41 オレがお嫁さんッ!?
「……って、お、オレがお嫁さんッ!?」
「ガルルルルッ!」
ガルナビがよくしゃべる小さいほうの恋落ヶ丘学園の女子生徒に向かって頭突きを繰り出すが余裕でかわされる。
「このチビどこから!? ヤロの従魔族か!?」
「魔女にも生徒会長にも、関わっていいことはない! あんたらのためだ! 呪われたくなきゃやめろ!」
俺は痛む腹を押さえながら説明する。
振り上げたバットにオレンジ色の炎が巻きつき、呪術によって斧へと変化し、俺の脳天めがけて振り下ろされる。
「ソーサリィ攻撃!? や、やめろ!よせ!」
「――(斬る)」
サリスマリスが飛び出し、繰り出したツメが女子生徒の斧を切り裂き、同時に前髪もかすりとる。
「――ぅッ! もう1体の従魔族か!?」
「サリスマリスやめろ! そこまでだ!」
小さい女子生徒から切り取られた前髪が舞い上がり、恋落ヶ丘の風にさらわれていく。
「え!? な、な、あわわわわ!? うっそ! オレの髪!?」
切られた前髪を片手で隠しながらジャンプし、もう片手で宙に舞う髪を掴もうとするが、みな丘を越えて飛んでいき、消えていった。
「……な! ……うっそッ!? ……オ、オレの髪が……ぅ……うっそ!?」
髪を切られた女子生徒はもう一人の女子生徒が差し出した手鏡を奪い取り、前髪をしきりに気にする。
「大丈夫ですよ。こっちのほうが、今どきのあざとい女子っぽくて、かわいらしいです」
「ほんとか? ほんとなんだな? また、いつもの気休めの慰めじゃないんだな!?」
「わたくしじゃありません、あの方がそう思ってらっしゃいますの」
その言葉を聞いた小さい女子生徒は、思い出したように胸を張って俺をにらみつける。
「ヤ、ヤロ、よくも勝手にオレの髪をかわいい女の子にしやがったな!? そ、それに、か、かわいいのかッ!?」
手鏡をしまうとスカートをはたき、潤んだ瞳で八重歯を見せる。
「だ、旦那! 思い出したガル! あ、あれはソォスィン国を支配していた血も涙もないお家柄の騎士ちゃんだガル! ガルの仲間も何人も堕されたガル! に、逃げるガル! マリアちゃんたちより狂暴だガル!」
遠くから聞こえた『喧嘩よ、こっち!』 という女性の訴えで警備員が息を切らしながら丘を登ってきた。
「……ってんだ! ……に、逃げるんだぜ! フィシス兇徒にバレちまうんだゼ!」
恋落ヶ丘学園の女子生徒たちは慌てて走り去る。
「つかまると面倒だ! 俺たちも逃げるぞ!」
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しばらく公園を歩いて金城コミンを探し回っていた。
散歩で歩いている人影がなくなり、次第に夕焼け空が広がっていく。
森林に挟まれた通りには、夕方が終わりかけ、夜が訪れようとしている。
「くっそ、コミンめ、どこにいきやがった!?」
突然、背後のサリスマリスが俺の目の前に出て来た。
「――(こくり)」
「なんだ?」
「むっつり野郎に言われなくてもわかってるガル!」
「どうした!?」
「アレに囲まれたガルよ!」
ガルナビは俺の頭の裏に隠れて、震えている。サリスマリスはキョロキョロして周囲を警戒する。
「なんだ!? フィシス兇徒か!?」
「違うガル! さっきのいざこざをかぎつけて、アレが群れで襲ってきてるガル!」
足元に黒い霧がただよい始める。
「――!? なんだ、この黒い霧はどこから!?」
そして、一瞬にして視界が真っ黒に奪われ、霧が晴れるとそこは見たことのない歪んだ世界だった。空想世界のようだ。
空中に巨大な子供のおもちゃや、ぬいぐるみ、ピアノ、お菓子が浮かんでいる。天が岩で隠れている。
「なんだ? またどこか変なところに迷い込まされたな!」
まるで絵本の中で見る魔界のような世界だった。
「……セラセラ――」
「――何か、いるのか?」




