それはデリケートな問題で
レンを迎えに城から出て町に行くと、王家の馬車だと気がついた民は手を振ってくるので、フィンも笑顔で手を振り返していた。
時折、大声で会話をしていることさえあった。
ローザやエリシャにとっては未だに慣れない景色で、驚くことしか出来ない。
ここまで王族と庶民の距離が近い国もそうそうにないだろう。世間話をするなんて。
馬車は少しだけゆっくりと道を進んで、シエルとレンがいるという場所にたどり着く。
「兄さま!」
「フィンさま……それに皆さんも」
フィンの姿を見つけたシエルは嬉しそうに、レンは驚くように呟いた。
「よ!出かけついでに迎えにきた」
「そうでしたか。それで、どこへ?」
「ん?あー、そうだな」
どこに行くか決めなかったのかフィンが適当に答える。レンはそれがわかって苦笑をしていた。
「よくお前が買ってくるお茶の店。ローザたちにも評判だからさ」
「あの店ですか。ここからなら馬車で三十分程度ですね」
レンが御者に行き先を伝えて、フィンたちが乗っている馬車に乗り込むと馬車が走り出す。
シエルは対面に座るローザとエリシャを何度か見比べて訳が分からないといった表情をしてから口を開いた。
「メーアは何が言いたいんだ」
「どうしたんだ、シエル?」
メーアの言葉を思い出して難しい顔をしたシエルは、やっぱり訳が分からないと首を傾げ、レンは気まずそうにしてシエルの言葉を止めたそうにしているが誰も気づく人はいない。
「エリシャ姉ちゃんもローザ姉ちゃんと同じくらい美人だと思うんだけど何が違うんだろ。メーアが最近いうんだローザさんならわたしのお姉さまにぴったりだっ――もがっ」
「ストップ、シエル」
全て言い終わらないうちにシエルはフィンによって口を塞がれる。
止めるのが少し遅すぎた。
エリシャが冷たい視線をフィンに向ける。
ローザは驚いたようで目を丸くし、マシューは懐かれましたねとのほほんとした言葉をこぼす。
エリシャの視線はあくまでもシエルではなくフィンに対してで、弟妹を使った作戦とでも思っているようだ。
その視線よりも今はシエルの発言に頭を抱えるフィンはため息をついた。
「いや〜、悪い。こっちは食い気が勝ってるから」
「双子でも違うものですね」
原因は分からないながらもシエルがやっと空気を察する。
どうしてこんな風になっているのか理解していないシエルはキョトンとしている。
「なんだ、これ?」
「全く……。こいつの頭はどうなってんだ」
「申し訳ありません」
呆れたようにフィンが言って、レンが落ち込んだように謝罪を声にする。
「レンのせいじゃないから。それより通訳を頼む」
「えぇっと主従である以外、シエル様の目には同じ見えているのでないかと」
もちろん爵位による身分は理解してるみたいではあるが、シエルにとってはフィンの結婚相手という考えはないのである。
レンの庶民的感覚で説明するならば、ローザたちは近所のお姉さんたちであって、家の違いはあれどそこに優劣はないのだ。
「なるほど。シエル様にはそう見ているのですか」
「はい、おそらくは。なのでエリシャさんが思っているようなことはないのでご安心を」
「そう、ですね。分かりました」
レンの話を聞いてエリシャが引き下がる。
納得できないことがあるとすれば、自分がローザと同列に扱われていることだろうか。
落ち着いたところでシエルが不思議そうに口を開く。
「二人とも美人だし優しいのになん――ぐっ」
「蒸し返すな」
再びフィンに口を塞がれたシエルに、笑いをこぼしローザたちは即興の団結をして目的地に着くまでの話題を作るのだった。
ありがとうございました。




