表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/121

11 お前のせいで人生が台無しだッ!

 寮の部屋の玄関にくいを打ちつけ、盛り塩をして、神社の巫女さんから勧められた護符ごふを貼り、篭城ろうじょうを始めて3日が経過した。


 担任の体育教官や校長、心理カウンセラーなどが次々とやって来ては玄関越しに説得を続けたが、俺は黙って布団の中で耳をふさいでいた。

 窓の下では寮長、警察官が話をしている。


「精神状態も正常…。脈も血流も正常……。心電図も異常なし……」


 いろんな種類の病院で診てもらったが異常なしと診断された。

 突然、備え付けの電話の呼び出し音が響く。


「誰だ、この番号?また青少年なんたらセラピーか?しつこいな――」

「どうしたの! 遅刻よ! なんで学園にこないの!?」

「うああぁッ!!」


 あの魔女の声だ。


「どんなことでも悩む前に生徒会室へ相談に来なさい! 引きもってちゃ心に背虫せむしがわくだけよ!」

「……お、俺が引き篭もろうが登校しようが自由だ!」

「自由!? 学校に来ない自由って!?」

「お前みたいな魔女が生徒会長なんてシャレにならない! 絶対に行くもんか! すぐに優秀な除霊師じょれいしをそっちによこすからな!」


 通話終了ボタンをしつこく連打するが魔女の声が途切れない。


「それ本気でいってるわけじゃないでしょーね……」


 コードを抜き、電源を遮断するが魔女の声は終わらない。


「なんで! なんで!?」

「自由なんて自分の無知ゆえの幻想よ!」

「黙れ! こ、この!」


 電話を乱暴に分解し、スピーカーをむしりとり、床に何度もたたきつける。


「アナタは自由であるべく呪われているのであり、つまりそれほどまでに自由なのよ!」

「ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな……!」


 トイレに走りこみ、呪われたしゃべる電話をバラバラにして、便器の水に投げ込む。


「ちょっと! 話は終わってな――」


 魔女の声が流れる水と共に消えたの見届け、俺はトイレの壁にもたれる。


「はぁ……はぁ……黙りやがれ!」

「アタシの理論は最後まで聞いて!」


 今度は玄関のインターフォンから怒鳴り声が響きだす。


「アナタは愛にすらそむけるほどに自由よ! そう、まさに自由という刑に処されてるの! わかる!? いえ、わからないでしょうね!」

「うわぁぁぁッ――っ!」


 手元にあったイスをインターフォンにたたきつける。プラスチックの破片が飛び散り、ちぎられたコードが垂れ下がる。


「はぁ……はぁ……ざまあ、見やがれ……!」

「あるいはこういっておくわ! 自由でありすぎるがゆえに不自由をこうむっているってね!」

「うがああああッ! このパソコンかッ!?」

「もう、若い子はホンット呪わしいほどに自由なんだから! 二度と訪れない青春の舞台を脇役でムダにしちゃダメ!」

「お前のせいで、青春どころか、人生が台無しだッ!」


 俺はパソコンに飛びつき、そのまま窓から投げ出す。


「俺に関わるなってんだよッ!」


 音楽プレイヤー、ヘッドホン、歴史の教科書も魔女がしゃべり出す前に放り出す。

 窓の外から悲鳴がした。


「ほら見たでしょ!? 全く信じられない! 正気のさたじゃない!? 保護者とはまだ連絡つかないんですか!?」


 外で寮長のおっさんが誰かにそう訴えている。

 俺は部屋の隅で護符を握り締め、耳をふさぐ。


「どこから間違ったっていうんだ……! あの狂った悪魔のあの手紙を受け取ったばっかりに……――ぅぐッ……ぅぅ……ぅ」


 今度はドンドンドンと部屋の入り口を叩く音がする。続いて鳴り響くチャイムを無視していると、知らない女子の声が俺の応答を催促する。


「生徒会の役員が金城コミン生徒会長の指令であなたを迎えにきたです」

「……生徒会!? ダレだ!?」

「ちょっと! せっかく女の子が来たんだからここをあけるっつーの!」

「早くぅ! あけるぅ!」

「誰があんな地獄におめおめと登校するか! 生徒会め、お前らも魔女とグルだろ! あのにやけ顔の野郎に言っておけ! まずはお前から呪ってやるってな!」

「何を錯乱しているです?心配する世間さまに迷惑をかけ不登校を続けるなら建物を吹き飛ばしてでも登校させよとの生徒会長の命令です」

「う、うるさい! 魔女の巣窟そうくつに帰れ!」


 するとすぐに玄関の外の女子生徒たちが部屋の玄関をこじ開け始めた。


「ひとりの世界に閉じこもれば、次第に心が呪われ、狂ってしまうです」

「狂ってるのは俺じゃない!」

「そうなれば仕方ないです。学園を愛する生徒会長の命令は絶対です」

「ちょ、お嬢ちゃんたち! 何を始める気だい!? ちょ、そんな斧どっから持ってきたの!? って、ダ、ダメよ! 扉を壊しちゃ!」


 玄関から耳をつんざく音が聞こえ始めた。


「嘘だろ!? じょ、冗談じゃない!」


 玄関の内側のドアノブがバキンと吹き飛び、壁に刺さった。


「魔女の手下たちに、護符が効いてない!?」


 俺はベランダから屋上に這い上がり、排水ポンプをつたい建物の裏庭から逃げ出す。そして、走った。


「呪文で結界が壊れる!?」


「心臓を抜き取る!?」


「金城コミンは呪われている!?」


「協力しないと心臓を握り潰す!?」


「頭がおかしいのは俺じゃない!」


「あの女だ、金城コミンとかいう魔女だ!」


「あのヤリを振り回すヴァーサー・クーラーって魔女だ!」


「やられてたまるかよ――」


「このままやられてたまるか――!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ