50 オーウェイ!サーヴェイ!
まずはマリアたちの上級従魔族であるガルボロカルホ、ハッフンパッフン、パリクナリクの3体をやっつける必要がある。
他の従魔族や番兵魔族と違って、戦闘力も知性も高く、マリアたち騎士と連携されると、ガルナビたちは一瞬で倒されてしまうのは目に見えている。
そのガルボロカルホたちを率いてガルナビたちのゆく手を阻む。
「お前らー! 止まれー!」
ガルナビを先頭にした生徒魔族ご一行は、俺と距離をおいてぴたりと立ち止まる。
生徒魔族に対峙した上級従魔族3体は武器を取り出し構え、忠告する。
「許可ナイ、学外への外出は重罰」
「速やか二、所定の部屋に戻るベキ」
「さもなくバ、武力を持って、ソレを阻止す」
その言葉を聞いて、ガルナビがにっこりする。
「それは怖いガルね! でもハロの旦那、今日のガルたちは一味違うガルよ!」
校門で呪文を唱えているマリアたちが、こちらの様子を心配そうに眺めている。
「ビグニティのデクの坊たちにソウルへの引導を渡してやるガル!」
ガルナビはウィンクする。
ぬいぐるみめ、さっそく台本にないセリフを勝手に叫んでやがる……。
学園の中ではマリアたちの従魔族が優勢だ。俺がしっかり援護しなければガルナビたちはすぐにやられてしまう……!
「騎士ちゃんの犬どもめぃ、ひざまずくガル!」
ガルナビが口から吐いた火炎はガルボロカルホに命中する。
しかし、ガルボロカルホは火炎が当たった肩をぽりぽりとかくと、ガルナビに向けて口を開け、同じように巨大な火炎を吐き出した。
巨大な火炎はガルナビの他にもペッキンコッキンを巻き込み、爆風を巻き起こした。
「ギャルルル……――! プシュ~……」
「ぺペペッ!? エポケ~……」
「(マジかよ、弱すぎないか――)」
ガルナビ、ペッキンコッキンが地面にぼとりと落ちた。
ガルボロカルホと体格のいい生徒魔族が激突する。
伏兵として忍んでいたサリスマリスが、こっそりハッフンパッフンの足元に忍び寄り、脚を切りつけている。ハッフンパッフンは片膝をつき、生徒魔族に押し倒された。
「……しょうもない魔族め、とどめだ、受け取れ!」
俺はガルボロカルホに倒されたガルナビ、ペッキンコッキンに追い打ちをするかのように、封殺札を投げつける。
「ギャルルル! 旦那、痛いガル――って、あれ、元気になった!?」
すぐにガルナビ、ペッキンコッキンは景気よく飛び上がり、俺を突き飛ばして、ガルボロカルホへ復讐しに突撃した。
この封殺札は攻撃ではなく、魔族を回復させる再生術式を施してある。
俺は倒れている生徒魔族に回復の封殺札を投げつけて回る。生徒魔族はすぐに元気よく立ち上がり戦線復帰する。
また、混乱の中のどさくさに紛れて再びサリスマリスに足を斬られたハッフンパッフンは完全にバランスを崩し、仰向けに転倒し、地響きを起こす。
それを確認してトイレから飛び出してきた10体ほどのペッキン族が、ここぞとばかりにハッフンパッフンに群がり、殴る蹴るを始めた。
「ようし、ようし! ――って、おや? どうやら堕したがりな能無し援軍の到着だガルね!」
味方の従魔族たちの危機を救うため、校舎内からマリアたちの部下である番兵魔族10体ほどが、編隊を組んで戦場に参加してきた。
興奮気味のガルナビは、今は味方として援護するサリスマリスを狙って火炎を放った。サリスマリスがそれをよけ、ガルナビの火炎が俺の足元に着弾して、爆発する。
「ぐあッ……!」
「――(ギロッ)」
「ち、外したガル! まだまだ食らうガル!」
「――ッ! おいガルナビ、何考えてやがるッ!」
調子に乗ってケラケラ笑うペッキンコッキンもサリスマリスに斧を投げ始めた。そして、あろうことか生徒魔族たち全体が俺とサリスマリスを裏切り始めた。
「お前ら、バカか!? こんなときにッ!?」
「ガルガルガルッ! さあ、騎士ちゃんの従魔族ども、いくらでもかかってくるガル! 普段のお返しだガル! ガルガルガルッ!」
「(痛ッ……ま、まさかあいつら、八百長ってこと忘れてないか!?)」
生徒魔族たちと番兵魔族たちが激突した。
上級従魔族のガルボロカルホ、ハッフンパッフン、パリクナリクは、さまざまな生徒魔族に囲まれながらも、斧を振り回し抵抗している。
サリスマリスの闇討ちと、俺の封殺札の回復で、番兵魔族たちは生徒魔族に不利を強いられて、次々と倒れていった。
ペッキンコッキンはペッキン族を引き連れ、従魔族たちに群がり骨のカマで殴りつけている。
俺は、これほどまで生徒魔族たちが生き生きとしている姿は見たことがなかった。
気が付けば、煙を吐いて倒れているガルボロカルホの腹の上で、ガルナビが勝ち誇っていた。
「やったガル! みんなやっつけたガル!」
「(ガルナビ、もう少し俺には加減しろよな――)」
ガルナビは悪気のない顔をした。
「見てたです。しかし、生徒魔族たちが訓練された上級従魔族を打ち破るとは到底考えられないです。必ず、裏に何か仕掛けがあるはずです」
「そっ、そうすかね?」
「そこまでだガル! 騎士ちゃんたち残念だったガルね! 結界は復活させないガル!」
「ペクソッ!」
遠くでガルナビや生徒魔族たちが叫んだ。
「だ、脱出させないなの!」
「阻止するぅ!」
マリアたちは小さな鍋を風呂のよう沸かして結界の精霊を回復させようとしていたようだ。結界の再生をあきらめた騎士たちは校門を守るように立ちはだかる。
「今すぐ神殿に戻れば情状酌量の余地を認め、お仕置きを軽くしてあげるです」
「こっちのセリフだガル! 道徳のお勉強が必要なのは騎士ちゃんの方だガルね!」
「ふざけたチビです……、即刻拘束してデス・スタディーお仕置き教室に軟禁するです」
「それはとっても怖いガルね! でもその前に……、これでも食らっちゃうガル――!」
ガルナビとペッキンコッキンが指を振り上げ呪文を唱える。
「ちちんぷいぷい……の~……」
「……ペコキッ!」
マリアたち騎士は警戒して身構える。
「……なんです!?」
「な、なの!?」
「はぅ!?」
2匹の魔族が楽しそうに演技をしたのを確認して、俺はマリアたち騎士のソーサリィを弱める罠を発動させた。
マリアたち騎士には見えない赤い鎖が騎士たちの手足を束縛する。
「――あれ、何も起こらない? もしかして失敗なの! ぷぷ、ダサいなの!」
「バカちんたちッ、降参するぅ!」
「何を企んでいるか知らないですが、殲滅される覚悟はいいです?」
震えて不安な視線を向けてきたガルナビたちに、俺はゴーサインを出す。
「お、オーウェイ! サーヴェイ! け、計画通りっていうガル! と、突撃だガル!」
ガルナビ忘れていないだろうな。
マリアたちは大切な仲間だ、抜け出すためでも傷つけちゃいけない、罠の効果で痺れて動けなくなるまでの時間稼ぎをするんだ。




