表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/121

5 鼻血ブーの呪文

 廊下に出ると、コミンに呪われた人形が、熱心に廊下をクリスマス仕様に飾り付けているのが見える。

 その様子を、長津田さんがぼんやり眺めていた。


「……あ」

「長津田さん、その人形は触らない方がいい、呪われてますから……」

「生徒に協力して飾りつけして、偉い人形のお化けちゃんですね」


 その人形は俺と長津田さんを見ると、何かを察したのか、親指をぐっと上げて、その場を後にした。


「あと、今朝は助けられなくてすみません――。結局、何も守れやしない……」

「……気にしてませんから」

「じゃあ、午後の授業に遅れるといけないので」

「あの、その前に、これ――」


 うつむく長津田さんは赤いハート型の包みを差し出してきた。


「……これは! もしかして、ク、クリスマス……プレゼント!?」

「――声が大きいですよ!」

「もしかして、お、俺にですか!?」

「違うの! せ、生徒会のみんなにも、同じものを、同じようにあげてるから――!」


 長津田さんの護衛のサリスマリスは同じような包みをがしゃがしゃあけている。


「で、でも、こんなことヒカルさんが知ったら……」

「ヒカルにはおはようのキスあげたから大丈夫!」

「――!? じ、自分もそっちの方が……じゃなくて」


 長津田さんはプレゼントの包みを押し付けてくる。


「あ、ありがと、ござす――!」

「……、あけて……?」

「あ、はい……――」


 震える手で丁寧に包みをほどくと、手作りのかわいらしい刺繍のマスコット人形が顔を出す。


「か、かわいい……! お、お子さんの子育てで忙しいのに、こんな手の込んだプレゼントを――?」

「あの子たちも手伝ってくれたのですよ。とはいっても私の膝の上でじゃれてただけですけどね」

「うぐっッ――、お子さんにも、よろしく……お伝えください――ぅ……ぐッ……」

「あの、もしかしたらこういうのもらっても……困りますか?」

「そ、そんな、とんでもない――!」


 ほどいた包装紙を丸めて鼻に差し込む。


「ちょっと鼻血をうまく制御できないだけで……ぃぅ……――」

「もし迷惑なら、ゴミ箱に捨ててもいいですから!」

「あ、あの! どうも! これ、どうも……!」


 少し微笑んだ長津田さんが珍しく廊下を走っていった。

 マスコットには俺のイニシャルが縫われていた。もしかして、これは俺に似せて作ったのだろうか。


「長津田さんからのプレゼント……人生、初めての女の子からのプレゼント……、うッ……。ゴミ箱にはもったいない、棺桶まで持っていかなければ……」

「あのぉ……旦那? もしもし?」

「お子さんをひざにのせ、子守をしながら編み物――……子供たちの笑顔に囲まれ家庭を支える長津田さん――……」

「ねー旦那ぁ、今の娘のセリフのどこに鼻血ブーの呪文があったガル?」

「うるさい、今取り込み中だ、邪魔するな」


 縫いつけられたイニシャルを指でなぞる。


「安息日……いいじゃないか……!」


 サリスマリスも長津田さんの作った自分の姿のマスコット人形をつまんで眺めている。


「うぎゃ――!」


 箱を抱えた雄太が廊下の角でずっこけながら全力疾走してきた。


「先生助けて! また首を狩られるさ!」


 雄太を追い回していたペッキンコッキンは俺の姿を確認するとぴたりと止まる。


「か弱い生徒を助けてさ! 唯一の頼りさ、先生!」


 ペッキンコッキンはよだれを垂らしながら雄太の抱いている荷物を見つめる。


「やはり、プレゼントを狙っているようだな」

「そ、そんな!」

「俺もロッカーに隠しておいたのを盗られた、今もどこかを歩き回ってる」

「え?」


 ペッキンコッキンは俺を睨み、首を回してコキコキと鳴らす。


「マリアやアクガリとか強いやつには悪さしないくせに。俺たちばっかりなめられちゃいけないからな――」


 対魔族用の封殺札を取り出す。


「やい魔族ども! 巷で噂の純情チンピラ生徒会エリートの先生が相手さ! じゃあ、先生、ぼこっちゃってくださいさ!」

「なぁ雄太……、さっきの呼び名は、なんだぁ?」

「へ? 魔族のパトロールのとき怖い顔して校舎をのし歩いている先生を見て、生徒のみんながそう呼んでいるさ。知らなかったさ?」


 ペッキンコッキンはくるりと体を回転させて、呪文を唱えた。


「ペクソッ! マイムマイム!」

「マイム!」

「マイム!」


 すると、どこからともなくペッキン族の増援がやってきた。


「げ!」

「こんなところでやりあおうってか――! 周りには生徒がいる! カマをしまえ!」

「……ええい! もう、命には代えられへん!」


 雄太は諦めきれない表情を浮かべ、ペッキンたちを刺激しないように静かに窓をあける。


「もってけ泥棒!」


 雄太はプレゼントの箱を外へ投げた。放たれたそれはプールの中へ沈もうとする。

 そしてプレゼントを追尾するようにペッキンたちは氷のはったプールに突っ込み、プレゼントと共に沈んでいった。


「――ふぅ――ぅぅぅ……ぐすん……」


 プレゼントを放棄した雄太は泣き始めた。


「でも誰かにもらえたんだろ?」

「ぅぅ……」

「うらやましいな、この色男! 元気出せよ!」

「ま、ママにもらったんさ!」

「すまん」


 涙ぐむ雄太は俺の背後を見る。


「おいらもサリスマリスみたいな強いボディーガードがほしいさ。何しようにも必ず魔族がちょっかい出して……」

「ルア、他にもサリスマリスみたいな味方はいないのか?」


 廊下によりかかり、俺たちを眺めていたルアに話を振った。

 俺がペッキンコッキンに武器を使おうとしたとき、こいつは鋭い目で俺を見ていた。


「この学園にばかり教会から戦力を手配できません。それに……」

「……それに?」

「サリスマリスは長津田さんをプライベートな時間を削って護衛しているのですよ」

「それってサービス残業みたいなことさ?」

「人手不足か……クーラーや魔族を相手に教会もぎりぎりなんだな」

「――(こくり)」


 俺はサリスマリスの小さな頭に手を置く。


「お前にもいろいろと迷惑かけて悪いな。俺なんかがハロになってしまったばっかりに」

「――(ぶんぶん)」


 無表情なぬいぐるみが顔を横に振る。


「俺が魔族にやられてソーサリィを奪われ、ただの無防備な生徒に戻ったとしても、まだお前は守ってくれるのか?」

「――(こくり、こくり)」


 最初は恐ろしかったサリスマリスの不気味さも、時が経つにつれ愛きょうを感じるようになってきた。

 以前は俺の数歩うしろにうっすら付いてきたが、最近では振り向くとすぐそこにいる。


「なんでハロなんて引き受けたんだか、まともなクリスマスも過ごせやしない――」


 俺は廊下を熱心に掃除している人形を見る。


「まったく、何も知らないただの生徒だった頃に戻りたいよ」

「ははは、そうさね……」


 雄太は氷の張ったプールの中でもプレゼントを奪い合うペッキンコッキンたちを見下ろす。


「探したです」


 廊下でマリアが駆け寄ってきた。


「――? なんのようですか、マリア先輩がいきなり」

「後輩にプレゼントをあげるです」


 マリアはふくらんだ手提げ袋を差し出してきた。


「……――は?」

「は?」


 マリアは眉をしかめる。


「いつから先輩に敬語を使わ――」

「今なんて!?」


 マリアが先輩に対する口のきき方を教えてあげるですとビンタの構えをしたので、俺はすぐに謝罪した。


「で、プレゼントって、お、俺にですか!? ――本当に!?」

「何度も言わせるなです」


 袋の中には学食で売られている菓子パンが詰め込まれていた。


「あ、ヤロ、いた! ……やい! これ、受け取るんだゼ!」


 アクガリもまた大きな袋を俺に突き出してきた。


「これは――?」


 大量のぶどうジュースが詰め込まれている。塩ケーキじゃなかったことに安堵した。


「プレゼントだゼ、クリスマスプレゼント、必要だろ?」


 両手に抱えられないほどのプレゼントを預かった。


「その、まさか、マリアさんやアクガリからこんなもらえるなんて……」


 マリアとアクガリが顔を見合わせ、首をかしげる。


「生徒会に入ってからここんところ嫌なことだらけだったけど、まぁうれしいこともあるもんだ――」

「あのチンピラが可愛い女子にかこまれてるだと!?」

「あの野郎! あんなたくさんプレゼントもらいやがって!」


 気がつけば廊下の男子たちが嫉妬のまなざしを向けてくる。


「はは、いやー、参ったなー! 長津田さんにももらったし、こんなにもらえないですよー!」

「そ、そうか――?」

「必要ないです? じゃあ別の人に――」

「いります、いただきます」

「旦那! それガルへプレゼントかガル!?」

「ふざけるな、寄るな触るな! 俺がもらったんだ! ひとつたりともやらないぞ!」


 よだれをたらし袋に手を伸ばすガルナビをつっぱねる。


「何を言っているです?」


 マリアは窓の外を指さす。


「学園のゴミ集積所でソウルたちがゴミ袋を引き裂いて中身を食い散らかしているです」

「そのソウルたちがどうかしたんですか? 俺には関係ない」

「魔族はパンとぶどう酒で安息日の祝いの儀式を行う習慣があるです。飢えたソウルたちがパンとワインを街から盗み出す前に欲求を満たしておくです」

「放っておくと街のパン屋さんや自動販売機が荒らされちゃうんだゼ」

「魔族の軽犯罪を防ぐことも生徒会の使命です」

「プレゼントを配る? 俺が? ソウルたちに?」


 のぼせ上がった頭がようやく理解した。


「――あ、ああ……そういうこと――、ソウルたちに配るプレゼントってことね、まーそうだよね」


 マリアは不思議そうに首をかしげる。


「先生! ま! そんな気を落としなさんな!」

「嬉しそうだな、雄太」


 アクガリとマリアが言う。


「黒騎士の正体を知っているソウルがいるって噂だから、オレも配るの手伝うんだゼ」

「黒騎士殲滅のために、ソウル社会に情報提供を呼び掛けてみるです」


 黒騎士という言葉に俺はいきなり不安になった。


「そ、そっか! でも、別に今じゃなくても――!」


 真剣な表情のマリアとアクガリは足早に昇降口に向かった。


「おい、ルア! どうするんだよ! ソウルの中には俺たちが黒騎士だって知っている奴がいる! マリアたちに話されてはたまったもんじゃない!」


 案がありますと言ったルアが続けた。


「ソウル社会は広いです。よって今朝の脅迫の犯人についてたずねてみたらいかがでしょうか?」

「ソウルたちに? ……なるほど名案だ! もちろんお前らも手伝えよ!」

「安息日の儀式に必要になる食材だガル。ちらつかせればソウルも知っていることをセラセラとしゃべるガル」


 俺はルアと雄太、ガルナビを引き連れて、パンとぶどうジュースを携えて校門に向かう。

 マリアとアクガリは俺の呼びかけに足を止める。


「マリア先輩、アクガリ、これは俺の仕事だから俺一人でいくよ! 大勢でいくと驚かせて逃げられてしまうかもしれないだろうし」

「大丈夫です?」

「ソウルも中には凶暴な奴がいるんだゼ?」

「ソウルなんかに負けやしない」

「ただ、飢えたソウルには十分に気を付けるです」


 マリアたちを残して校門を出ると、市民のための手ごろなゴミ置き場を見つけた。

 夢見が丘では、人には見えないソウルという精霊がゴミを漁ったり、人を脅かしたりする。これが夢見が丘の七不思議のひとつになっている。


「収集はまだのようですね」

「見て! あそこにソウルが1匹いるさ……」

「任せるガル! ソウルにはガルが通訳するガル!」


 ゴミ袋に頭を突っ込んでいるソウルにそっと話しかける。


「……おい、取り込み中すまない。ちょっといいか」

「セラ?」


 ソウルが鳴き声で答えた。


「セラセラ?」


 物影から別のソウルたちが次々と姿を現し始めた。


「この手紙を見ろ。脅迫されているんだが心当たりはあるか? なんでもいいんだ、知っていることをしゃべってくれよ」

「……セラ?」


 ガルナビがソウルたちに通訳した。


「些細なことでもいい! 早いもの勝ちでいつも食べ散らかしているのよりずっとうまいものをやるぞ!」

「ヴァーサー・クーラーさまだガル! 女神さまの命令だガル!」


 ソウルたちはパンとブドウジュースの袋へ鼻をつきだし目をぱちくりさせる。


「知っていることを話してくれたら全部くれてやってもいい!」

「セラセラ! ケセラセラ!」

「『いらない』っていっているガル!」

「……なんだと、いらない!?」


 俺はパンを取り、袋から出して1匹のソウルの鼻先に差し出す。


「すごく美味しいぞ! ほ、ほら! 気が変わるからかじってみろよ!」

「セラセラ! ケセラセラ!」

「『そんなんいらん、体くれ体』って言ってるガル」

「ほらほら! ぶどう酒さ! おいしいさ~!」


 雄太は恐る恐るソウルたちにぶどうジュースを差し出す。


「セラセラケセラセラ」

「『そんなのいらん、血をくれ血』って言ってるガル」

「どうしたことでしょう」

「おかしいガル。食べ物が少ないこの時期には飛びつくはずだガル!」

「セラセラ、セラセラ」

「『ある者からすでに贅沢なご馳走をもらっている』って?」

「――ある者?」

「むしゃむしゃ……」


 ソウルたちが漁っていたゴミくずは宅配で有名な大きなピザ、高級ワインだった。

 そしてソウルたちの傍らには未開封のチキンやジュースがある。


「ピザにワイン!? なんて贅沢なもの食べてるんさ!」

「ソウルのくせに生意気だガル!」

「人にソウルは見えないはず! こんな食べ物、誰がソウルに餌付けしたんだ!?」

「セラセラ」

「羽振りのいい雇い主がいるって言っているガル! だからパンくずなんていらないっていっているガル」

「雇い主?」

「もしかして、誰かが先に餌をやって悪さをしないようにしていたさ?」

「だとしたらマリアたちが知らない奴だ。どこのどいつだ、お前たちにビザやワインをくれてるのは?」

「――セラ?」


 ソウルの目が一斉に細くなる。


「セラセラ、ケセラセラ! オーウェイ!!」

「ぐっ! 痛ッ! やめろ!」


 ソウルたちが俺に体当たりをする。


「あのソウル、なんだって攻撃してくるんだ! 俺が何かしたってのか!?」

「まずいガル! その雇い主が旦那の首に賞金をかけているらしいガル!」

「なんだと!?」

「その雇い主って、もしかして脅迫状の犯人さ!?」

「――ッ!?」


 俺はホウキの封殺剣を取り出し、周囲を警戒する。


「――ケセラセラッ!」


 ソウルたちが呪文のように唱えると、周囲が煙に包まれて、まるでおとぎ話の世界に変化した。

 周囲はメルヘンチックな世界が広がる。


「サンタ!? トナカイ!? クリスマスの世界さ!?」

「ソウルめ、何黙ってるガルか! 魔空間につれだして何が目的だガル!」

「貴方のことばかりをみていますね」

「意味がわからない! ガルナビあいつらを説得しろ!」

「――セラ」

「あのソウル、偽りのハロを捕まえろって買収されたみたいだガル!」

「なんだと! 聞き出せ! 誰が俺を狙う!」

「――セラ」

「ソウルに口なし、雇い主は売らないって言っているガル!」

「――セラセラッ!」

「旦那をやっつければ毎日美味しいご飯をもらえるって言ってるガル! ってそれホントガルか!? 詳しく聞きたいガル!」

「卑怯な犯人め! 隠れてこそこそと汚い手使いやがって! 犯人を知っているなら話は早い! ソウルを一匹捕まえて生徒会室に引きずって口を割らせるぞ!」


 次々とソウルが空間に湧いて出て来た。


「どんどん増えてるさ!?」

「――セラセラッ!」

「ちッ! ソウルごときが――痛ッ!?」


 ソウルたちから封殺札が飛んでくる。


「ケセラセラッ!」

「何者かの呪術によりソウルのソーサリィが強化されています」


 ルアは自分の肩にくっついている封殺札を引きはがす。


「面倒な奴らだな! それなら野放しにはできない!」

「先生! 危ない!」

「――ぐあッ!」


 俺の足元で見慣れた爆発が巻き起こり、俺は衝撃で尻もちをつく。そしてトウガラシの香りが漂った。


「ちッ! トウガラシ爆弾まで真似してきやがる! ……いや、本物の威力だ、護符が一撃で灰に――ッ!」

「セ、セラセラッ!」


 トウガラシ爆弾が飛んできた方を見ると、1匹だけ異彩を放つソウルがいた。

 緑色のベレー帽をかぶったソウルが俺にさっきのトウガラシ爆弾を投げつけたようだ。そのソウルの周囲にトウガラシ爆弾が浮いている。


「セ、セラッ! セララッ!」


 そのベレー帽のソウルは次から次へとトウガラシ爆弾を投げ込んでくる。


「あの帽子をかぶったソウル、厄介だぞッ!」


 俺は爆弾を避けて、ホウキの封殺剣を構える。

 ソウルたちから投げつけられた封殺札をはたき落とし、ソウルたちの群れにトウガラシ爆弾を放り投げる。爆風からソウルの悲鳴が上がった。


「セララッ!? え、えぽけ!」

「セラセラ、――えぽけ!?」


 ソウルたちは路地裏に消えていった。


「はぁ、はぁ、なんなんだ! 一体!」

「脅迫の犯人はいたってことさね……先生」

「ああ、それだけでも収穫だ! 撤退しよう!」

「だけどあの帽子のソウル、どこかでみたような……ガル……」


 俺たちは帰り道ではゴミ置き場を避けるようにして、学園に戻る。

 噴水のベンチにどかっと腰掛けた雄太が言う。


「ソウルってあんなに強かったっけさ? 封殺札でおしりが痺れるさ」


 雄太は尻についていた封殺札に気がつき、慎重にはがす。


「今までの野良のソウルと比べて、ちゃんとした戦略を立てて戦いを仕掛けてきた――」

「この辺ではあまり見られない珍しい呪術を多用していました。餌付けした犯人の指示で貴方を生け捕りにするつもりだったのでしょう」

「ああ、俺ばかりが標的だったな――」

「あのような高度な呪術はソウルの小さなソーサリィでは繰り出せるはずがありません。護符がなければしばらく痺れて動けない強力な封殺札です」


 ルアは雄太から渡された封殺札を観察する。


「この脅迫手紙の犯人がソウルたちに命令したってことで間違いなさそうだな」


 ルアは曖昧にうなずく。


「少なくとも安息日が始まるまでは油断はできません」


 振り返ると学園結界の外の茂みからたくさんのソウルたちの目玉が俺を捉えている。


「結界から一歩でも出れば、封殺札と爆弾の嵐か……」

「サリスマリスにずっとボディーガードしてもらったら?」

「サリスマリスは長津田さんの護衛だ」

「じゃあ騎士たちに助けてもらえばいいさ」

「犯人がマリアたち騎士に捕まれば、俺を魔女の手下だと暴露するかもしれない!」

「しかしこのままでは、らちがあきませんね」


 ルアは時計を見て困った顔を作る。


「気が進まないが……」


 俺は立ち上がる。

【作者つぶやき】第一回キャラクター人気ランキング


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ