17 メス娘がパンツで買収したガル!
巡回している番兵魔族たちの目を盗んで別の地下への入り口を進む。
ガルナビについていくが、次第に悪路となっていく。人がかがんめば歩けるほどの細い配管のような、じめじめした道が続く。
「ガルナビ、以前のお前らの体なら通れたが、今の俺たちじゃ腰を悪くするだろ――まるで獣道だ……」
「はぁ、はぁ、メスの体はガルの計算違いだガル。でもこの道は騎士ちゃんにバレてないから安全だガルよ……」
ようやく配管を抜けると、見たことのある場所に出た。前と同じ地下牢の近くに出た。
「ここだガル! この扉の向こうに囚人がいるガル!」
「……ついに」
俺は古びた小さな柵の扉に手を触れる。
扉に電撃が走った。俺は手を引っ込める。
「……ッ!? 痛ッ!? なんだこれ? 結界か?」
触れた結界が赤く光り、異常を知らせている。
「え、おかしいガルッ! こんなとこに騎士ちゃんの結界があるわけないガル!」
「しっかり罠があるじゃないか! くそ!」
「ま、また騎士ちゃんたちの待ち伏せガルか!?」
「そんなはずはない! マリアたちは街だ! 誰かが手招きしている!」
俺はガルナビを引っ張り、岩陰に滑り込む。
遠くから扉が乱暴に開く音と、大きな足音が迫ってくる。
結界が呼び出した番兵魔族たちが現れ、斧を携え目的の牢屋の前で巡回を始めた。
2体が二足歩行、1体が宙に浮いた番兵だ。マリアたちの上級従魔族よりも小柄で動きもにぶい。
「なんだ、ザコで頭が悪い番兵だけだガル。またカースなガルにやられに来たガルね!」
俺とガルナビは黒騎士に変身する。
「ガルナビ、加減はしろよ! やっつけずに追い払うだけだ! そしたらすぐに牢屋を開けて囚人を引きずり出す!」
「わかってるガル!」
ガルナビはうざったそうに俺から離れる。そして身をかがめながら番兵魔族たちの背後に忍び寄る。
背後からガルナビに不意打ちされた番兵1体は黒い火炎に吹き飛ばされた。壁に叩きつけられ、斧は地面に刺さる。
他の2体は何が起こったか把握できていない様子で、周囲を警戒してあたふたしている。
「け、のろまだガルね! 上だガルよ!」
ガルナビはコウモリのように天井に張り付き、再び口を開けた。番兵たちは上空のガルナビに気が付き、斧を盾に防ごうとしている。
俺はガルナビに気を取られている足のある番兵1体に背後からトウガラシ爆弾を投げつける。
その番兵はよろめき、斧を振り上げ反撃しようとするがそのまま崩れ落ちた。
「番兵のガルボロ、ハッフンめ、見たかガル! ひざまずくガル!」
「侵入者――発見」
「だ、旦那! 後ろだガル!」
「――ッ!?」
攻撃をかわし無傷の浮遊する番兵が、倒れている番兵の陰から俺に向かって飛び出した。
その両手は斧と一体となっていた。一撃目の片手は後ろ飛びで避けた。
しかし、横ふりで迫りくる片手の二撃目は避けることが出来ず、俺は手のひらでそれを受け止める。
「痛ッ! うぐっ!」
俺の脚が斧を受け止めた衝撃で地面に食い込み、腕の装甲にヒビが走る。
番兵は俺を目がけてもう一方の斧を振り上げる。
「ガルナビ、早く!」
「番兵パリクめ、背中ががら空きだガル!」
ガルナビの放ったバレットで俺と番兵は一緒に吹き飛ばされる。俺は地面に転がる。
背中に攻撃を受けた浮遊する魔族は地面で横たわり、ぐったりと伸びている。
「旦那、早く起きるガル! 牢屋はこっちだガル!」
「加減しろって言ったよな!」
俺は立ち上がる。横目で斧が動いたのを見逃さなかった。
「――!? いや、待て!」
倒した番兵たちが起き上がる。損傷した鎧が再生し、斧が巨大化している。
「そんな! 番兵は自力で再生できないはず! まさか……!」
「だ、旦那! 伏せるガル!」
空間を切り裂く衝撃波が俺とガルナビをかすめる。
間一髪で直撃は避けたが、爆風に吹き飛ばされ俺とガルナビは地面にたたきつけられる。周囲の岩がわるで斬られたような傷を残している。
「これは剣撃!? この攻撃……まさか!」
「ガルガルガル! ちょうどカースでけちょんけちょんにしてやりたいと思ってたところだガル!」
そこには2体の魔族と小さな人影があった。
俺は目を疑った。
「――(ギロリ)」
「ぺコーンッ!」
いつもの制服姿の長津田さん、戦闘スタイルのサリスマリス、カマを振り回すペッキンコッキンが復活した番兵たちの背後から現れた。
サリスマリスが歩み来る長津田さんの前に出る。
「――(ぶんぶん)」
「いいえ、私も魔法が使えます! 学園の平和のため黒騎士を追い出さなきゃ! だからツメの子、あの人の言いつけで止められてても私にも協力させて!」
少し考えたサリスマリスは長津田さんにうなずく。
「ペッキンコッキン! なんで正義の味方してるガル!? ガルを忘れたガルか! 同じお嬢さまの同志だガルよ!」
「――ダメだ! 正体を話せば呪いが移る!」
俺はガルナビの口を抑える。
「ペッ! ぺっ!」
「なんだとガル! メス娘がパンツでペッキンコッキンを買収したガルか!」
「――なんだとッ! くっ! な、長津田さん、ここは危険です! 地上へ戻ってください!」
「夢見が丘を守るのが生徒会の役目。あの人の守ったこの街を守ります!」
「ガルナビ、ダメだ、撤退す――痛ッ!?」
「メス娘、おとなしく人質に捕ま――ぎゃるッ!? 体が、し、痺れるガル!?」
「う、動くと2人ともこれでお仕置きします! わたしは厳しい風紀委員ですから!」
俺とガルナビの体に封殺札がくっついている。長津田さんが俺の作った封殺札を構えている。
「今です! お化けのみんな、がんばって!」
さらに長津田さんが倒れている番兵たちを治癒札で治癒した。
「そういえば、あのメス娘は旦那が生徒会室に隠していた封殺札とかを見つけて勉強していたガルよ!」
「……っ! 長津田さんに魔族を回復されちゃキリがない!」
「だ、旦那! 危ない――!」
「――ッ!?」
サリスマリスが俺の背後に忍び寄り、ツメを振り上げていた。
「くッ!」
身構えた俺とツメを振り上げたサリスマリスとの間にシールドが発生した。サリスマリスはシールドにツメが阻まれて、俺から退いた。
しかし、それはガルナビの発生させたシールドではない。
「セラセラ!」
聞き覚えのある鳴き声が聞こえる。
サリスマリスが退くと、1匹のソウルが宙に浮遊していた。
「ソ、ソウル? ここで何をして!?」
「セラセラ!」
「ソウルめ、ガルのシールドを真似して、旦那を助けたいって言ってるガル!」
続いてソウルは、俺に襲い掛かるペッキンコッキンに封殺札を投げ、動きを止める。
「べべべべべッ! ――えぽけ……」
舌を出してペッキンコッキンは地面にぽとりと落ちる。
「助けてくれるのか!?」
「セラセラ!(こくり)」
ソウルは元気にうなずくと、治癒の護符を俺の顔に貼り付けた。
「ぅ……ありがとよ――」
「ソウルめ、今度は長津田のメス娘の真似をしたガルね!」
「セラセラ……ケセラセラ!」
「なになに? クーラーさまの演説に感動して悪い奴を見たら味方せずにいられなくなった、って言っているガル! それに生徒会にはかなりの恨みがあるみたいだガルよ!」
「――そ、そうか! せっかくだし、今は協力してくれ!」
ガルナビはサリスマリスに照準を合わせる。ガルナビの吐く黒い火炎に長津田さんを守りながらのサリスマリスは苦戦している。
ソウルと俺のトウガラシ爆弾の連携攻撃により、番兵魔族たちが地面に倒れた。
サリスマリスは攻撃してくるガルナビを無視して、執拗に俺に襲い掛かる。
「――(斬ル)」
「ぐっ!?」
それまで対峙したことのないそいつの仮面の下の狂気で、俺は後退りする。
目の前からサリスマリスの姿が消えたと思えば、すでに背後でツメを振り上げている。
それをあてずっぽうな横っ飛びで避けたが、次の瞬間には広範囲を切り裂く刃の閃光が目の前に広がる。
無抵抗に俺は吹き飛ばされる。
「ぐあッ!」
「だ、旦那ッ!?」
全身の痛みを押し殺し、上体を上げると、目の前には恐ろしい形相の仮面が俺の首元にツメ先をあてがっている。
「――(堕ス……)」
「ちッ!」




