13 学園から出て行くのは化け物たちだ!
雄太も屋上でのカマの化け物との一件に心身恐怖したあげく、部屋に引き篭もって悩んでいたらしい。
そんな雄太の力を借りて化け物をやっつけるため、放課後に学園近くの川辺に呼び出した。
「先生止めないで、もう決めたんさ……。おいらは遠くのまともな学校へ転校する……。もうこんな街こりごりさ……」
手に包帯を巻いた雄太に武器が詰まったバッグを渡す。そして札を取り出す。
「いや……出て行くのは化け物たちだ!」
「なに……、その紙切れは?」
雄太は俺が握るお札を見つめる。
「なんか、変な模様が描いてあるけど……」
「化け物を撃退する封殺札と言う武器らしい。そして、こっちはまとめて化け物たちを蹴散らせるトウガラシ爆弾と言うらしい」
俺は雄太に手作りの武器を見せる。
「そして、これは防御札と言って、こうやって体に張っておくと化け物の攻撃をはじく護符らしい。チャンスは最初で最後、今日の放課後だ。月明かりでいつもより化け物たちの力が弱くなるらしい」
「……らしいらしいって、本当に使い物になるんすか?そんな紙切れとトウガラシのおもちゃであの化け物たちに立ち向かう気!? 本当に今度こそ殺されちゃうさ!」
周囲を見回し誰も見ていないことを確認すると、俺は川辺に置いたぬいぐるみ目掛けてトウガラシ爆弾を投げる。
「――先生、聞いてるさ!? そんなおもちゃでお化けたちを追い払え――ぅおっふッ!?」
爆弾の衝撃で砂と水が空を舞い、俺と雄太に影を落とす。
砂にまみれた雄太はトウガラシ爆弾が炸裂してえぐった地面の穴を覗き込んで、絶句しながら何度もうなずく。
「――やっぱ、先生ってすげーさ……。化学の勝利さね!」
「化学じゃない、古代呪術だ。あっちの世界の住人が開発した魔法だ」
ぬいぐるみは海面に浮かびながらも赤い炎を発しながら激しく燃え続けている。
雄太に武器の使い方を手短に説明する。
「……なんだか、やれそうな気がしてきたさ!」
「すでに早朝、学園に忍びこんで奴らをやっつける罠や細工を仕掛けておいた。あの魔女、金城コミンに奪われた心臓を取り返し、学園から1匹残らず化け物を追い出す――!」
●
誰もいなくなる完全下校時間まで近所の林で身を潜めていた。
生徒たちが下校して、校舎の明かりが全て消えたのを確認すると、俺と雄太で静かに学園に潜り込む。
「そうだな……、これがいい」
掃除用具入れから毎日の掃除で使い慣れた竹ホウキを取りだす。そして穂先に封殺札を貼り付け打撃できる武器に加工した。
「ねぇ先生、考えてみたんだけど、やっぱりこういうのは素人だけじゃなくて悪霊払いとか巫女さんも一緒に――」
「いいか雄太、この学園では生徒会長、金城コミンの言うことがすべてなんだ! 俺たちがいくら金城を魔女だと叫ぼうと誰も取りあったりしない! みんな俺たちを頭のおかしい奴らだと言い追いかけて捕まえる!」
雄太は掃除用具から見つけたポリバケツのフタに防御札を貼りつけた。
「それは盾のつもりか?いいアイディアじゃないか」
「なんか、とっさに思いついたさ。バケツの盾、ゲームとかにでてきそうでしょ?」
俺と雄太は廊下の突き当たりの物陰に隠れて、化け物が姿をみせるのをじっと待った。
夜がふけると、校舎の奥深くから怪物たちの奇声や雄たけびが響いてきた。
雄太は汗を垂らしながらも恐怖に耐えている。俺は目をつぶって落ち着こうとする。
「……ちなみに、この札とトウガラシが効かなかった場合のプランは?」
「効いてもらわなきゃ困る、信じろ。……あとは祈れ、得意だろ」
雄太は不安そうにうなずいた。
「――伏せろ、静かに……化け物たちが来る……!」
暗い廊下の向こうから、無数の光る目玉が見える。
俺たちは月明かりの届かない物影に隠れる。
「ひぃッ、な、何か来たさ――!」
俺はすぐさま廊下の真ん中にぜんまい仕掛けで音を鳴らしてさわぐネコのおもちゃを配置し、急いで物陰に戻る。
雄太は青いバケツを抱きしめる。俺はホウキを握り、構える。
目玉を光らせた3匹の化け物が姿を現した。あのカマの化け物だ。
そいつらは動き回るネコのおもちゃに興味を示している。そして、カマの化け物がおもちゃの取り合いに夢中になり始める。
「……あいつらは便所に住み着く化け物、ペッキン族だ。外来種でもっとも多く生息する、害虫みたいなもんだ」
「……で、で、ど、どうやっつけるのさッ!?」
「安心しろ、駆除方法もたくさんある――」
「そ、そ、そ、それなら、ら、楽勝さね――……」
そいつら3匹のペッキンが取っ組み合いの喧嘩をはじめた。
その様子を見た雄太が頭を抱えて、硬直している
「今がチャンスだ……っておい、雄太?大丈夫か――?」
「(ガクガクガク・・・)」
雄太の腕を引っ張るが、石のように動かない。
ネコのおもちゃが取り合いで引き裂かれバラバラに壊れてしまい、獲物を失ったペッキンたちは鼻をぴくつかせて、周囲の異変に気付いている。
「今しかない! 行くぞ、雄太! せーのッ!」
「ぅぅぅ……、うああぁぁぁ! やっぱ無理ッ! 助けてぇぇぇ!」
恐怖に耐えられず、雄太があべこべの方向へ逃げ出してしまった。
「雄太ッ!? おいッ!」




