旅行その1
汽車に揺られ外の景色を眺めれば、地方に向かう景色は故郷のドットーレ王国とあまり変わらないように思う。
フィンの地方視察について行くことになったローザはそう思った。
なぜこうなったかといえば、せっかくなのでアルレッキーノ王国の良いところを知ってもらいたいとフィンから誘われ、口うるさいレンが数日でも城を空けるならとシエルとメーアに背中を押されたからだ。
フィンのそばにいることよりも、フィンから離れることを選んだ双子は、よほどレンから離れたかったようだ。
それはもう必死にローザに勧めていた。
ローザがフィンについていけばすぐに帰ってこないはずと考えてのことで、実際に旅行も兼ねたため二日ほど延びた。
各町で挨拶をするフィンは、国民たちに愛されているようですぐに囲まれていた。
笑顔で一人一人に対応しているフィンは、いつもと違って王子らしさを纏っている。
「いつものフィン様とは違って真面目に見えますよね」
「そうね、別人みたいね。あなたはここにいてもいいの?」
フィンから少し離れた場所にいるローザにレンが隣に立って話しかける。
「先輩がいますし、俺、護衛は専門外なんでああいう時は役に立ちませんから」
どうやらレンには戦う能力はないらしい。
静かに眺めて、レンが口を開く。
「珍しい光景ですよね。どうにもこの国は距離が近いみたいで、僕もはじめの頃は驚きました」
「信じられないわ」
ドットーレ王国では、庶民と王族が直に触れ合うことはない。
式典でもない限りは身分が低い貴族だって近くで見ることも会話することも出来ない。
レンはそんなフィンの様子を退屈そうに眺めて、懐中時計を取り出し時間を確認する。
「ここにいても退屈になると思いますし、先にお土産でもご覧になりますか」
エリシャの視線が痛い。
安全性に問題ないのか訴えているのが伝わってくる。
「この後向かう予定の場所で、すぐそこですから問題ないです。フィン様がいつ来るかは分かりませんが」
「先に見せて頂きましょう、ローザ様」
「そうさせてもらうわ」
ずっとこの場にいるよりはと先に土産屋に行くとローザは決める。
レンはすぐそばにいる護衛の一人に先に行くことを告げて、ローザたちを先導する。
「この辺りは装飾品が有名で、宝石のような輝きはありませんが素晴らしいものばかりなんですよ」
そこには食品はほとんど置かれておらず、レンが言ったように細かな模様が入った装飾品ばかりが並ぶ。
一つ一つがどれも素晴らしく、手にとってしまえば壊れてしまいそうなほど繊細に見える。
売り物に触れるのをためらうローザに共感するエリシャたちをよそに、レンはそっと犬がモチーフになっているものを手に取るとレンはローザに話しかける
「シエル様とメーア様には上品すぎますかね?」
「似合いそうだけど」
値札を見て、レンはそれを棚に戻す。
「壊れない未来が見えないので、数年後ですかね」
ローザが家族に送るとそれぞれに似合いそうなものを探してエリシャとあれこれと悩んでいる。
どれくらいの時間が過ぎただろうか。
ようやくフィンの合流をする。
「すごい人気なのね」
「珍しがられただけ。三年ぶりだし」
フィンはローザと会話をしながら、お土産に買うものを次々と決めていく。
時折、レンに尋ねて相談していたが、シエルとメーアのものは買わなかった。
レン同様にすぐに壊される未来しか見えなかったようだ。
この日はこれで大体の予定が終わり、明日は旅行メインの日程だ。




