18 小さくて最強な騎士、マリアさん
その3人の小柄な少女たちが俺を化け物たちの攻撃から守ってくれた。
騎士たちが化け物たちをどこかに押し返すと、戦場のようだった学園は瞬く間に静かになった。俺は足を引きずりながら、廊下の戦闘姿のマリアたちの背中を見失わないよう必死に追った。
「こっちへ逃げるです」
「はぁはぁ………やっと逃げ切った。すまない、助かった――って、ここは……!」
俺は逃げ込んだ先に不安を覚える。
「ここは生徒会室じゃないか――!」
俺はついさっきまで魔女の金城コミンに襲われていた生徒会室にいた。しかし、金城コミンも、化け物たちの姿もない。
「ハロ、少し気をつけるです。ヴァーサー・クーラー卿の組織に、うかつに手を出してはいけないです」
そう言ったマリアは、片手を宙にかざし、つま先を軸にくるりと回ると、紫色の甲冑の戦闘服から女子生徒の制服姿に変身した。俺はマリアの無表情を見つめる。
「なるほど……、敵だらけの学園かと思っていたが、頼りになりそうな味方もいたようだ……」
「少しはこの神殿学園のことを調べておくべきです。自分の配属先について全くの無知ですか?」
「――その、マリアさんとやら、さっきから気になってるんだが、すまない、そのハロってのは人違いだ……」
「いいえ、もう警戒する必要はないです、ハロ。ここ生徒会室は最も強力な結界に守られているです」
俺はわけがわからなくなったところ、聞き覚えのある声がした。
「予定より遅かったので心配してましたよ。到着初日でフィシスの会合を突き止めるとはさすが教会が推薦するハロの名の通りです」
「――ッ! 佐藤? お前!」
「いいえ、今の僕はルアで結構ですよ。ここにいるのは身内だけです」
「――は? ……ルア? ……一体、何を?」
佐藤は俺に手を向けマリアに言う。
「マリアさん紹介します。以前お伝えしていた、教会から援軍として召喚されたハロです。本日より僕たちビグニティ騎士の一員になります」
「……ハロ? 俺が? ちょっと待て――」
突然にルアと名乗った佐藤は俺に笑顔を向ける。
「マリアさんたち生徒会メンバーとして、一緒に活動していただきますよ」
「いや悪いが、俺はその、ハロってやつじゃ……――」
「ここに居るのは味方だけです。もう正体を隠す必要はありませんよ」
「だから違うって!」
「僕とも始めましてでしたね」
強引に俺の訴えを遮った佐藤は、握手を求めて手を差し出してきた。そして意味深に深くうなずいていた。
「……だ、だから! 俺はハロなんかじゃない!」
マリアは生徒会室の窓から身を乗り出し、髪を夜風に揺らしながら、夜の校舎をにらみつけている。
俺は佐藤を指差し、マリアの背中に叫ぶ。
「マリアさんとやら! 聞いてくれ! この佐藤とかいう男は、実はあのヴァーサー・クーラーっていう魔女の手下かもしれ――ッ!?」
冷たい感触が俺ののどに触れる。
「……ッ!?」
振り向くと、マリアから見えない死角から、青い布を羽織った人の頭ほどの大きさの仮面の化け物が俺ののどに刃物をあてがっていた。
「ふふふ……」
佐藤は不気味にウィンクする。
無表情なマリアが俺に視線を移す。
「ハロ、何か言ったですか?」
雄太みたいに首を切られたくなければ、口裏あわせろってことだろう。俺は佐藤を睨みつける。
「い、いや……な、なんでもない……」
「それにハロ、気を付けるです。学園を守る屋上結界が何者かによって論破され、ヴァーサー卿がフィシス兇徒を侵入させたです。さっきの生徒魔族たちも悪ふざけで混乱に乗じヴァーサー卿に加担したです」
「屋上のモニュメント像は結界として生徒魔族の魔力を抑え、生徒の一人として学業につかせるためのカセになっていました。しかし――」
「また暴れだしたなの!」
叫び声に似た訴えが聞こえると、さっき助けてくれた別の2人の騎士の少女が生徒会室に飛び込んできた。
「マリィ! 大変なの! さっきやっつけた生徒魔族たちがまた反乱してるの!」
「バカちんたちを、早くやっつけるぅ!」
「それはすぐに邪気の殲滅が必要です」
3人の少女たちは肩を強ばらせる。
「またあの化け物、魔族ってのが攻撃を!?」
「ハロ、まずはしばらくここで長旅の疲れを癒して、明日の戦いに備えるです」
「ちょ……待って! マリアさん!」
マリアは俺の呼び止めを無視して、髪とスカートを揺らしてくるりと回ると、宙から飛び出した鎧を羽織り、2人の騎士と一緒にのしのしと部屋を出て行く。




