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【05】ルグルスの大森林に道を拓く

王宮へ戻ったアルバートの前に、三人の重臣がそろった。


「今回は負けたな。

北側諸国連合は、予想以上に足並みをそろえていた」


エドガーが、兵の損害をまとめた報告書を差し出した。


「死傷者は、合わせて一万に上ります。

兵を補充し、再び大軍を動かせるようになるまでには、一年ほど必要でしょう」


「一年か。

その間に、次の攻め方を考えねばならんな。

再びブレッテン平原へ軍勢を進めても、同じように迎え撃たれるだろう」


カールは、机の上に地図を広げ、ブレッテン平原に置かれた軍勢の印を指した。


「こちらが兵を補充している間に、敵も平原の守りを固めるでしょう。

そこで、主力との正面決戦を避け、別の進路から攻め入る方法を、オスカー殿と検討しておりました」


オスカーは、持参した地図を大陸図の脇に広げた。

五十七歳の彼は、この場の誰よりも年長だった。

白いものの混じる顎髭の下に、自信に満ちた笑みを浮かべている。


そこに描かれていたのは、ルトニア王国の北側に広がるルグルスの大森林だった。

河川や山地に加え、ところどころに草地が記されている。

アルバートの知る地図よりも、はるかに詳しかった。


「オスカー。

北まで街道を通せる見込みはあるか」


「はい。

二年前から人を送り、川や山を避けて通れる進路を調べておりました。

北までの経路は、おおむね確かめてあります」


オスカーは、大森林の南端から北へと指を動かした。


「南端には宿舎と物資を集める拠点を設け、調査隊へ食料や道具を送る街道も造り始めています。

人員と物資を集めていただければ、あと一年ほどで、軍勢と補給部隊を通せる見込みです」


アルバートは、地図に記された街道を目で追った。

南から延びる線は、大森林の途中で途切れていた。


「兵の補充と街道の開通を、同じ一年で進められるのだな。

ただし、通過できるだけでは足りぬ。

北へ出た軍勢に、兵糧を送り続けられる道にしてほしい」


「そのため、距離の短さよりも、補給を続けやすい進路を選んでおります。

残る区間は、まず軍勢と補給部隊が通れるよう整えます。

道幅を広げ、橋を補強する工事は、開通後も続けることになりますな」


「大森林を抜けるまでには、どれほどかかる」


「補給部隊を伴って軍勢を進めるのであれば、約二か月を見込んでおります。

途中で兵糧を補えるよう、街道沿いにも宿営地を設けます」


アルバートは大陸図へ目を戻した。

大森林を抜ければ、平原に集まる主力を避け、守りの手薄な国々へ攻め入ることができる。


「エドガー。

お前は別働隊三万を率い、ブレッテン平原へ通じる進路に展開してくれ。

再び攻め込む構えを見せ、大森林の計画を悟られぬよう、敵の主力を引きつけておくのだ。


長期戦になる。

やれるな」


「やれと言われれば、やります。

負けない戦を一年続けるのですから、造作もありません。


我が国が何としてもブレッテン平原を突破しようとしていると、相手に思わせてみせます。

それより、アルバート王。

私がそばにいなくても、大丈夫ですか」


「私が寂しがるかと聞いているのであれば、心配は無用だ。

お前が離れている間は、カールとオスカーに相手をしてもらう。


そうだな。

カールには、王都に留まれる任務を依頼しよう。

母親となったのだ、子供との時間も必要だろう。


カール。

お前には、軍勢の補充と再編、それに本隊四万の編成を任せる。

大森林を抜けた先の北側諸国についても調べ、進軍先と押さえるべき拠点を考えておいてほしい。


オスカー。

おぬしには、ルグルスの大森林を抜ける街道の整備を任せる。


二人とも、これまで任せている仕事も、引き続き頼む。


どうだ、エドガー。

私たち三人を本国に残し、寂しい思いをするのは、お前の方ではないか」


「そうですね。

今の話を聞いて、私も決断できました。

ブレッテン平原で北側諸国と向き合います」


カールがエドガーに顔を向けた。


「エドガー殿、私と代わっていただいても結構ですよ」


「カールよ。

せっかく王が子供との時間を作ってくださったのに、私と代わってどうする。


それに、この五年、領土が広がるたびに、土地の争いを裁き、法や税の取り決めを整えてきたのは、お前だ。

私に、お前の代わりが務まると思っているのか。

平原で敵と向き合う方が、よほど気が楽だ」

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