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神獣テイマーの異世界放浪記 〜未知なる食を求めて〜  作者: 葉山ローリエ
第一章:最弱テイマーの規格外な旅立ち 〜最強の神獣たちとの出会い〜

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第14話:初めての殺意と、泥臭い勝利

洞窟の奥へと進むにつれて、肌を刺すような乾燥した空気が強くなってきた。


「それにしても、なんでこの洞窟はこんなに乾燥してるんだ? 外はあんなに湿気が多かったのに」


『それは、この洞窟の岩壁に秘密があります。ここには大気中の水分を強力に吸収する特殊な鉱石が群生しているのです』


リコの解説を聞いて岩肌をよく見ると、確かに無数の小さな穴が空いた、軽石のような灰色の岩があちこちに露出していた。


(水分を吸収する石……これ、地球でいうシリカゲルみたいな乾燥剤として使えるんじゃないか?)


料理人の直感が働き、俺は古剣の柄で岩を少しだけ砕き、欠片をいくつか革袋に回収した。乾物や香辛料の保存に役立つかもしれない。


「なぁ、タンク。この奥にいるロックリザードって、お前とどっちが強いんだ?」


『がははっ! 冗談きついぜ兄ちゃん。あんなただのデカいトカゲ、俺の足の裏で軽く踏み潰せるに決まってるだろ!』


それを聞いて、俺はホッと胸を撫で下ろした。

最悪の事態になってもタンクがいれば大丈夫だ。これまでの経験からいっても、きっとなんとかなる。

そう思っていた矢先だった。


『リオン。勘違いしないでくださいね。今回の戦い、わたくしもタンクも、一切の手助けはしませんよ』


俺の肩からピョンと降りたリコが、真っ直ぐに俺を見上げて宣告した。


「え……? 嘘だろ、なんで?」


『あなたには圧倒的に【実戦経験】が足りていません。強大なステータスを持っていても、それを扱う心が伴わなければ、いつか必ず致命的な隙を生みます。万が一、私たちがあなたを守護しきれない事態が起きた時のために……ここはあなた自身で乗り越えなさい』


リコの厳しい、けれど俺の未来を心から案じている言葉に、俺はゴクリと生唾を飲んだ。

戸惑いはあったが、言っていることは正しい。


「……分かった。俺一人でやってみる」


やがてたどり着いた最奥の広大な空間。

そこに鎮座していたのは、俺の想像を遥かに超える巨大で恐ろしい魔物だった。

全長5メートルはあろうかという巨体。全身を覆う鎧のような岩の鱗。

『ロックリザード』は侵入者である俺に気づくと、黄色く濁った瞳をギョロリと向けた。


「シャァァァァァッ!!」


空気を裂くような威嚇音と共に、巨大な岩の塊が信じられないほどの速度で突進してきた。


「うわっ……!?」


俺の体が硬直した。

これまで、地球の動物園の猛獣すら俺に懐いてきた。動物に好かれることはあっても、「純粋な捕食目的の殺意」を向けられたことなんて、33年間の人生で一度もなかったのだ。

初めて感じる『生き物からの明確な殺意』。

恐怖で足がすくみ、体が全く動かない。

ドゴォォォォンッ!!!

ロックリザードの太い尻尾が、俺の胴体にモロに直撃した。


「ガッ……!?」


ボールのように弾き飛ばされ、洞窟の壁に激突する。

タンクから共有された【防御力:8500】のおかげで、肉体的なダメージは無いに等しいはずだ。だが、初めて味わう死への恐怖が、激しい幻痛となって俺の精神をパニックに陥れていた。


「くそっ、このっ……!」


立ち上がり、向かってきた鼻先に古剣を振り下ろす。

ガィィィンッ!

だが、ロックリザードの岩の鱗は異常に硬く、剣は虚しい音を立てて弾き返されてしまった。


「ダメだ、剣が通じない……っ!」


その後もロックリザードの猛攻は続き、俺はただ防戦一方に追い込まれていく。

恐怖で息が上がり、心が折れそうになる。


(痛い……怖い。もう無理だ、タンクに助けてもらおう……)


そう思い、視線を向けた先。

少し離れた場所から、リコとタンクが、祈るような真剣な眼差しで俺を見守っていた。

――俺は、どうしてこの世界に来たんだっけ。


『ファンタジーな世界で、見たこともない未知の食材を使って料理をしてみたい。色んな場所を旅して、世界中の美味いものを集めて、最高のご飯を誰かと分かち合う』


それが、俺の望んだ夢じゃなかったのか。


(こんなところで、こんなデカいトカゲ一匹にビビって……終わってたまるかよ……っ!)



俺は折れかけた心を奮い立たせ、力強く大地を踏み締めた。


(……あれ?)


踏み込んだ瞬間、気づいた。

痛くない。ボコボコにされたはずなのに、体にはかすり傷一つついていないのだ。

タンクの圧倒的な防御力が、俺を完璧に守ってくれている。

絶対的な仲間の加護を実感したことで、恐怖が生み出していた幻の痛みがスッと引いていくのが分かった。


(いける……っ!)


「グルルルルッ!!」


俺が戦意を取り戻したのを見て、ロックリザードが苛立ったように大口を開け、今日一番の速度で一直線に突っ込んできた。

その瞬間、俺はエイミーに教わった光魔法のイメージを限界まで練り上げた。


「眩しいのは、嫌いだろ……っ! 『閃光弾フラッシュ』!!」


カッ……!!!!!

俺の掌から、太陽が爆発したかのような強烈な光が放たれた。

暗い洞窟に慣れていたロックリザードは完全に視界を奪われ、「ギャァァァッ!?」と苦悶の声を上げて突進の勢いを鈍らせる。

今しかない。

俺は一気に距離を詰め、弾かれた古剣を捨てて、両の拳を固く握り締めた。

タンクから共有された【攻撃力:580】の腕力。

それを、ロックリザードの胸元の岩鱗に向かって、渾身の力で叩き込む。


「うおおおおおおおおっ!!!!」


メシャァァァァァッ!!!

規格外の腕力が、分厚い岩の装甲を粉砕した。

ひび割れ、剥がれ落ちた鱗の下から、柔らかい生身の肉が剥き出しになる。

俺はすかさず地面に落ちていた古剣を拾い上げ、剥き出しになった弱点へと、ありったけの力を込めて深く、深く突き刺した。


「ギ……、ギャァァァァァッ…………」


ロックリザードは大きく仰け反った後、ドスーンと地響きを立てて倒れ伏し、二度と動かなくなった。

ピコンッ!


【ロックリザードの討伐を確認しました】

【実技試験のクリア条件を満たしました】

【リオンのレベルが上がりました】


無機質なシステム音が鳴り響いた瞬間。

俺の体から一気に力が抜け、その場に膝から崩れ落ちた。


「はは……ははっ……勝った。俺、勝てたぞ……」


恐怖と幻痛、そしてそれを乗り越えた安堵と達成感。

気づけば、俺の目からはボロボロと涙が溢れ出していた。33歳の大人げない涙だ。


『リオン!』


『兄ちゃん!』


リコとタンクが慌てて駆け寄ってくる。

タンクは巨大な鼻先で俺の頬の涙を優しく拭い、リコは俺の胸元に飛び込んできた。


『よく頑張りましたね、リオン。あなたなら、絶対に一人で乗り越えられると信じていましたよ』


『おうよ! 見ていてハラハラしたが、最後の一撃は最高にカッコよかったぜ、兄ちゃん!』


頼れる相棒たちの温かい言葉に、俺は涙を拭いながら、これ以上ないほど晴れやかな笑顔を浮かべた。

最後までお読みいただきありがとうございます!


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明日も更新しますので、よろしくお願いいたします!


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