4 いちごミルクは飲めるのに、オレのいちごケーキは食えないって!?
ホームルームの後は通常の授業の予定だったが、担任が教室で生徒に自習とだけ言い残すと、生徒たちは校庭でサッカーしたり、装飾を再開したりした。
騎士たちも同様で、生徒会室でクリスマスパーティーの準備をしながらきゃっきゃと騒いでいた。
トナカイの赤い鼻と角を装着したマリアとアクガリは、腹を抱えて笑い転げているポポやクゥに指をさされている。それを眺めるスレイは微笑んでいる。
「マリィ、超いけてるなの! めっちゃ流行りなの!」
「くぅ! 似合あぅ!」
「アクガリさん、かわいいですの!」
騎士たちが学園死守の任務を忘れてあんなに女子高生らしく笑顔でいるのに、魔女の話題を出すと水をさし、楽しい雰囲気を壊すようで俺は躊躇した。
人形が早くしろと俺のかかとを蹴る。
「マリアさんたち――あの……」
マリアたちは俺を見ると、サンタの帽子をかぶせようときゃっきゃと気に駆け寄ってきた。
「あなたのサンタの衣装です」
「ヤロも着替えてみるんだゼ!」
俺はヴァーサー・クーラーからの贈り物をマリアたちの前に差し出す。
「その前に、みんな、こんなものが生徒会室のロッカーにあったんだ。見てくれ――」
やはり騎士たちはそれまでの笑顔をどこかにしまい込んでしまった。
「これは安息日の贈答品……まぎれもなくヴァーサー卿からです」
マリアが一歩引きさがり、アクガリはへなへなと力なく座り込む。
そして、ポポ、クゥ、スレイがプレゼントを覗き込む。
先輩に任せるですとマリアが俺からプレゼントを奪い取る。
「ちょっと待てよ! ここでは危険だ! 爆弾か、呪いか、毒物が入っているかも――」
「……あ、開けてみるんだゼ」
「ソッチ、どくの!」
「あけるぅ!」
騎士たちは包みをほどくと目を丸くして覗き込む。
「高級お菓子の詰め合わせ……です」
「……なん、だと――」
クッキーやチョコが彩りよく並べられた女子が好きそうなやつだ。
「まったく馬鹿にしている! 油断させようったってそうはいかな――」
「やったなの~!」
「安息日ぃ! かくてぃ!」
「は?」
「ヴァーサー卿は今回の安息日も平和宣言したんだゼ!」
「これで安泰ですね」
マリアたちは俺を突っぱねてお菓子に群がる。
「変な毒があるかもしれない! 睡眠薬かも! そんな怪しいもの食べちゃ――」
すでにマリアは頬で飴玉を転がしている。
「みんなで公園で食べるなのー!」
「あ、ひとりじめダメだゼ!」
外は寒いから嫌だゼとか、クッキーはウチのとか、食ぅとかはしゃぎながら、騎士たちはお菓子を抱えて出かけようとする。
「ちょっと待て! 学内の見回り当番は!?」
「あ、エリート、ありがとうなの! 譲る!」
「さんくす、おなしゃす! 譲る!ぅ」
「先に礼を言うな! さぼる気か!?」
「ヴァーサー卿もフィシス教徒も安息日には武力を行使しないです」
「絶対にか?」
「オレの日々戦いばかりだったソォスィン国でも安息日は平和だし、一度たりとも破られてないゼ!」
騎士たちはお菓子をほおばりながらでていく。
俺は頭を抱えながら生徒会室を出ると、雄太の引きつった顔がある。
「ぅげ……あの気味の悪い人形はなんさ!」
雄太の視線の先には、あの人形が忙しそうにコミンの準備したプレゼントを運びまわっている。
「……気味悪いとはなんだ、俺に失礼だ」
人形が俺を見つけると、労働力を待ち詫びていたのか廊下の壁を蹴って俺を呼んでいる。
「……まさか魔女にあれをプレゼントしたさ?」
「事情があるんだよ、命には代えられない……」
昼休みになり、すべてのプレゼントを配り終えると、人形の労働から解放された。俺は暖かな生徒会室のソファーに倒れ込む。
「むっつりマリス野郎め! 何を隠しているガルッ!」
「――(ギロリ)」
2匹のぬいぐるみが奥の部屋から飛び出してきた。
「チビちゃんとツメの子! もうケンカは終わりよ!」
ガルナビとサリスマリスは長津田さんをはさんでにらみ合う。
「お前たち、学校でケンカするなっていったろ! よそでやれ!」
「むっつり野郎が怪しい箱を隠しているガル! 今朝の旦那のやつとそっくりだガル!」
サリスマリスは箱を抱えている。
「その怪しい箱にはきっとお嬢さまの安息日を邪魔する危険物があるはずだガル! 敵の動向はしっかり把握することもお嬢さまの下僕の使命だガル!」
サリスマリスは首を横にふる。
「どうとでもいえるガル! 従魔族が持ち物検査を守らないなら、ガルたち生徒魔族だって規則を守らないガル!」
「ちょっといいか!」
俺はうるさいガルナビの頭をつかむ。
「良く聞け、これ以上長津田さんの負担になるな。ただでさえ家に帰ればやんちゃなお子さんが何人も――」
「旦那、鼻血」
「チビちゃん反省しましたか?」
「なんでガルばっかり怒られるガル! 差別だガル! 区別されてるガル!」
「ダメよチビちゃん、人にはプライベートがあるんだから気を使わなきゃ、ね」
「プライベート? 魔族にそんなの認めたら大変なことになりますよ!」
「許してあげましょ」
「でも、しかし――」
「今日みたいな日は女の子の秘密を知らんぶりするものですよ」
「……女の子?」
俺の腕にそっと温かい手が置かれる。プレゼント配りで冷えた体に長津田さんの体温が心地よく感じる。
「みんなで仲良くしましょうよ、ね?」
「もちろんです――」
「チビちゃん、ツメの子の大事なものなのよ」
「メス娘、旦那を退けるその魔法をガルにも教えるガル。さもないと大切に隠しているハート型をした赤い箱をいただいちゃうガルよ?」
「え!? ……な、なんでそれを!? な、なんのことですか!? 全然わかりませんから!」
顔を手で覆った長津田さんは足早に出て行った。
「みんな隠し事ばっかりだガル! 安息日が不安だガルね! 何やら騎士ちゃんもみんなそろって怪しい箱を隠し持ってるガル! 旦那も気を付けるガル、安息日に武器を使えばお嬢さまに怒られちゃうガルよ!」
「人の物を盗むなっての。俺も怒られるんだから」
「きっと危ないものだガル! だから強奪するガル!」
俺はいい加減にしろとガルナビのしっぽに掴みかかろうとする。
「やめるガル! ガルが何をやろうと旦那はガルをしょっぴけない仕掛けだガル! 騎士ちゃんの拷問でうっかり旦那がお嬢さまの奴隷だってしゃべっちゃうガルよ?」
「ぬいぐるみが俺を脅す気か?」
もくもくと説明しているガルナビの向こう側に小さい背丈で赤い髪が揺れている。
「(じぃ――……)」
「なんなら騎士ちゃんたちに旦那が黒騎士の女の子でいっぱい悪さしたことを――ギャル!?」
俺はガルナビの口を押さえつける。
アクガリは注意深く生徒会室の中を見まわし、あの生徒会長が不在であるとわかったのか、表情を鋭く整える。
「い、今、黒騎士って聞こえたんだゼ!」
「気のせいだろう――」
おしゃべりなガルナビを背中に回しながら答える。
「アクガリさんったら、うふふ」
アクガリはスレイの制止を振り切るように続けた。
「前から疑問なんだゼ。ヤロはなんでいつもヴァーサー卿の手下と一緒にいるんだ?」
「この生徒魔族はフィシスの情報源だ! ちょっとおだてればなんでもしゃべってくれる便利な奴だ! 今も黒騎士の秘密をうっかり聞き出してたんだが、アクガリ、お前に邪魔されてな!」
背後でガルナビが反論しようともがいている。
「アクガリ、それより……」
アクガリとスレイの影に立っている、恋堕ヶ丘学園の制服を着た女子生徒をみる。
「ああ、ボノか」
「あ、ハロさんはボノさんとは初めましてですね?」
アクガリとスレイの友だちだろうか、その女子生徒の顔に不満が募っていく。そして、上の空でこう言った。
「……アクガリさんの護衛、ボノ」
「紹介するゼ、ボノ。例のハロってヤロだゼ」
さっきから俺のことを後ろでずっとにらみつけていた。
「アクガリの友だちか? あんたも騎士なんだろ?」
俺が正面に向き直るとあからさまに不機嫌な表情で身を引いた。そして俺に襲われると言わんばかりに肩をこわばらせた。
「こっち見ないでほしい、ビグニティの汚れがうつるって――」
「――……は」
「アクガリさん、やっぱりこの人、どこか怪しいですって――」
俺はアクガリに説明しろという視線を投げかける。
「ソォスィン教会が心配してお付きの騎士をひとり増やしたんだゼ」
「すみません。わたくしが不甲斐ないばかりに」
スレイは申し訳のかけらもない表情でいった。
「ビグニティに心を許してはいけないですって――もしかしたら、魔女の手下、黒騎士かもって!」
「ま、マジかッ!? そうなのか!? ヤロッ!」
「そ、そんなわけないだろッ! 何を根拠に!」
その通りだった。しかし、その場のでたらめ、あてずっぽうだろう。
俺はアクガリたちに向き直る。
「そ、それなら、しょ、証拠を出せよ!」
「ごにょごにょ……」
するとボノがアクガリに耳打ちし始める。
「それよりも3人はソォスィン国の騎士だよな!?」
俺は危険すぎた話題を無理矢理逸らす。
「こんなところで聞くのもなんだが、なんでビグニティを嫌うんだ?」
アクガリは肩を強ばらせた。
「ソォスィン国はライバルのビグニティ国に負けたくないんだゼ!」
「じゃあなんで嫌いなビグニティの学園に来ている?マリアとも仲がいいし」
「な!?」
アクガリはうろたえる。
「そ、それは――その――。び、ビグニティのヤロなんかに、教えてやるもんかだゼ!」
そしてスカートを抑え付けて続ける。
「なんでそういうこと聞くの!? い、いじわるめ! 黒騎士みたい!」
「何度も言うが俺は魔女の手下でも黒騎士でもないって、冗談でもやめてくれ! それに、夢見が丘公園で突然どついてくるアクガリの方がよっぽど悪者だぞ!」
「ぅぅ――!」
「笑っちゃうガルね! 立派なソゥスィン人ならビグニティをとっちめるのが普通だガル!」
背後のガルナビは息苦しそうな声で口をはさんだ。
「魔女の手下のソォスィンなんてビグニティ以下なんだゼ!」
「心配する必要はないガル、騎士ちゃん! 暗い夜道で一人きりになったら縛りつけてクーラーさまに奴隷候補として連れていってあげるガル!」
ガルナビは体を震わせけらけらと笑う。
「この、ソォスィンの裏切り者!」
「魔女の手先の腐れチビだって!」
「これ以上、魔女の悪さに協力すると生徒会として見過ごせないぞ、ガルナビ」
アクガリがボノにうなずくと、ボノは生徒会室の入口に、持参していた木彫りの気味の悪い飾りを引っかける。
「悪い奴をはねつける結界を手作りしたって」
「そうだゼ! ボノが生徒会とお友だちの印として作ったプレゼントだゼ!」
ガルナビはその結界をしげしげと注意深く見つめる。
「結界ガルか? どれどれ、新しい騎士ちゃんの自信作をさっそく味見してや――ガぎゃるるるるッ!」
ガルナビは黒焦げになりぽとりと床に落ちる。
「ほう、あのガルナビが一撃で、ほう……」
「……にやり」
ボノとやらは口を曲げて満足げに嗤った。
「これでいたずら生徒魔族や黒騎士、魔女から会長さんを守れるんだゼ! オレたちだって女神さまを守るために役に立つんだ!」
「こんなの、へ、へでもないガル――……! カ、カースの力が戻ったら、すぐにやっつけ――ギャル!?」
俺は息絶え絶えのガルナビを生徒会室の外に蹴りやり、扉を閉める。
「絶対許さないんだゼ! 黒騎士……! 見つけたらぶっ飛ばしてやる――」
俺は大きくうなずき同意する。
「べ、別に、ヤロは――、な、何もしてくれなくていいんだ! オ、オレが悪いヤツから守ってやるから、……あ、……その――……安心するんだゼ!?」
「……あぁ、それはうれしいよ」
「それではわたくしとボノは恋堕が丘学園に戻りますの。アクガリさん、楽しんでくださいね」
アクガリはスレイとボノに手を振る。
ボノという騎士の女子生徒が去り際に俺に振り向く。
「……ふん」
「な、なんだよ――」
「……(ニヤリ)」
「――ッ!」
その悪意のある嗤い顔は、あの木彫りの結界の顔に似ていた。
気の抜けないソォスィン騎士は生徒会室を後にした。
「なんだあいつ、気味が悪いな……」
俺は木彫りの結界から視線を感じる。
姿をごまかせる黒騎士の変身はもうしばらく使えないな。
振り向くとアクガリと視線が合い、アクガリは俺の足元へ視線を移す。
「あの、ヤロ……」
アクガリは扉へ向かうと、内側から施錠する。
「な!?」
そして、机の下から小さな箱を取り上げ、テーブルの上に置いた。
「うまくできたかわからないけど……」
自信なさげにそう言って、箱を開けた。
俺はしばらく箱に視線を落としうつむいているアクガリのつむじを見ていたが、慎重にその中を覗き込む。
「かかか、勘違いするな! コミン会長に食べてもらう前に、ヤロが毒見するんだゼ――!」
ほほを朱に染めるアクガリと同じくらい赤いイチゴが乗っかったケーキが、箱の中に見えた。売っているケーキよりは見劣りするが、頑張って作った感が見受けられる。
正直に腹の虫がなった。
「そういえば、昼飯を食ってなか――」
震えるアクガリの真っ赤な手が、いきなりにフォークをテーブルに叩きつけたので、俺は反射で飛び上がった。
腹の虫はびっくりして気を失った気がした。
「たたた、食べるんだゼ! 遠慮はいらないんだゼ!」
アクガリは公園で俺をいたぶった時のような、食い気味で鋭い目をしていた。
「は、早くッ!」
その顔は真っ赤で、唇を噛んでいる。
俺は恐怖のあまり躊躇していると、さらにアクガリが怒鳴る。
「……いちごミルクは飲めるのに、オレの手作りいちごケーキは食えないってッ!?」
施錠した密室で、黒騎士容疑の俺はアクガリにこっそり毒殺されるのかと戦慄した。
「なあアクガリ! ど、毒見ならそこで伸びてるガルナビに――」
「……――はああああああッ!?」
アクガリは目を丸くし涙を浮かべて顔をもっと真っ赤にした。
甘い毒を食らうか、意味不明に激怒するアクガリの斧を食らうかの、わずかな違いだ。
俺は覚悟を決めて、テーブルのフォークを手に取る。
そして震えるフォークを伸ばし、アクガリの見つめているケーキの角をすくい取り、口元へ運ぶ。
そんな俺の動作を、アクガリは胸の前に手を添えて見守っていた。
体内へのダメージは軽減できるかは不明だが、俺はポケットの中の防御札の護符を握り締めながら目をしっかり閉じて口に入れる。
「――お、美味しい?」
ケーキをほうばったはずなのに、口の中がまるで血の味がした。
「……しょっぱい」
「え? な、なんか言ったか!? どうだ!? 上手にできてるか!?」
よくある砂糖と塩を間違えてたやつだ。俺は無理やりに飲み込もうとする。
俺の顔を覗き込むアクガリの真剣な形相を見ると、アクガリに殴られたときの口の中の耐えがたい感覚を思い出してしまう。
「おげっ……」
「ど、どしてッ!? そ、そんなにまずいか!?」
俺は嗚咽に耐える。
「……ま、間違えて塩でも入れたのか――?」
いや間違いという塩加減じゃない。このケーキ、原材料、塩のみでできてると確信できる。
「お砂糖もお塩もいっぱい混ぜて、美味しくしたんだゼ! あと愛のおまじないもちょっぴり――」
気持ち悪くなり吐きそうになりゴミ箱を探す。
しかし俺の顔を心配そうに見つめるその少女は毒ではなく、純粋なケーキを作ったと理解た。せめて傷つけないために無理やり飲み込んだ。
「……お、おいじい! ずごく――うまいッ! ア、アクガリ上手だなぁ……」
「や、やったっ!」
するとアクガリは俺からフォークを奪い取り、俺の口に次のケーキを運んでくる。
俺は白いケーキが塩の塊に見えてきて、どうしても口を開けることができなかった。
「ヤロ、まさか、マズいのを、無理して――!?」
俺の顔をみたアクガリはフォークを落とす。そして口をへの字に曲げて、俺を攻める。
「女の子に気を使ってマズい料理を我慢して美味しいと嘘ついて食べる、オレが見ているのはまさにそのシーンなのか――ッ?」
「だとしたら、なんて素敵な愛情表現なんでしょうね。なのに、なんて顔しているの、アクりんッ!」
突然にその声を聞いただけでアクガリは頭をかがめて俺の背中に回り込む。
「助かった……」
俺の目の前に金城コミンが立ちはだかる。獲物を見つけた狩人のように、俺の背後に隠れる女子を覗き込もうとしている。
「ひぅ! べ、別に、なんでもないんだゼ――!」
「そうには見えなかったわ!」
「楽しいんだゼ! すっごく幸せなんだゼ! ホントだぜ!」
アクガリは不器用な笑顔を繕い始めた。
「へー、それが幸せな顔だって言い張るの!? だとしたら深刻な心の病気よッ! 恋愛音痴にみられる末期の症状ね!」
「う、う、うへへへへ――! 幸せぇ……」
「――その顔ッ!」
眉を曲げた金城コミンは大股で俺に駆け寄る。そして背後の女子生徒はぶるぶる震えている。
「なんて顔したのアクりんッ! 見逃さなかったわッ!」
「な、なんだよ!?」
「どきなさい! その顔面赤点補習生をこっちによこすの!」
アクガリは下唇としっかりくわえてスカートを押さえつけ頭をぶんぶんと振る。
「青春の心に隠しごとなんていけないわ! 悩みがあるのね!? そうよね!?」
「アクガリの悩みはまさにお前の存在だろうな――」
アクガリの振動が背中に伝わってくる。
「学校はいいものなのよ! ダメならいいものにしようじゃないの!」
「俺が言うのもなんだが、もうちょっと生徒会女子の扱いを――」
コミンは胸元に指を潜らせたので、俺はアクガリの壁の役をやめる。
「え、ヤロ、そ、そんな……!?」
コミンに身を差し出すことになったアクガリは俺に悲しげな視線を向けてくる。
「ほーら! 猫耳をつけてごらん! アクりん頑張れー、っていう天使たちの応援歌が聞こえてくるでしょ!」
コミンがさりげなくアクガリのスカートに手を伸ばす。俺は悲鳴があがる前にこの場をあとにした。
「すまない、アクガリ――、今の俺にはこの悪魔は止められない」




