49 裏切り救世主 VS 騎士
夢見が丘を守る結界の埋め込みも済んだ。未知の魔族に対する武器も整った。
ちらほら残っていた町中の光も、完全に消えた。
「異常事態には騎士や従魔族はまず神殿学園に駆けつける手順です。マリアさんたちもすぐに異常を感じ取り、学園にやってくるでしょう」
ガルナビに生徒魔族たちを昇降口に集めさせた。夢見ヶ丘の全体の観光地図を囲んで魔族たちの配置や脱走経路を計画立てた。
作戦はガルナビが通訳して生徒魔族たちに聞かせた。
説明が終わると魔族たちはお互いの顔に泥で模様を書き、武器を焚き木にくぐらせる。
それぞれの儀礼を終えた生徒魔族から茂みにひそみ、脱走作戦開始の合図を待つ。
ガルナビは俺が準備した台本を何度も読み返している。
「深夜0時のパーティ開始までもう間もなくだ。ガルナビ、そろそろ作戦通りに頼むぞ」
「準備は完璧だガル! ハロの旦那、ガルたちの運命、預けるガルよ!」
俺とルア、雄太も茂みに隠れる。
じっと突撃のときを待つ。
俺は時計の針が0時を指したのを確認する。
そして、金城コミンから渡されたラブレターを片手に校舎へ進む。
茂みに身を潜めているガルナビ、生徒魔族たちが俺をじっと見ている。
トイレに潜んだペッキンたちは武者震いしながら、息を荒げて俺を見つめている。
校舎の前に立つと、ラブレターのハートのシールが赤く燃え上がり、封印が解けた。
俺はラブレターを開く。
校舎を見上げる。
この夢見が丘学園に、果たして明日が来るのか。
それとも、ヴァーサー・クーラーに滅ぼされてしまうのか。
俺は手元の便箋に視線を落とす。
学園の結界を論破するための呪文が書かれていた。
あの日、あの時のように、踵を返し、歩き、振り返る。
風が消えた。
深く息を吸い込む。
『呪い仕掛けな女神たちを、汝――、愛することなかれ』
俺は振り向き、遠くでしんとたたずんでいた校門を注視する。
やがて、校門から小さな火花が散る。
その火花はだんだん激しくなり、大きな爆発音とともに白い煙が上がる。
そして、校門に埋め込まれていた学園の校章が砕け散った。
「にょ!?」
論破された校門の結界から拳の大きさほどの精霊が飛び出し、驚いた表情をみせ空中でキョロキョロし始めた。
「……にょ――えぽけ」
生徒魔族たちは満足そうに散っていくと、地面でぐったりしている精霊が残されていた。
「やったガル! 旦那、校門の結界が消えたガル! 精霊をやっつけて結界を論破したガル!」
俺は茂みの中に滑り込み、喜んでいるガルナビといっしょに身をひそめる。
「――今だ! 校門が開いた! 生徒魔族を連れてパーティーに急げ!」
ガルナビや生徒魔族たちがそこら中から飛び出し、校門へ走る。
しかし、ガルナビたちの行く手に、巨大な炎の弾丸がさく裂した。
これも想定内だ。
爆発の煙が風に流されると、そこには小さな騎士たちの姿があった。
「――なにごとですか」
俺は自然なタイミングで騎士の横に飛び出す。ルアが俺に続いて姿を現わす。
「マリア! ポポ! クゥ! 何が起こったんだ!?」
「見てわからないガルか? そこの校門を顔パスして、夢見が丘の街へ夜遊びしに行くガル!」
「まったくあきれるです。魔族たちがいくら束になってかかろうと、校門の結界はびくともしない根性で鍛えられているです」
「大変なのっ! 校門の結界が消えているの! 精霊が堕ちてるの!」
ポポが地面でのびている結界の精霊を指さしている。
「なんです?」
「ええ!? 結界が萎えてるぅ!? にゃんで!?」
「ななな、何だと! いつの間に!? 魔族め!」
「おや、困りましたね」
「生徒魔族ども! 立ちはだかる騎士ちゃんたちを倒して脱出するガル!」
校庭を埋め尽くすほどに集結した生徒魔族たちが土ぼこりをまき上げながら、地響きと怒号を撒き散らし俺たちへ向かい突進してくる。
マリアが呪文を唱えると、騎士たちが従える訓練された従魔族3体が斧を手にして現れた。
……よし、予定通りだ。
「マリアさんたちは校門の守りを頼む! 無駄だろうけど、まず俺が生徒魔族たちを説得しにいきます!」
手を取り合い輪を作ったマリアたちは、堕ちている精霊を囲み、呪文を唱えはじめる。
「可能な限り、この精霊を再生する時間をかせぐです」
「任せてください! みんなの従魔族を貸してくれますか!?」
俺はガルボロカルホ、ハッフンパッフン、パリクナリクを連れて行くことの許可をもらうと、その従魔族3体は俺の後ろについて、ガルナビたちに対峙する。




