ジェシカ
ジェシカの家に呼ばれたので、約束をした日に向かうローザ。
ジェシカの家は思うほど豪邸ではなく、小さな町の町一番の屋敷といった風でこじんまりとしている。
「小さい家だから驚いたでしょ」
出迎えてくれたジェシカがローザにそういって笑いかける。
「いえ、そんなことは」
「いいのよ、性格に反して質素な家だって言われるもの」
カラカラと笑ってジェシカはローザに家の中を案内する。
「今日は天気もいいし、庭に行きましょうか」
「はい」
ジェシカの案内で着いたのは小さな庭園。
色とりどりの花が咲き誇っているが、バラの花は見当たらない。
そう思ってローザが眺めていると、ジェシカが言う。
「珍しいでしょ、バラがないのって」
「ええ、不思議な感じがします」
「旦那様が苦手なのよ、バラの花」
「君のせいなんだけどね」
突然低い声が会話に参加してくる。
眼鏡をかけた頼りなさそうな男性だ。
「紹介するわ。これが旦那のジーノ」
「これってひどいな。まあいいや、初めましてローザさん」
「初めまして、ジーノ様」
ローザが挨拶を返すとジーノは笑う。
「ジェシカのおまけ程度に思ってくれたらいいよ。ジーノさんって呼んでくれる嬉しいかな」
「わかりました。ジーノさん」
ジーノは後ろに置いたカートを引いて庭の中央にあるテーブルのそばに並べると、お茶の用意を始める。
「リクエストはあるかい?」
ジーノがいくつかの茶葉の缶を2人の前に並べる。
ローザが驚いた顔をして、ジェシカが可笑しそうに笑い出す。
「ジーノの趣味なのよ。これだけは使用人達にも譲らないのよね」
「そうなんですね」
並べられた缶を順番に指差したジェシカは、ローザに好みがあるかを聞いてジーノにこの場に合うものをと注文をする。
わかったと穏やかにいったジーノはテキパキと流れるような動作でお茶を淹れる。
「どうぞ、お嬢様方」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
ジェシカとローザから、美味しいと感想を聞くとジーノはごゆっくりと言い残して子供の元へと戻っていく。
話に花が咲いて、お開きとなったのは日が暮れる頃、帰り際にジェシカが言う。
「困ったことがあれば、ジェシカお姉様に言いなさい」
こう見えてもけっこう苦労人だったのよと付け足してジェシカは笑う。
ローザは礼を言ってジェシカの家を後にするのだった。
ありがとうございました。




