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【06】大森林を抜け、北側諸国を崩す

アルバート、三十九歳。

ブレッテン平原での敗戦から一年が過ぎた頃、オスカーから報告が届いた。


「アルバート王。

ルグルスの大森林を貫く街道に、軍勢を通す準備が整いました。

補給部隊も、北まで通せます」


続いて、カールが報告した。


「軍勢の補充と再編が完了し、我が国の最大動員数は十二万に達しました。

各地の守備に四万、エドガー殿の別働隊に三万を充てても、ご命令通り、本隊四万を動かせます。

さらに、予備として一万の兵を用意しております」


「よし。

これで北側諸国との戦を終わらせる道が開けた。


二人ともご苦労であった。

エドガーもこの一年、よく耐えてくれた。

北側諸国の連合軍は、ブレッテン平原に張り付いている。


ここまでは、計画通りだ。

敵の主力が平原に留まっている間に、ルグルスの大森林を抜ける。


カール。

本隊四万を率い、北側諸国へ向かえ。

私も後から合流する」


ルグルスの大森林を、四万の軍勢が進んでいく。

先に入った兵が街道と橋を確かめ、その後を本隊が続いた。


「こんな大森林の中に、よく街道を造ったものだな」


「もっと木をかき分けて進むものと思っていた。

補給部隊まで通れるとはな」


「おかげで、背負う兵糧も少なくて済む。

造ってくれた者たちには感謝せねばならん」


「まったくだ。

俺たちがここを通ってくるとは、向こうも思っていないだろうな」


軍勢は街道沿いの各拠点で物資を受け取り、さらに北へ向かった。

オスカーが調査から約三年をかけて整えた街道を、今はルトニア王国の大軍が進んでいた。

大森林を抜けるまで、あと三日ほどのところで、整備された街道は途切れた。


カールは軍勢を止め、命じた。


「整備した街道は、ここまでです。


補給部隊はここに残し、この先は使われなくなった古い街道を進みます。

各自、補給が再開するまでの食料を携えなさい」


本隊に合流していたアルバートは、街道の先へ目を向けた。


「カール。

ここまで来れば、敵に悟られずに済みそうだな」


「はい。

敵に悟られぬよう、この先は整備を控えておりましたが、兵が通れることは確かめてあります。

我々が抜けた後、残した者たちに街道を整えさせ、補給を再開します」


アルバートは、食料をくくりつけた兵たちを見渡した。


「ここからは速さが肝心だ。

敵が備えを整える前に、大森林を抜ける。

進もう」


四万の本隊は再び北へ進み始めた。

それから三日後。

アルバート率いる本隊は、ルグルスの大森林を抜けた。

大森林に入ってから、約二か月が過ぎていた。


その頃、ブレッテン平原。


配下の武将が、エドガーに尋ねた。


「エドガー様。

そろそろ、アルバート王がルグルスの大森林を抜ける頃ではありませんか」


「そうだな。

予定通りなら、すでに大森林を抜け、各地への攻撃を始めているはずだ」


「それにしては、敵に動きがありません。

何事かあったのでしょうか」


「まだ知らせが届いていないのかもしれん。

アルバート王が大森林を抜ける場所から、ここまでは直線でも七百キロある。

敵の動きを見逃すな」


それから数日後、北側諸国連合軍の陣営へ、伝令が駆け込んできた。


「ルトニア王国軍が、ルグルスの大森林を抜けました。

アルバート王が各地の拠点を攻めています」


「ルグルスの大森林を抜けただと」


大森林に面した国の将が、席を立った。


「我が国は直ちに兵を戻す。

主力をここへ送っている以上、残した兵だけでは国は守れぬ」


「待て。

目の前には、エドガーの三万がいる。

今、兵を引かれては、この平原を守り切れぬ」


「ならば、我が国を守る兵を出してくれるのか。

ここに留まり、帰る国を失うわけにはいかぬ」


大森林に面した国々は、同意を待たずに軍勢を引き揚げた。

エドガーはその動きを見逃さなかった。


「敵が兵を引き始めた。

アルバート王が、大森林を抜けられたのだ。

国を守るために戻るつもりだろう。


我々は、この瞬間を待っていた。

この一年は、今日、このときのためにあったのだ。


総攻撃だ」


エドガーの号令とともに、三万の軍勢が攻めかかった。

兵を減らし、指揮もそろわなくなった北側諸国連合軍は、その攻撃に耐え切れず、崩壊した。


ブレッテン平原を越えたエドガーは、その勢いのまま西へ進んだ。

ルグルスの大森林を抜けた本隊四万も、アルバート率いる三万とカール率いる一万に分かれ、別々の進路を取った。

北側諸国は、三つの軍勢への対処を迫られた。


降伏した国は兵を差し出し、ルトニア王国軍の指揮下で、抵抗を続ける国々との戦いに加わった。

最後まで戦い続ける国もあったが、北側諸国が再び一つの軍勢として戦うことはなかった。


一国、また一国と、アルバートに従っていった。

それでも、残る国々の抵抗を退け、降伏の条件を取り決めるには、年月を要した。

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