その頃のフィンたち2
「おはよう、お兄さま」
朝早くからフィンの部屋にやってきたメーアは、一応止めているレンの制止の声も聞かずにフィンの掛け布団を引っぺがした。
まだ朝食前だというのにメーアは元気である。
そろそろ起床時間ということもあり、大して不快に思ってはいないフィンではあるのだが掛け布団を一気に引っぺがされるのはさすがに寒い。
過ごしやすい季節だといっても朝の空気はひんやりとしていて、薄い上着でも欲しくなるほどだ。
面倒そうに起き上がったフィンの着替えを手伝うレンは何も言うこともなく、フィンからの視線を受け流している。
一応メーア様のことはお止めしたのですがとでも言いたげのレンだが、ハナから止める気がほぼなかったのはバレているらしい。
「メーア、お前が元気なのはよく分かったが俺じゃなくてシエルを起こせ」
「シエルならもう起こしたわ」
「そうか。なら、二度寝でもするか」
シエルはもう起きていると知るとフィンはあくびをして、ベッドに入ろうとするが服の裾をメーアに掴まれて阻止される。
「お兄さまも手伝ってちょうだい」
身長的に上目遣いの形になるメーアだがフィンとレンに効果はなく、フィンは前日のクッキーの型探しで疲れているのか面倒そうな顔をする。
「母上もコックもいる。昨日ので俺は疲れた。どれだけあったと思ってんだ」
「部屋が軽く埋まるくらいでしょ。母さまは忙しいからずっと一緒には手伝ってもらえないの」
予定があるため途中で顔を見せるくらいしか出来ないらしい。
それなら別の日にやればいいと思うのだが、作りたいという気持ちの大きいメーアとシエルの中には今すぐという選択肢しかないのだろう。
「いいじゃないですか、フィン様。こういうことは後々のいい思い出になりますし」
柔らかに微笑んだレンはまるでメーアに助け舟を出すかのように言うと、フィンだけに聞こえるような小声で囁いた。
「何しでかすかわかりませんから、俺たちがついていた方が安全では?」
「……そこは」
もちろんの侍女やコックなど使用人がそばで手伝いながらのクッキングになるのだが、何しろ予想外のことをしでかす双子のことだ。
一瞬の隙が命取りは言い過ぎかもしれないが、僅かな隙に騒ぎを起こす常習犯だ。
しっかりと双子の考えが読めるフィンがいた方が安全だろう。
使用人にとっても、自分たちの精神的にも。
葛藤しているフィンの顔を見たレンは、メーアに目を合わせるとニコリと笑った。
「では午後からやりましょうか。メーア様たちは午前中に本日のお勉強を、俺たちは準備をしておきますので」
勝手にフィンやメーアたちの予定を立てたレンは振り返って先輩従者のジルの方を見た。
ジルはやや迷ったように間があってから一つ頷いた。
今日のフィンの予定はなく、メーアとシエルに関しては母親のフリーズがいないのであれば、フィンとレンがそばにいた方がおそらく不足の事態を防げると思ったからだ。
何より口では嫌だと言いながらもフィンは仕方がないと双子のやることに付き合う。
「分かったらさっさと戻れ」
「はぁーい」
元気よく返事をしたメーアは上機嫌で部屋に戻っていく。
「それじゃあ、俺は連絡してきますね」
レンはフィンにそれだけ伝えると部屋を出ていった。
当分戻ってくることはないだろう。連絡と書いて手伝いと読めるのだ。
メーアとシエルのためにならと手が空いているとフィンまで手伝いに駆り出されかねない。
フィンは朝食の支度をするジルに、午前中に何か予定を入れるように言うのだった。
ありがとうございました。




