その頃のフィンたち3
忙しい振りをするためにだけに、午前中に仕事をねじ込んでそれらを片付けていたフィンは、目の前で急かすような視線を向けて来る弟妹に目を合わせないようにしていた。
やる気に満ち満ちたシエルとメーアは、いつもなら逃げ出してやる気のなさにかなりの時間がかかってしまう勉強を、今日は短時間で終わらせたらしい。
やれば出来るというのなら、いつもこうしてさっさとやってくれたらいいのにとフィンは思う。
それと同時に言うことの聞かないこの弟妹を上手いこと操るレンに対して改めてそのすごさが分かる。
準備と称した手伝いをさせられているのであろうレンがここにいない今、シエルとメーアを部屋から追い出す術がほぼないのも事実なのである。
鬱陶しい視線に耐えながら自分でやると言い出した仕事を片付けていると、3人分の昼食をレンが運んできた。
戻るついでなので持ってきたらしい。勉強を早く終わらせたらしいシエルとメーアはフィンの部屋にいるだろうと推測もあったので3人分。
急ぐものでもないと分かっているレンはテキパキと昼食の準備をしていく。
どうせなんだかんだと言いながらもフィンは双子と一緒に食事をするだろうから。
「お待たせ致しました」
書類を書く手を止めたフィンはため息を吐くと食事の用意されたソファの前に座って、シエルとメーアと一緒に食事を摂り始める。
昼食後、ジルを置いて厨房を向かったフィンたちはクッキー作りに取り掛かった。
シエルとメーアがそれぞれ昨日フィンたちが長時間かけて見つけ出したリクエスト通りの型を使って生地を抜いていく。
抜き終えた生地を丸めて伸ばしていくのはフィンとレンの役目で、フィンははしゃぎ時折声をかけて来るシエルとメーアの相手をしながら淡々と作業をしていて、その横ではレンも型を抜いて何かを作っていた。
「また変なもの作ってんのか」
「変なものを作った記憶はありませんが、過去友人と作ったことがあったのを思い出しまして、せっかくならと」
そういってレンは真ん中を小さな型を使って穴を開けていく。
シエルたちが型を抜き終わるとそれを鉄板の上に置いていく。
数が多いので数回に分けて焼くことになり、1回目を乗せた鉄板をミトンをはめたフィンがオーブンに入れる。
あとは焼けるのを待つだけで退屈だと遊びに行こうとしたシエルとメーアはやるのなら最後までとフィンに捕まり、いまは厨房でコックたちから距離を置いて料理を作っているのを眺めている。
「あいつらは型抜きだけ楽しんで終わりか」
「オーブンを使うにはまだ幼いですし、それに王子王女ですから怪我でもされたら困りますからね」
「いや俺も王子なんだけど」
「そうでしたね。でも結構様になってますよ、フィン様」
そりゃどうもとフィンは返すと鉄板をオーブンから取り出し、レンが2回目をオーブンに入れる。
そこにシエルとメーアがやってきて焼きたてを食べようとするが熱くて掴むことが出来ず苦戦していた。
退屈そうにクッキーが焼きあがるのを待つフィンのそばでは、紅茶のお代わりを作っていたレンは途中オーブンを開けてなにやらやっていた。
焼きあがったクッキーの中でもレンが作っていたのは異彩を放っていて真ん中が色のついたガラスのようになっていた。
手を伸ばそうとしたシエルとメーアに、まだ固まっていないからと止めるとそれが冷えてからおやつとして出して、レンは作りたいと騒ぐ双子の鼻先の人参にして日々の勉強を頑張ってもらうことにする。
フィンを巻き込んで大雑把な片付けを済ませたレンは、シエルたちを連れてフィンの部屋まで移動すると、先ほど作ったクッキーお菓子として今日のおやつの時間の準備をするのだった。
ありがとうございました。




