エリシャの悩み
フィンは国王と一緒に会議中で、シエルとメーアも今日は餌を用意されているために大人しく授業を受けている。
そのため、仕事がないとレンは城の中を散歩していた。
最近、洗濯係の方に顔を出してないなぁと思い出し、レンはそこに向かおうと歩き出し、ため息をついて廊下を歩くエリシャの姿を見つけて声をかける。
「エリシャさん、こんにちは。ため息なんかついてどうしたんですか」
「こんにちは、レンさん。ローザ様がたまにはリフレッシュしてきなさいと半日ほど休みを頂いたのですが、何をすればいいのかわからなくて」
「それは困りましたね」
そうなんですと頷くエリシャは、休みなんて必要ないと思っているようだ。
まあ、異国の地にいるわけで勝手も違うだろうし、急に空いた予定を潰すもの難しい。
「あ、そうだ。友人から貰ったお茶があるんですけど、良かったら一緒にどうです?」
「私は構いませんが……」
「大丈夫です。やることがないので散歩でもしようと思ってたので」
レンの部屋に行くことになり、途中でお湯を貰ってから行く。
レンはわざわざ冷めやすい容器に熱湯を入れて貰っていて、エリシャは首をかしげていた。
その部屋は、シエルとメーアのものだろうオモチャが溢れているが、それ以外はわりと殺風景だ。
レンはティーポットを用意すると、お湯の温度を確認してから茶葉と一緒にティーポットの中に入れる。
1分ほど待ってティーカップに注ぐと、エリシャの前に運び、自分の席の前にも置いて席につく。
一緒に出された茶菓子は黒く艶やかな塊だ。
水色は緑色をしていた。
「変わった色ですね」
「故郷でよく飲んでいたものなんです。口に合えばいいですけど」
「いただきます」
初めてのものに若干のためらいはあったが、エリシャは意を決して飲むと、紅茶とは違う苦味はあったが思ったより美味しいと感じたようだ。
「仕事以外でこうして話すのは初めてですね」
「そうですね。お互いに休みのない仕事ですから」
エリシャが淡々という。
互いに会話が弾む相手ではないので、そこまで会話は弾まないが、最もレンの方は聞きたいこともあったので誘ったのだ。
「最近、メーア様がよくお邪魔していますが
ご迷惑をおかけしてませんか」
イタズラ王女であるメーアだ。
ローザに憧れているようなのでおそらくは問題はないはずだが、毎日のように会いに行っているらしいので、迷惑になっていなければいいが。
「問題ありません。ローザ様にも妹がいらっしゃるので、むしろ楽しそうにしております」
「それなら、いいです。普段イタズラばかりなので心配していたんです」
ホッと胸をなでおろしたレンは、まるで手のかかる弟妹を見ている保護者のようだ。
エリシャがローザと一緒にいるメーアの様子を話すと、それなりに会話が続く。
人に仕える立場としては同じなので、その苦労などはわかるらしい。
「聡明な方なので、あまり我儘も言って下さらないんです。言ってくだされば、喜んで叶えるというのに」
「昔はフィン様も似た感じでしたね。双子は年々ひどくなってますけど」
何も言われないのはそれなりに辛い。
内容にもよるが、我儘を言われるのは使用人冥利につきるのだ。
「ときには、伝えてみてもいいんじゃないですか。俺はフィン様とケンカしちゃいましたけど」
エリシャは驚き隠せないようで目を丸くしている。
彼女の中では仕える主とのケンカなどあり得ないからだ。
「何事もなかったのはフリーズ様のおかげですけど、あれからフィン様は子供らしいときあるんですよね」
俺に対しては意外と負けず嫌いでだったりと、レンは付け足す。
主従であるはずのフィンとレンは、主従としての線引きがあるはずなのに、その線引きがないようにも映る。
どこか兄弟のようなのだ。
この国は、本当におかしな国だとは思うがこの機会にローザに日頃思っていることを伝えてみてもいいかも知れないとエリシャは思う。
ケンカになっても何故か大丈夫だと思える。
エリシャがクスリと笑って、レンにお礼をつぶやくと、レンは頑張ってくださいねと、きっと大丈夫だと見透かしたみたいに笑った。
ありがとうございました。




