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9 VS番兵

 番兵魔族たちが武器を携えて向かってくる。


「神殿学園の番兵たちは侵入者を排除するのが使命です」

「んなこと知ってる! とにかくやっつけて逃げ出そう! マリアたちが来ないうちに!」

「旦那、伏せるガル!」


 振り向くとガルナビが口を開けた。


「これでも食らうガル!」


 そう叫んだガルナビの方から巨大な火炎が放たれて、直撃した番兵魔族が黒い炎に包まれ吹き飛んだ


「やったガル! 黒騎士はすごいガル! これで囚人たちなんて楽に解放できるガル!」

「ふふふ、素晴らしい威力です。……おや?」


 倒れた番兵魔族が再び動き出す。


「……邪悪な黒キ騎士――」

「……神殿を汚シタ――」

「……殲滅を開始スル――」


 そして斧を構えて、突撃してくる。


「番兵たちが回復した!?」


 空間を切り裂くようにして何者かが姿を現し、それは俺たちの目の前に着地した。


「ちっ! まずい!」


 戦闘スタイルのマリアたち騎士が現れる。


「黒騎士を発見した、やはり神殿学園に潜んでいたです」

「黒騎士たち、裏切りエリートを返すなの!」

「ハロを返すぅ!」


 マリア、ポポ、クゥ、番兵魔族が俺たちに対峙する。


「見つかってしまったか!」

「ハロをどこに隠したです?」

「さ、探さなくていい! 今探しても絶対に見つからないから!絶対に!」

「――返す気がないですか、なら……」


 いつもより冷酷な顔のマリアがパルスの呪術を使い、高速移動して俺に迫りくる。


「――聞き出すだけです」

「くッ、逃げるぞ!」


 踵を返すが、あっという間にマリアが俺の行く手を阻む。


「――早いッ!」

「先生! トウガラシ爆弾で目くらましさ!」


 俺は雄太と同時にトウガラシ爆弾を投げ、黒煙でマリアの視界を奪った。


「逃がさないです!――ッ!?」

「マリィ! 危ない!」


 黒煙の中から火炎が飛び出しマリアに直撃する寸前で、バリアが展開されマリアを守った。


「……ち、ガルの攻撃が防がれたガル! 面倒なバリアだガルね!」

「ウ、ウチのバリアがまた一撃で粉砕されたなの!? ウソなの!?」

「これは日ごろの仕返しだガル! たくさん受け取るガル!」


 ガルナビが再び火炎を吐き出す。


「みんな避ける! クゥのかくれんぼのおまじなぃ!」


 ガルナビの火炎はマリアたちを通過して、見当違いの場所に外れた。


「よし! かくれんぼ成功ぅ!」

「騎士ちゃんめ、許さないガル! 今日こそは――って、旦那、ガルはまだ戦えるガル!離すガル!」

「もう十分だ! 今のうちに逃げるぞ!」


 俺はガルナビを結界の外へ押し出し、殿しんがりとしてトウガラシ爆弾を放る。


「――ッ! 黒騎士、待つです! そのトウガラシ爆弾、ハロから奪ったですか!? ハロはどこに!?」


 俺たちは急いでマリアたちの視界から消えた。


 ●


 裏道に詳しいガルナビの後ろに付いて走り、ここまで来れば大丈夫とガルナビが言った。

 たどり着いた校舎裏で、ガルナビ、雄太はその場で倒れこんだ。


「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ……」

「もう動けないガル! 生まれて初めて足でこんな走ったガル!」

「はぁ、はぁ、逃げ切れたようだな」

「ここまで来れば大丈夫です。追ってきません」

「ふぅ、休憩だガル! メスの足がパンパンだガル!」


 ガルナビは黒騎士から女子生徒の姿に戻る。そしてルア、雄太、俺も戻る。


「騎士ちゃんをやっつけるほど強力な黒騎士だけど、ちょっと暴れただけですぐソーサリィが疲れちゃうガル……」

「カースの力はソーサリィの消耗も激しいようです」

「もうダメ、少し休憩するさ……」

「コミンはどういうつもりでこんな厄介な力を俺たちにつけたんだか……」

「女体化で騎士の皆さんを欺く変装の意図があったのでしょうが、さきほど僕たちの顔もマリアさんたちに見られてしまいました。もう女子生徒としても学園にもいられませんね」

「ああ、顔を覚えられてしまったからな。それに女子生徒の中に黒騎士が紛れ込んでいるのだから、マリアたちは学内を探し回るだろう。――とりあえず学園から離れよう、次の作戦はそれからだ」


 雄太の青ざめた顔が俺の背後に向けられた。


「――せ、先生、う、後ろ……」

「――ッ?」

「そこの女子たち、待つです」

「……ッ!? マ、マリアさん!?」


 マリアたちが疲労状態の俺たちを見つける。


「止まるなの! ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ……」

「くぅ、はぁ……」

「マジかよ! 追いかけてきやがった!?」


 制服姿のマリアたちが立ちふさがる。


「げ、この先は行き止まりさ! どうするさ!?」

「がぅ……疲れたガルゥ……、もう戦えないガル……」

「カースの力もない! 戦っても、必ず捕まる――!」


 俺は身構え、考えを巡らす。

 しかし、マリアがのしのしと近づいてくる。


「あの、その……!」

「そこの女子生徒たち、早く教室に戻り授業の準備をするです」


 マリアは俺の横を通り、すれ違いざまにそう言った。

 ポポ、クゥも同じように通り過ぎる。


「――え?」

「もう授業が始まるチャイムが鳴るです。規律正しい学園生活を心がけるです」

「――あ、はい」


 マリアたちは走り去る。


「あの黒騎士4人、まだ近くにいるかもなの!」

「生徒が襲われないうちに手分けして捜索するです」

「そこらじゅうを探すぅ!」


 マリアたちが消えた。


「た、助かった――のか?」

「ふふふ……さすがヴァーサー卿です。呪いのすべてに意味がある」

「なんでだ!? 顔を見られたのに、どうしてマリアたちは俺たちが黒騎士ってことに気がつかない!?」

「カースの能力ですね。以前の姿ではマリアさんたちに面と向かって戦闘を仕掛け、対峙することはできませんでした。しかし、今の姿はどうでしょう?」

「変身すれば、マリアたちと衝突できる――、しかも顔でバレない……」

「はい。この変身によって正体を隠すことができています」

「俺がハロであることが絶対にバレないってことか――やりたい放題じゃないか――」

「いいえ、絶対ではないでしょう。黒騎士であることの確信的な証拠を提示しない限り、黒騎士と女子高生の貴方を結び付けることができないだけの仕掛けです」

「……ヴァーサー・クーラーの正体が金城コミンであることをマリアたちが気付かないのと同じ」

「その通りです。外見だけで正体を見抜かれることはないでしょう」


 ルアが真剣な顔で付け加えた。


「このソーサリィを調べられない限りはですが」

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