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12 怒りと反撃の図書館

 俺は誰も利用者がいなくなった夕方の市立図書館で本を開いている。


「あの……本日の閉館時間のご案内なのですが――」


 本日終了という案内プレートを持った若い女性職員が俺に向かってしゃべっている。


「あの……きみ?」

「ちょっと黙っててくれないか?」

「――そういわれましても……」

「こっちは命がかかってるんだ!」

「――……え?」

「頼む、今日だけは好きなようにさせて欲しい……」


 俺は職員に目もくれずに古びた書物の文字を追う。職員は注意をあきらめるとカウンターに引き返して事務作業を始めた。

 ほこりをかぶって色あせた書物を本棚からひっくり返し読みあさる。


「――あった、……きっとこれだ!」


 対魔術たいまじゅつ


 獰猛どうもうな獣のあやかしへの対処。


 未熟なトウガラシに熟したトウガラシの煮汁を吸わせ、トウガラシの粉末を十字に塗布とふする。投げつけよ。邪悪な魔物たちをなぎ払う火炎となる――


 トカゲの体のぬめりをミミズの尻尾でクロネコが選んだ紙に封の印を描く。近接せよ。邪悪な魔物の動きを封じるかせとなる――


 ●


「ええ、救世主の代役に目処めどがあります。人間の方ですが、今や優秀な人材となりつつあります」


「……」


「ええ、特殊な魔術の訓練を受けていない一般のニンゲンです」


「……」


「ご心配には及びません、僕など足元にも及ばぬほど卓越たくえつした素質、……いえ、頑丈な心をお持ちの方です」


「……」


「僕がそちらの教会きょうかい裏庭うらにわへ送る情報はクーラーさんのオフィスを通して厳しく検閲けんえつされてます」


「……」


「あの晩に強行して彼を制止して、彼女らのシナリオを狂わせてしまえば僕は闇に消され、今後の彼女らの情報をそちらに流せなくなっていたでしょう」


「……」


「もちろんこの会話も盗聴されているでしょうね。これが僕が学園内部にいられる条件ですから仕方ありません」


「……」


「今、彼は図書館で熱心に書物を開いています。もしかしたら、自力で魔力を開花する可能性もあります」


「……」


「僕たちにとっても、彼女にとっても、今度こそ有益な救世主になるでしょう。クーラーさんと世界を平和につなぐ、け橋になれるかと」


「……」


「ええ、彼女の秘密や、この学園の仕掛けは僕の口から詳細にお伝えしておきます」


「……」


「そうですね、彼の呪文で学園結界が論破されてから生徒せいと魔族まぞくの皆さんは大暴れです」


「……」


「騎士のみなさんが警備を徹底しているので、生徒たちの安全、街への脱走については心配ありません。今のところはイタズラ程度というご愛嬌あいきょうの範囲です」


「……」


「ご安心ください。その騎士の皆さんは制服を着た彼女の正体を依然いぜんとしてつかめないでいます」


「……」


「もちろん、僕の正体も―――おっと、騎士の皆さんが学園の警備から戻ってきたようです。ええ、現状はうまくやってますから、――はい、では、そのうちまた」

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