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【04】大陸統一への進軍、ブレッテン平原の壁

それから数日後。


ルトニア王宮の執務室には、アルバートと三人の重臣が集まっていた。


エドガー・ザルツ。

カール・ジェイデン。

オスカー・エイダン。


机の中央には、オスカーが持参した地図が広げられている。

その脇には、カールのまとめた各地の報告書が置かれていた。


「まずは、ルグルスの大森林の南に広がる中原の諸国を平定する。

今日は、最初にどこへ軍勢を進めるか、交渉と補給をどう進めるかを決めたい」


アルバートは、三人を見渡した。


「エドガー。

国内の守備を残し、外征に出せる兵はどれほどになる」


「正規兵、徴募兵、徴収兵を合わせて、最大で六万ほどです。

国内の守備に二万を残せば、四万ほどを外征に出せます」


「オスカー。

おぬしは、どう考えている」


「どの国を攻めるにせよ、動くと決めたら速やかに兵を進めるべきです。

時間をかければ周辺諸国が連合し、こちらも兵を分けねばならなくなります。


四万の軍勢を一か国に集中し、早く決着をつける。

同時に、周辺諸国へ使者を送り、協力を求めます。

応じぬ国にも、中立を保つよう働きかけましょう。

複数の国を同時に敵に回さず、一か国との戦いに兵を集中できる状況を保つことが、肝要かと存じます」


アルバートは、地図のフランク王国を指した。


「最初は、フランク王国とする。

我が国に隣接し、街道もある。

補給路が短く、四万の軍勢を支えやすい。


国境に軍勢を展開し、使者を送って従う条件を示そう。

拒まれた場合は、即座に進軍する。

周辺諸国には協力を求め、応じぬ国にも中立を保つよう働きかける。


戦わずに従う王や領主には、地位と領地を保障し、引き続き統治を任せる。

抵抗する国には力を、従う国には利益を示し、その後の交渉につなげるのだ」


オスカーは、地図の街道沿いに置いた小さな木片を動かした。


「アルバート王。

フランク王国へ向かう街道と、兵糧を集める場所は調べてあります。

輸送の準備も整い、ご命令があれば送り始められます」


「さすがだな。

エドガー、軍勢の手配はどうだ」


「各隊に命じれば、すぐに動かせます」


アルバートは、大陸統一へ向けた最初の遠征を命じた。


「エドガー。

四万を率い、フランク王国との国境へ向かえ。

交渉の返答が届くまでは、国境を越えずに待機せよ。


カール。

お前は私の使者として赴き、今決めた条件を伝えてくれ。

相手の意向を確かめ、返答を持ち帰ってほしい。


私は王都での仕事を済ませてから合流し、本隊を率いる」


それからしばらくして、アルバートは国境で待機する軍勢に合流した。

カールが国境に持ち帰ったのは、ルトニアへの服従を拒む返答だった。

アルバートは即座に進軍を命じた。


四万の軍勢は、アルバート率いる本隊三万と、エドガー率いる別働隊一万に分かれ、国境を越えた。


アルバートは自ら先頭に立ち、フランク王国の奥へと軍勢を進めていく。


交渉決裂に備えていたルトニア王国軍の進軍は速く、なお交渉の余地があると考えていたフランク王国は、対応が遅れた。


敵が本隊の進路に兵を集めると、エドガーの別働隊が手薄な拠点を攻めた。

迎撃の兵が向かえば、その動きを本隊へ知らせ、自らは別の拠点へ進んだ。


本隊を止めようとすれば、別働隊が背後を脅かす。

別働隊に兵を回せば、本隊を食い止められない。

フランク王国軍は各地へ兵を分散させ、どこでもルトニア王国軍を押し返せなくなっていった。


侵攻を支えていたのは、オスカー・エイダンだった。


本隊と別働隊の動きに合わせて補給部隊を送り、次の進軍に必要な兵糧を各拠点へ集めた。

時には、軍勢の到着に先んじて兵糧を運び入れた。

その戦局を読む力は、軍勢の進路を先取りするほどであった。


アルバートは従った城に守備兵を残し、進軍を続けた。

降伏した領主には、約束通り、その地位と領地を保障した。


侵攻から約一か月でフランク王都は落城し、王は家族と共に南方へ逃れ、海を渡った。


捕らえられた王族たちはルトニアへ連行され、処刑を恐れていた。

だが、アルバートは彼らを赦して解放し、希望する者には仕える道も開いた。


その後も、ルトニア王国は軍事と外交を並行させ、中原の諸国への侵攻を進めた。


アルバート、三十八歳。

大陸統一を目指してから五年が過ぎていた。

ルトニア王国の支配は、ルグルスの大森林の南に広がる中原を中心に、大陸の中央から西部へと及んでいた。


ルトニア王宮の執務室には、アルバートと三人の重臣が集まっていた。


「エドガー。

北へ進める兵は、どれほどになる」


「従えた国々の兵も加わり、正規兵、徴募兵、徴収兵を合わせて十万に達しました。

各地の守備に四万を残し、六万を外征に出せます」


カールは地図のブレッテン平原を指した。

三十歳になった彼女は、この五年の間に文官と結婚し、一児の母となっていた。

艶のある栗色の髪も、美しい顔立ちも、五年前と変わらない。


「北側の十か国は、すでに結束しています。

連合軍十万が、この平原に陣取っています」


「大森林を東に迂回する以上、ここを通らねばならぬな」


「はい。

北側諸国も、それを承知で主力を集めているのでしょう」


アルバートは、ブレッテン平原に置かれた軍勢の印を見つめた。


「十万対六万か。

だが、相手は十か国の連合軍だ。

指揮官が異なれば、連携に乱れも生じる。

そこを突けば、勝機はある」


「それぞれの国を守るために集まった軍勢です。

危うくなれば、自国の兵を温存しようとする将もいるでしょう」


エドガーの言葉に、アルバートは頷いた。


「敵が兵力を生かし切る前に崩す。

その機を逃さぬよう、各国の軍勢の動きを確かめておこう」


だが、自国を守ろうとする北側諸国の結束は、予想以上に固かった。

ルトニア王国軍は防衛線を崩せず、多くの兵を失って退いた。

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