メーアの理想
「それでね、ローザさんとても素敵だったのよ」
近頃のメーアは兄のフィンよりもローザに懐いており、暇があればローザの元に足繁く通っているが、今日はフィンのところにやってきた。
昨日、ローザと一緒に出掛けたのが楽しかったのか、そのときの話をフィンとレンにしている。
「それはさぞお似合いだったのでしょう」
「お前の服を買いに行ったんじゃなかったのか」
予定ではメーアのドレスを買うはずの外出のだったとフィンは記憶しているが、メーアのから出るのはどうにもローザのことしか話に上がらない。
というか、大半がローザを着せ替え人形にしているとしか思えない内容だ。
「だって、ローザさんは何を着ても似合うんだもの」
頰に手を当てうっとりとするメーアは、自分もあんな風になりたいという思いが見て取れる。
「メーアの憧れはわかるけど、あまりわがままに付き合わせるなよ」
「でもローザさんは寂しくなくなるって言っているわ」
フィンの言葉に返すメーアに、レンはメーアの頰を両手で引っ張る。
「きっとそれも本心でしょうけど、あくまでローザ様はお客さんです。少しセーブして下さいね」
言い切ったところでメーアがすごい形相で睨むので、レンは手を離す。
「分かってるわよ」
「それならいいけど。迷惑はかけるなよ」
分かってるならいいとフィンは言って、メーアがレンにしがみつく。
「ねぇレン。エリシャさんとお茶したって本当?」
「はい。何か悩んでいる様子でしたし、あのお茶を一人で飲むのもと思いまして」
メーアの追求に驚くことも慌てることもなくいつも通りにレンが返し、メーアは頰を膨らませつまらなそうにする。
「その様子じゃ本当に何もなさそうね」
「まぁ、同業者同士ですからね。同じ悩みはあるわけですよ」
「同じ悩み、ね。レンは何を悩んでたんだ」
従者の悩みを解消するは主の役目とでも言いたげにフィンが言う。
ローザの方はあまり踏み込むべきではないと判断しているから、そっちのことは聞かない。
「そうですねぇ。あの時に限るのなら、メーア様にはもう少しだけ淑女らしさを持って頂けたらと」
「もう少しだけ?」
周囲はメーアに対してもっと淑女らしくと求めるが、レンはもう少しだけと言うので、メーアが不思議そうにするが、フィンはなんとなく納得したようだった。
「賢すぎても、しっかりしすぎてもダメなんです。ワガママはちょっとくらい面倒になるくらいでちょうどいいんですよ」
「大人しすぎても心配されるってのはあるからな」
「珍しい、お兄さまたちが真面目に言うなんて」
フィンとレンは互いに顔を見合わせて苦笑をする。
何か思うところがあるらしい。
メーアが何かを聞こうとして、メーアを捜しにきたシエルがやって来る。
「メーア、母さまが呼んでる」
「母さまが?」
部屋を出ようとしてメーアが振り返る。
「お兄さま、わたしはローザさんにずっとここにいて欲しいわ」
一息にそれだけ言うとメーアは返事も待たずに部屋の扉を閉める。
「どうするんですか、フィン様」
「どうもこうもしないって、等身大でいるだけかな」
たいした反応もなく返事を返すレンは、何も言わずフィンを横目で見る。
「ま、ローザならとは思ったけどさ」
「左様で」
なんとなく察しているレンは、追求はせずに仕事に戻った。
ありがとうございました。




