その頃のフィンたち4
自分たちで作ったクッキーを美味しいと頬張るシエルとメーアにはミルク、フィンには紅茶を用意してレンは使用人らしく一歩下がって控える。
その様子にフィンは視線だけだけをレンに向けて、お前も混ざれと訴える。
目の前にある大量のクッキーは到底三人で食べきれる量ではなく、レンの雇用条件からレンにおやつは必須である。
「それじゃ遠慮なく。でも多すぎますよね、これ」
「まあ、そうだな。正直飽きてきた」
フィンの隣に腰掛けたレンは山積みまま一向に形の変わらないクッキーの山から一枚だけ抜き取って口に放り込んだ。
今は先輩もいないので目くじら立てて怒られることもないので自由である。
「ラッピングして配りますか。シエル様とメーア様からの日頃のお礼とお詫びの名目で」
「その方がいいか。しっかしまた仕事が増えるのか」
配るのはシエルとメーアにさせるとしても、ラッピングなどのことは自分たちがやらなければならないのかと面倒そうにフィンが言うが、レンは懐かしそうに双子を見て微笑む。
「こうした時間が取れるのも今だけですよ。一緒にいられる時間は結構簡単になくなってしまいますから」
もう会えるかどうかもわからない弟をレンは思い出す。
成長するにつれてお互いの時間が合うことが少なくなって同じ家にいるのにすれ違うことが多くなったと。
「ま、そうだよな。これから科目も増えるわけだし」
勉強から逃げるために余計に早く終わるものも終わらず、歳をとるごとに参加しなければならない行事も増えいき、やることはどんどん溜まっていく。
今は何とか時間の調整がついているが、この先どうなるかも分からない。
「お二人のことだけはありませんよ。ローザ様のこともどうなさるんです?」
ソファに背を預けたレンは窺うようは視線をフィンに向けた。
ひとまず婚姻云々は別としても、適齢期の女性が結婚もせずにいるのは見聞が悪い。
ローザに関しては国外追放もあったのでひとまず避難先を提示したというのがフィンの行動で、アルレッキーノ王国ではとやかく言うこと人間もほぼ皆無なのでゆっくりは出来るからだ。
まぁ、ローザがあの茶番をやってのけたからこそこの国でもやっていけるだろうと考えがあってだが。
「うーん。シエル、メーアに譲れりゃ楽なんだけど、まだ気持ちに力が追いついてないからなぁ」
「今のままでは王太子とフィン様が呼ばれるのも時間の問題ですかね」
そうなってしまえば、結婚というのは避けて通れない問題になってくる。
「なるようにしかならないだろ。変な国に堂々居座れるやつなんてなかなかいないだろうし」
「住めば都と言葉もありますし、意外と慣れるものですよ」
「お前は素質があった」
きっぱりとフィンに言い切られてしまったレンはそうでしたかととぼけるように返してお茶を飲む。
「俺が王太子にならず、シエルの夢が叶うよう頼むぞ、レン」
「これもお国柄なんですかね」
ティータイムを終わらせるとある程度の小分けにしたクッキーをシエルとレン、メーアとフィンで各部署に配りに行く。
日頃のお礼とお詫びだと言ってシエルとメーアは渡して行くのだが、使用人の誰もがきっと作りすぎたのだと見抜いていただろう。
そして、これが当分続きそうだと笑っていた。




