表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/121

27 それセクハラなんだゼ!ヤロのエッチ!


 マリアが学園に戻るのを見届けた。

 俺は川辺を歩く。


「――なんでだよ、あとちょっとで黒騎士をヴァーサー卿から救えたのに――ぅぅ」


 川の流れる音に重なって、岩陰から泣きすする声が聞こえる。


「あの、――アクガリ?」

「黒騎士か!?」

「――いや、ごめん、俺だ」

「ハロの――ヤロ……」

「隣、いいか? スレイは?」

「母国を救う手がかりないから国に帰ったゼ。オレももう帰らなきゃ……」

「そうか……」

「さっきはごめん、オレ、取り乱して、ムキになって――」


 アクガリはうつむき続ける。


「ヤロが黒騎士をやっつけるのも平和のためだから、当然なんだよな……。邪魔してマリアたちも怒ってるだろ?」

「なんで黒騎士に執着する? 悪い奴らだろ?」

「ヴァーサー卿の脅しに悩んでた黒騎士を助けるつもりだったんだゼ……」

「黒騎士を助ける? ヴァーサー・クーラーから?」

「うん。これ以上ヴァーサー卿に呪われる者が増えてはダメ、誰もオレの母国のように不幸にさせたくない――! だから、ここでアイツと待ち合わせして、ヴァーサー卿を追い出して……」


 アクガリはさっきまでの戦いの勢いはなく、膝を抱えて川の流れを見ている。


「実は、黒騎士が魔界に帰るとき、お前との約束を守れなくて悪かったって――」

「――く、黒騎士が? 本当か!?」

「黒騎士のピンチにも助けてくれたし、相談にも乗ってくれてうれしかったって。ヴァーサー・クーラーも囚人を諦めたらしく、黒騎士も任務から解放されたらしい――」

「良かった……。でも、もう会うことは……ないのか……」

「……かもな」

「それなのに、なんでヤロが落ち込んでるんだゼ?」

「べ、別に落ち込んでなんか――」

「黒騎士さんも笑顔で故郷に帰られたのですよ。アクガリさん、お気を確かに」

「スレイさん、いつの間に? 帰ったんじゃ?」

「わたくしはアクガリさんのお節介なおつきですの、ふふふ。アクガリさん、行きましょう」


 スレイが歩き出した。


「ヴァーサー卿をやっつける方法もなくなったし、ソォスィン国に帰る――。地道にフィシスに論破された国の再建を進めるんだゼ……」


 アクガリもゆっくりと立ち上がる。


「じゃあなヤロ、油断して魔女にやられ――ふわッ!」

「ほらッ!油断するなだろ!お前の方が危なっかしいって」


 アクガリが石畳につまずき態勢を崩し、俺がその肩を受け止める。


「……ちょっと、め、めまいが――……」

「らしくないな、気をつけろ――。こんなんじゃ家に着く頃にはケガだらけだ」

「――うん」


 アクガリは俺の顔を見上げ、目を細める。


「余計なお世話だゼ……ヤロめ」


 そっぽを向いたアクガリは俺からすぐに離れ、うつむく。


「…………ふん、おかしいな――!」

「な、なに笑ってるんだッ!? 感動のお別れのとき、人の顔見て笑うなんて!」

「い、いや違うんだ! アクガリってこんなに小さかったんだなって――!」

「ひっ! む、胸はこれからだッ!」


 頬を膨らませたアクガリはそう叫ぶと、走り去っていく。


「む、胸じゃない! 背のこと……、いや、なんでもない――」

「うっせ! 言い訳すんな! セクハラなんだゼッ! ヤロのエッチ!」


 アクガリはスレイに追いつく。


「また遊びにくるからな! ――って、勘違いするな! マリアたちに謝って、いっしょにスイーツ食べるんだ! じゃあなだゼッ!」

「ああ、帰っても、魔女やフィシスには手を出すなよ! アクガリが呪われないか心配だ!」


 いきなり立ち止まったアクガリは振り返る。


「――ヤロ」

「なんだ!?」

「……ぼそっと、黒騎士みたいなこと言うなだゼ」


 ●


「ごめんなさい!」

「何をしているメイド奴隷、そこは掃除するなッ! それに触れるな――ゥ!」

「ごめんなさい!」

「おい、メイド小娘がこんなこともできないのか――ゥ!?!」

「ごめんなさい!」

「見ろ、床が汚いから靴が汚れた! この靴高かったのだぞ――ゥ!!」

「ごめんなさい!今お拭きします……」

「その素足、高いのか!? 地下で売ってるのか! ?ガハハハ!」

「実に間抜けな小娘だ! これは何もない牢屋で愉快な見世物だ――ゥ!」

「(――あのお化けの腰のカギは……この牢屋の扉のカギ?)」

「今夜が地上制圧前の最後の晩餐だ! ワインを全部開けろ――ゥ!」

「あの、お注ぎします……」

「ほぉ、わかってるではないか――ゥ!」

「ワインが足りないぞ――ひっく!」

「これで全部です――、どこかに残ってないのですか?」

「ちょうどいい、メイド娘! 血だ! 生き血をよこせ!」

「わ、私の血!?」

「ほら、ナイフだ! 自分でやれ――ゥ!」

「……そ、そんな! 冗談ですよね? わたしにはまだメイドの役目が――!」

「どうせ今夜生贄になるんだ! 何を躊躇する――ゥ!」

「……わ、わかりました、ぅぅ――」

「早くしろ! 酔いが冷めちまう――ゥ!」

「どけ間抜けども!おい娘……そのナイフを返せ。そのナイフをこっちによこすんだ――」

「……え、あ、はい! お、お返しします!」

「てめぇ……、何水差してんだッ――ゥ!」

「妙に素直だからだ。――それとそのメイド服のポケットの中身も全て出せ。よからぬ物を潜ませてないか確認させろ」

「ククク! 何を警戒している? こんな細くて軟弱な小娘にナイフ一本で何ができるというのだ――ゥ!?」

「ガハハ! 態度と図体はでかいくせに、可哀想なくらい小心者だな――ゥ!?」

「おい、今笑ったやつはみんな斧を取れ……わからせてやる……ヒックッ!」

「ガハハハ! 酔っ払い同士でムキになったぞ! いいぞ、やれ! ……ヒックッ!」

「ギャハハハ! 堕せ! 魂を奪い合え! ……ヒックッ!」


「(……)」

【作者つぶやき】作品ウラ話。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ