表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/121

34 暴力至上主義 暴君マリアちゃん

 ヴァーサー・クーラーが一体街で何をしようと企んでいるのか、まともに口がきける魔女の手下といえばアイツしかいない。


 ルアが教えてくれた裏校舎の階段から地下通路が続いていた。暗い地下道をひとりで進んでいた。魔族の気配はまったくない。


「――誰かいないか!」


 ポケットにあるトウガラシ爆弾を握りしめる。


「昨日は悪かった、仲直りをしよう!」

「なんだ、ハロの旦那ガルか! 見回りの騎士ちゃんかと思ったガル!」


 聞き覚えのある声の返答があり、暗闇から姿を現したそのガルナビは数学の教科書を放り投げる。

 すると、隠れていた生徒魔族たちが次々に現れる。

 カマの化け物のペッキンたちは、俺の姿を確認すると勉強道具を放り投げ、部屋の隅のビデオゲームを囲んで騒ぎ出した。床には、漫画やおもちゃ、ガラクタが散乱していて、どれも生徒から盗んだものと思われる。


「旦那も晴れてお嬢さまの下僕になれたガルね?」

「ああ、そうだ。マリアたちが生徒会室で倒れている間にいろいろ教えてほしい。俺もクーラーの役に立ちたいからな」


 人質に取られた長津田さんを救うため、なんとかこいつら魔族やヴァーサー・クーラーの弱点を探り出したい。


「まあそんな急がず、騎士ちゃんたちを倒す時間はたっぷりあるガル! そこに腰掛けてくつろいで欲しいガル! 今お茶を出すガル!」

「ん? なんだ――これは――」

「ガル! ハロの旦那! それ踏まないよう気をつけるガル!」


 床にはクーラーの姿が映った写真が無数に散乱している。


「これからはお嬢さまを支える同じ教徒として旦那はガルと仲良くすべきだガルね!」


 ガルナビは学食で販売されている、お菓子やジュースやパンを俺の膝の上に置き、得意げになっている。


「こいつも犯人だったか――。しかもどれも賞味期限切れだ」

「そんなに難しい顔しないで、これからは戦友だガル! 騎士ちゃんをあざむいて、楽しくいこうガルよ!」


 ガルナビは黒光りする物体をぬいぐるみのように抱きかかえている。夜な夜なはいずりまわる嫌われ役のぬいぐるみだ。

 ガルナビはそれの腹のぜんまいを巻く。巻き終えると手足や触覚がもぞもぞと動き出す。


「う、うげぇ……」

「ゴキちゃん! ほら、ハロの旦那に挨拶するガル!」

「ずいぶん、な、仲いいんだな、それと……」

「”それ”じゃないガル! ガルの大切なファミリーだガル!」

「あ、そ、そうだったのか、悪かった……」


 俺は差し出されたゴキちゃんをなでる。それを見てぬいぐるみは満足する。


「クーラーさまは何よりも家族を大切にしろって教訓だガル!」


 こいつらのクーラーへの妄信もうしんはすさまじい。クーラーが学外に出て何をしようとしているのか、こいつなら知っているだろう。


「ガルは暴力は嫌いだガル。仕方なく旦那にちょっかい出したガルよ。下僕を誓った生徒魔族はクーラーさまのために全力で身を削るガル。制服を着た女神さまの盾となり剣となる、旦那も同じだガルよ」


 ガルナビの差し出したブドウジュースを受け取る。

 そして、さりげなく聞いてみた。


「ヴァーサー・クーラー、金城コミンが街に出ると言っている。何をするつもりなんだ?」

「ガルガルガル! お嬢さまのことはこのガルが一番よく知っているガル! 何でも訊いてほしいガル!」


 しかしガルナビは俺を見つめると、そっぽを向いた。


「でも、お嬢さまが街で何をするのかは旦那には言えないガル。旦那の周りには敵の騎士ちゃんたちがうろちょろしているガル」


 ――ち、惜しい。


「旦那がヘマしておどされ秘密をバラしちゃうかもしれないし、それにガルは旦那を信用したわけじゃないガル」


 少しはかんがあるじゃないか、このぬいぐるみ。


「ふん、どうせお前も知らされてないんだろ? クーラーに信用されていないんだ。弱いヤツに秘密を教えてもすぐ捕まって脅され簡単にばらされるのがオチだ」

「ガル!? ガルはお嬢さまの側近だガル! 一番信頼をいただいている下僕だガル!」

「そうには見えなかったけどな。口では何とでも言える」

「そこまで言うならいいガルよ! ガルだけが知っているお嬢さまの秘密を教えるガル!」


 よし、乗ってきた――


 ガルナビはたくさんのふせんが挟まる大きなメモ帳を取り出す。


「お嬢さまに仕えるガルの重要かつ困難な任務の数々を聞けば旦那も納得してくれるガルね」


 俺は本当かと驚きの表情をガルナビに向ける。


「ガルガル! お嬢さまの今後の秘密の計画の全貌ぜんぼうを教えてあげるガル!」


 俺も生徒手帳のメモ欄を開き、ペンを構え、ぬいぐるみの発言を今かと今かと準備するように見せる。さらに得意げになったぬいぐるみは咳払せきばらいをしてもったいぶる。


「まずは予備知識だガル、過去にお嬢さまが暴君マリアちゃんを抱きしめた回数は――……ガルッ!?」


 ガルナビは何かに気づいたように目を見開き、メモ帳を口の中に押し込む。


「――ん? ――痛ッ!」


 ぺしんと俺のほほに柔らかな何かが触れた。


「いたずら魔族の勉強部屋にたった一人で乗り込むなんてお馬鹿にもほどがあるです、ハロ」

「誰だガル!?」

「マ、マリア先輩……俺はそんなつもりじゃ……」

「捕まえたです、生徒魔族のチビ。ヴァーサー卿について聞きたいことがあるです」

「暴力至上主義の暴君騎士なマリアちゃん!? この前のイタズラのお仕置きは済んだガル!」


 ガルナビはマリアに向けて震え声で言った。


「い、今道徳の教科書の音読をハロの旦那に聞いてもらってたガルよ! ……ね、旦那!?」

「そんなことより、黙って生徒会室に来るです」

「ガルにちんけな拷問はきかないガル! ……がるるぅ、痛いガル! 引っ張るなガル……! 騎士ちゃんの拠点には行きたくないガル!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ