第7話 撤退2
森の中、俺達は茂みの中から争うエルフと魔族を発見した。
「このままあのエルフを救出しつつ魔族の撃退、その後倒した魔族から食料奪取を行う、周囲に潜伏してる可能性もあるから気を付けるんだ」
「分かりました!」
俺の合図と共にフィアナ達が飛び出す。
「後ろだとっ!?」
「新手……いや違うっ!?」
突然の奇襲に魔族はもちろん味方のエルフっ娘も混乱した。
多くの魔族が打ち倒される、背後からの奇襲は効果抜群のようだ。
「大丈夫か?」
フィアナ達の様子を見つつ俺は地に座るエルフ娘の下へ行く。
見た感じ子供の様だが……フィアナと言い他の娘達といい子供も戦に駆り出されているようだ。
「あ、ありがとうございます……っ!」
手を差し伸べた相手が突如顔を顰めた。
「怪我してるのか……」
どうやら目の前の娘は足を怪我してるようだ、だが手当てするための薬など持ち合わせていないし……どうするか……。
『クロエなら回復の奇跡を扱える、彼女に頼むんだ』
「クロエ!」
アリシア様から助言を頂きクロエを呼ぶ、俺に呼ばれたクロエは直ぐに駆け付けてくれた。
クロエに状況を説明すれば彼女は直ぐにエルフ娘の怪我の治療を始めた。
俺は治療を始めたクロエを守る様に背後に立って周囲を警戒する。
「ク、クロエ様ご無事で……そ、それにい、今アリシア様のお声が……」
「ええ、彼が、ジョンが助けて下さったのです」
「あの人が……」
知らない所で知らない人の好感度が上がってる気がする。
奇襲が成功したからか戦況は此方が優勢、とは言え数は魔族の方が多く不利的状況に変わりはないから気を引き締めよう。
「しまった!」
「ジョン様っ!」
「「「っ!」」」
フィアナ達を擦り抜けて魔族が3人此方に駆け寄って来た。
フィアナ達の声に釣られてそちらを見たのだろう、クロエ達から息を呑むような音が聞こえた。
「くたばれぇ!」
「ふっ!」
突っ込んできた魔族の男の拳避けてその腕を掴みその場で一回転、遠心力を用いて他の魔族へと放り投げる。
「「がはっ!」」
仲間が投げられた事で驚いたのだろう、ほんの一瞬隙が生まれた魔族へ接近しその顎を殴り抜け背後へ回り足を蹴りつけ膝を地面に付かせた後その側頭部に回し蹴りを放ち倒す。
「流石ジョン様……」
「凄い……」
「くそっ分が悪い!引けっ!」
一人の男の号令と共に魔族達は撤退を開始、気絶した仲間はそのまま放置して行った。
「追撃を!」
「待て」
追撃しようとしたフィアナを止める。
「何故ですか!」
「俺達の目的は魔族の支配地域からの脱出だ、奴等の殲滅では無い。確かに追撃すれば魔族側の戦力を削れるが微々たるものだろう。追撃を行ったフィアナ達が再び捕まる可能性も考慮するならこのまま脱出した方が良い」
他にも食料等の補給がない事、ルナ様達や皆の疲労等も伝えるとフィアナ達は納得した。
俺達はその後打ち倒した魔族達を調べて食料が無いか探す。
見張りの魔族の様に少なくても良いから所持しててくれればありがたいんだがな。
「あった」
「此方もありました」
魔族が食料を所持していた、とは言え干し肉とかで量も少なくこれだけでは足りない。
「この娘は……」
倒した魔族の娘が大型の布袋を背負っていた。中を見れば大量の食料。
「食料の運搬係か、運が良かった」
これだけあれば少しの間なら持つだろう。
だが少ない事に変わりはないし早く魔族の領域から抜け出したい所だな。
フィアナ達に食料を荷袋に詰めて貰ってる間に俺はクロエを通じてエルフの娘達と話すことになった。
「助けて頂きありがとうございます、私はセレスティナと申します、此方が精霊のマリアです」
「俺はジョンだ、よろしく頼むセレスティナ、マリア」
「よろしくお願いします、ジョン様」
「セレスティナ共々よろしくね、ジョン」
金髪ロングの青目エルフのセレスティナと黒髪ロングに金眼のマリアの2人と握手を交わす。
改めて、合流したのはエルフ3人に精霊1体だ。
敗走して逃げてる内に散り散りに別れてしまったらしい。
全員が全員速度を合わせて逃げる訳もないし仕方ないか、特に勇者は捕まるとそれこそ希望が絶たれるし。
フィアナ達が荷物を纏め終え、俺達も離脱しようとした時、マリアが膝を付きそれに気付いたセレスティナが寄り添う。
「マリア?どうしたの?」
「大丈夫よ……ちょっと疲れが出ただけ……」
「ここまでずっと走りっ放しだったもんね、私達の誰かが憑依に耐えられれば良かったんだけど……」
「憑依と言えば……」
エルフ達の会話を聞きクロエが俺に振り向いた。
まぁ話の内容からして俺の事を知ってる奴なら皆俺の方見るよな、フィアナ達も見てきてるし。
「ジョン様に憑依して下さい」
「え?でも彼じゃ」
「良いから早く!」
「分かったわよ……どうなっても私は責任取らないから!」
渋々と言った様子でマリアが俺に憑依する。
そう言えばノルン様が言ってたけど下手すると廃人になる可能性もあるとか言ってたな……。
けどルナ様は問題無いって言ってたし大丈夫だな。
ルナ『あら、いらっしゃい』
アリシア『やぁ』
ノルン『来たようね』
他女神『精霊ちゃんいらっしゃ〜い!』『良く来たな!』
『?!?!?!?!?!?!?』
ルナ様達が挨拶したとほぼ同時に憑依したマリアが驚きの声を上げた。
それもそうか俺にルナ様達が憑依してる訳だし。
憑依したら複数の女神が居るからそりゃ困惑するわ。
当のマリアは驚きのあまり憑依を解き後退った。
「マリア!?ど、どうしたの?!」
「ア、アリシア様以外にノルン様やル、ルナ様まで居た……」
「「「は?」」」
「だから!アリシア様達がジョンに憑依してるのよ!!!」
マリアの言葉に何を言ってるのか理解できてないセレスティナ達。
そんなに理解し難いものか。
「つまりこういう事よ」
「「「?!?!?!?!?!」」」
俺の身体から顔を出したノルン様、その接合部が気になって見てみると俺の身体に近付くにつれて薄く透明になっていた。
なんと言うか、幽体離脱みたいな感じだろうか。
「ジョ、ジョン様は平気なんですか……?」
「平気、取り敢えず急ぎたいからマリアはもう一度憑依してくれ」
「え、えぇ……?」
混乱したままのマリアに手を差し伸べ憑依したのを確認し、未だ俺の身体から顔を覗かせているノルン様と目が合う。
「何よ?」
「いや、何もないけど……戻らんの?」
「別に良いじゃな━━━━━━」
突然現れた両手に頭を押さえられ俺の身体の中に押し込まれたノルン様。
端から見たらただのホラーなんだが。
『何時まで喋ってるのよ、ジョンが困ってるじゃない』
『困って無いわよ!ルナがただ嫌なだけでしょ?!』
『はぁ〜!?ジョンだって嫌に決まってんでしょ!あんたを憑依させてるのも仕方ないからよ!!!』
『そんな訳ないじゃない!ジョンに嫌われる様な事した覚え無いわよ!?』
ノルン様の頭を引っ掴まえて押し込んだルナ様が注意して始まる仲睦まじい状況に内心ほっこりしながら進む事にする。
『ごめんねジョン……普段は頼りになるお姉ちゃんなんだけど……』
「気にしてないので大丈夫ですよ、いやぁルナ様に仲の良いご友人が沢山いて嬉しい限りです」
『『仲良く無い!!!!』』
『『真似するなぁ!!!』』
息ぴったり。
まぁ聞いてる感じ全く嫌悪感とかは感じないから本当にじゃれ合いみたいな物だと思う。
中には本当に仲良く無い人達も居るわけだし。
そもそも嫌だったら同じ所に居たがらないし。
新たに入ったマリアも早い所慣れると良いけど。
「良し、このまま魔族の領域から離脱しつつ勇者や他の仲間との合流を目指すぞ」
「「「「「はい!」」」」」
準備も整った所で俺達は撤退を再開した。




