただけること、本当に嬉しく、毎日の執筆の何よりの励みになっています。
第二章でも、リオンと従魔たちの賑やかな旅と美味しいご飯をお届けしていきますので、引き続き楽しんでいただけたら幸いです!
城塞都市リバニアを出発し、俺たちは次の目的地である交易都市へと続く街道を歩いていた。
「ん? なんだあれ」
しばらく進むと、街道の真ん中で立派な装飾が施された大型の馬車が止まっているのが見えた。
そばには身なりの良いふくよかな初老の男と御者の若者、そして武装した3人の冒険者たちが立ち尽くし、馬車の前に繋がれた馬の足元を見て途方に暮れている。
どうやらトラブルのようだ。俺は二匹を連れて近づいてみた。
「あの、どうしたんですか?」
俺が声をかけると、護衛らしき冒険者たちが一斉にこちらを振り向き、俺の隣を歩くミニバンほどの大きさのタンクを見て、血相を変えて武器を構えた。
「ひぃっ!? ま、魔獣だ!! 警戒しろ!!」
「あ、すいません! この子は俺の従魔なんです。襲ったりしないので安心してください」
俺が慌ててテイマーの冒険者プレートを見せると、冒険者たちと初老の男は巨大なタンクを見上げてポカンと口を開け、やがてスッと武器を下ろして胸を撫で下ろした。
「心臓が止まるかと思ったぜ。しかしこんな魔獣をテイムできるやつがいるとは…」
「驚かせてしまってすみません。何か困っているんですか?」
俺が尋ねると、初老の男が前に出てきて事情を説明してくれた。
「いやはや、驚きました……。実は、急に飛び出してきた魔物を避けようとした際、馬が足を捻ってしまいまして。護衛の方々が魔物は討伐してくださったのですが、回復魔法を使える者がおらず、馬車を引けなくなってしまったのです」
見れば、美しい毛並みの馬が辛そうに前足を浮かせて荒い息を吐いていた。
『ふむ。少し捻っているようですね。私の光魔法で治してあげましょう』
肩に乗っていたリコがピョンと馬の背に飛び乗り、淡い光を放つ魔法をかけた。
すると、痛がっていた馬の呼吸がスッと落ち着き、しっかりと四本足で立てるようになった。
「おおっ!? 治った! 獣が、無詠唱で回復魔法を……!?」
「す、すげえ……」
男と冒険者たちが目をひん剥いて驚愕する。だが、俺は馬の様子を見て首を横に振った。
「痛みは引いたみたいですけど、まだ足に力が入らないみたいですね。無理に馬車を引かせたら、またすぐに痛めてしまいますよ」
「そ、そんな……。急いで街に戻らなければならないというのに……」
再び絶望する男。すると、それを見ていたタンクが『任せな!』とばかりに大きく前に出た。
『がははっ! 兄ちゃん、あの馬の代わりに俺がこの箱を引いてやるぜ!』
「え、いいのかタンク?」
『おうよ! 準備運動にもならねぇくらいだがな!』
そう言うと、タンクは馬車を引きやすいように、自分の体をスッと馬と同じくらいのサイズにまで縮めてみせた。
俺は御者の若者に手伝ってもらい、馬から外した手綱と牽引具を、タンクの頑丈な胴体へとしっかりと括り付けた。馬は馬車の後ろに繋いで、ゆっくり歩かせて休ませることにした。
「あの、本当に大丈夫なのでしょうか……?」
「ええ、うちのタンクの力なら余裕ですよ。皆さんも乗ってください」
男と冒険者たちは半信半疑の様子だったが、いざ出発してみると、その疑念は一瞬で言葉を失うほどの驚きへと変わった。
「こ、これは……なんという力強さ! それに揺れが全くないだと……!?」
土の属性を持つタンクの足腰の安定感は凄まじかった。
巨大な馬車を引いているのに全く重さを感じさせないスピードで進み、しかも轍の凹凸すらも吸収してしまうため、馬車の中は驚くほど快適だった。
俺は男や冒険者たちと一緒に馬車の中に揺られながら、自己紹介を交わした。
「改めて、助けていただき本当にありがとうございます。私はロレンスと申します。しかし……リオン様はテイマーとのことですが、あれほど強力な魔獣を従えているとは」
ロレンスさんが感心していると、同乗していた護衛の冒険者の一人が、ハッとしたように声を上げた。
「テイマーで、その白いネズミと、とんでもない怪力の魔獣……。おい、お前、もしかして最近ギルドで噂になってる『史上初のテイマーの冒険者』か!?」
「え? 俺の噂、もう流れてるんですか?」
「ああ! 冒険者ギルドができて以来、初めてテイマーで登録された新人がいるって、冒険者の間じゃちょっとした話題になってるぜ。しかも、こんな高位の魔獣を連れてるなんてな。まさか、本物に会えるとは……!」
興奮気味に語る冒険者たちの言葉に、俺は少し照れくさくなりながら頭を掻いた。
「はは、運が良かったんですよ。俺、もともと料理人でして。色んな街を旅しながら、まだ見ぬ未知の食材を見つけて、美味しい料理を作りたいんです。……そういえば、次の街ってどんな所なんですか?」
俺が尋ねると、ロレンスさんが嬉しそうに身を乗り出して教えてくれた。
「次の街は、巨大な交易都市ですよ。周辺の国々からあらゆる物資が集まるため、見たこともないような珍しい食材や、冒険に必要な武具、アイテムなどが豊富に揃っています。我々商人の護衛任務も多いため、凄腕の冒険者たちが一番多く集まる活気ある街なのです」
「世界中の食材が集まる街……! それは楽しみだな」
料理人としての血が騒ぐ。
「リオン様。実は私、その交易都市を拠点とする商会の責任者を務めておりまして。もしよろしければ、このご恩返しとして、必要な物があれば何でも用意させていただきます。それに……もし道中で珍しい魔物の素材などを手に入れておられましたら、ぜひ私どもに買い取らせていただけないでしょうか?」
「本当ですか? ちょうど昨日、大きめの獲物を狩ってきたところなんです。街に着いたら、ぜひ買い取ってください」
「おお、それは楽しみです!」
頼もしい商人のコネができ、俺はホクホク顔で頷いた。
やがて、タンクの驚異的なペースのおかげで、予定よりもずっと早く、巨大な防壁に囲まれた活気あふれる交易都市の正門が俺たちの目の前に見えてきた。
いよいよ第二章が始まりました!
ここまでお付き合いいただいている皆様、本当にありがとうございます。
最近、本作を読んでくださる方がどんどん増えており、作者としてこれほど嬉しいことはありません。数ある作品の中から本作を見つけ、皆様の貴重な時間を割いて読んでいただけていることに、心より感謝申し上げます。
第二章では、新たな出会いや未知の食材、そして王都への旅立ちと、さらに物語が大きく動いていきます。これからも皆様に「読んでよかった」「次も読みたい」と思っていただけるよう頑張りますので、リオンと従魔たちの冒険を温かく見守っていただけると嬉しいです。
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